住宅ローン、変動がお得なのは政策金利2%まで? 金利上昇の備え方
変動と固定、金利の仕組みの違いとは
「金利のある世界」が戻ってきた。
日銀の2024年3月のマイナス金利解除を皮切りに利上げを重ね、2025年12月には政策金利を0.75%まで引き上げた。これは30年ぶりの高水準だ。市場では今後さらなる追加利上げが予測されており、住宅金融支援機構によれば、変動金利利用者の73.7%が「今後1年で金利は上昇する」と考えているという調査結果も出ている。
こうした金利の戻った時代に家を買う、あるいはすでにローンを抱えている人にとって、金利上昇は切実な問題だろう。
「変動にすべきか、固定にすべきか」は、永遠のテーマともいえる。そこで3つの政策金利シナリオを設定し、5000万・7000万・1億円の物件を35年ローンで購入した場合の支払利息をシミュレーションした。
言わずもがなだが、住宅ローンの金利は大きく分けて変動と固定2種類がある。金融機関によっては「固定期間選択型」というものがあるようだ。ここでは変動、固定の2つだけで考えていく。
そもそも変動金利は日銀の政策金利(短期金利)に連動し、半年ごとに見直される。一方、固定金利(全期間固定・フラット35)は10年物国債利回りなど長期金利に基づいて決まるため、政策金利と必ずしも連動しない。
2026年5月時点の実勢では、変動金利の適用金利はネットバンク系の最低水準で0.55%前後、メガバンクでも0.67~0.93%程度。
これに対してフラット35は最低1.89%前後になっている。政策金利が上昇すれば変動は追随するが、固定は新規でローンを組む際に長期金利の動向次第で先行して動くこともある。
固定・変動、3つのシナリオで読む「差額」の現実
下表は、政策金利が1%・1.5%・2%に到達した場合の各シナリオにおける支払利息の累計額だ。変動金利は政策金利より約0.25%低い適用金利、固定金利は政策金利より約1%高い長期金利水準を前提に計算している。
数字を見れば変動が圧倒的に安く見える。しかし、ここには「金利が現状維持された場合」という前提が潜んでいる。
現在、変動と固定の差は約1~1.5%程度。この差が逆転するためには、変動金利が固定金利の水準まで上昇しなければならない。
メガバンク・ネット銀行など主要約20行の住宅ローンをオンラインで一括比較できるサービス「モゲチェック」を運営する株式会社MFSの試算では、政策金利が現在から6回程度追加利上げされた水準(約2.25%超)が続かない限り、固定が変動を逆転するシナリオは蓋然性が低いとしている。
一方、日銀の利上げペースが市場予想を上回る「サプライズ利上げ」や、トランプ政権の関税政策が落ち着いた後に日米金利差が縮まるシナリオでは、変動金利の急騰リスクも排除できない。また、変動金利を選ぶなら、「125%ルール」(返済額が急増しても前回の125%が上限)に守られながらも、未払い利息が膨らむリスクを理解しておく必要がある。
住宅ローンは「変動・固定」の二択で考えない
変動か固定を考える際に必要なのは、月々の差額を新NISAやiDeCoに回して金利上昇リスクへの備えとする「自己ヘッジ戦略」だ
政策金利1.5%シナリオ(変動1.25%/固定2.50%)で7000万円のローンを組んだ場合、月々の返済額は変動金利(1.25%)で約20万5860円、固定金利で約25万247円。差額は約4万4000円になる。(マンションであれば、月々管理費・修繕積立金が加わり、年間では固定資産税もかかってくる)
この差額をNISA口座でインデックスファンドに積み立てたのだ。仮に年利5%の運用を続ければ20年後に約1824万円、25年後には約2643万円になる。もし、変動金利が上昇しても、この積み上がった資産が繰り上げ返済の原資や金利負担の対応資金になる。これが「金利自己ヘッジ」というものだ。
さらに、月2万3000円(会社員の上限)をiDeCoに回した場合では、年収600万円の人で年間約8万3000円の節税効果が生まれる。35年間の節税累計は約290万円。この非課税部分の「余白」も利用できる。
さらに見落としがちなのが「団信(団体信用生命保険)」だ。
住宅ローンには原則として団信が付帯しており、契約者が死亡または高度障害状態になった際にローン残高がゼロになる。つまり住宅ローンは、金利を払いながら生命保険も兼ねている金融商品でもある。近年はがん団信や三大疾病保障付きといったものも一般化しており、民間生命保険の見直しとセットで考えると、月々の保険料を削減できる場合もある。
変動か固定かという二択だけでなく、新NISAやiDeCoの活用に将来に向けた投資や節税。団信を組み合わせた保険の活用まで考えた「総合的な資産運用」として考えるべきだろう。これを考慮して判断する人と、そうでない人とでは、35年後の資産に数百万円単位の差が生まれる可能性がある。住宅ローンは「借金」ではなく、使い方次第で資産形成の起点になるものと考える必要がある。
