心身の衰えを感じる高齢者にとって、お金や不動産の管理は不安の種だろう。

 本人に代わって手続きを進め、生活を支える仕組みが不可欠だ。

 認知症や知的障害によって判断能力が十分ではない人の財産管理などを支援する成年後見制度について、抜本的に見直す民法改正案が閣議決定された。今後、国会で審議されることになる。

 現行制度では、家庭裁判所が高齢者らの判断能力に応じて「後見人」「保佐人」「補助人」のいずれかを選び、その人が不動産の売却や福祉サービスの利用といった手続きを代行している。

 後見人らの8割は、親族以外の弁護士や司法書士らだ。制度の利用者は現在26万人に上る。

 認知症と、認知症の前段階にあたる軽度認知障害の高齢者を合わせると、1000万人を超えるとされる。高齢化社会の進展で、今後さらに増加していくだろう。対策は喫緊の課題だと言える。

 現行制度では、利用を始めると、本人の能力が回復しない限り、やめられない。そのため、報酬が延々と発生し、後見人らと利用者側がトラブルになっても交代させられないなど、制度が「使いづらい」という声が出ている。

 改正案では、3種類ある後見人、保佐人、補助人の呼び名を「補助人」に統一し、代理できる行為を家裁が個別に認定する。さらに、家裁が認めれば、利用を終了できるようになるという。

 そうすれば、補助人の弁護士が財産管理を一括して受け持つのではなく、不動産の処分などに依頼を限定し、日常的な預貯金の管理などは親族が担当する、といった役割分担が可能になる。

 硬直的な「終身制」を「オーダーメイド制」に転換することで、制度の利用拡大につなげたい。

 補助人の利用を終えた後も、高齢者の生活を切れ目なくサポートし続けることは重要だ。

 政府は、高齢者の見守りや生活費の管理を社会福祉法人やNPOが支援する事業を創設する方針だという。自治体の研修を受けた地域の住民が、高齢者に寄り添いながら生活を見守る「市民後見人」の活動も広がりつつある。

 地域の住民と民間団体、行政が連携を深め、支援の担い手を増やしていくことが大切だ。

 新制度では、高齢者の判断能力を見極め、補助人の業務や利用の終了を判断する家裁の役割が重くなる。高齢者本人の意思を尊重し、きめ細かく対応できるよう、家裁の体制を整えてもらいたい。