ケタ違い“利益”井上尚弥vs.中谷潤人と“感動”呼んだ武尊の引退戦 視聴文化の違いが生んだ反響
100億円規模のメガイベントに
プロボクシング・ダブル世界タイトルマッチが5月2日、東京ドームで行われ、4団体世界スーパーバンタム級統一王者の井上尚弥(33)が元世界3階級制覇王者・中谷潤人(28)を判定の末に破り、防衛を果たした。
会場には5万5000人が来場し、PPV方式で世界に生配信。興行の収益は、4年前の那須川天心vs.武尊の『THE MATCH』の50億円を超え、日本格闘技史上最高額となる見込みだ。
観戦チケットは最高額33万円、最安値1万1000円だったが、早々に完売。NTTドコモの映像配信サービス『Lemino』 のPPVは事前購入が6050円、当日購入は7150円だった。
一部報道によると、これにスポーツ専門動画配信サービス『DAZN』で世界に生配信された放映権料、全国116の映画館で行われたチケット料金8200円のライブビューイング、スポンサー収入やグッズ販売を合わせると、100億円規模のメガイベントとなった可能性もあるという。
当然、選手のファイトマネーも過去最高額だ。井上尚弥は数十億円、中谷も数億円から10億円、井岡一翔(37)と井上拓真(30)も5億円程度を手にしたとされる。
肝心の『井上−中谷戦』も手に汗握る熱戦となった。
高度な技術の応酬で、6ラウンドまでお互いにクリーンヒットは許さない。中盤、偶然のバッティングで中谷が流血する場面もあったが、それも勝負の世界。最後まで手数に勝った井上が3-0で防衛を果たした。
ネット上では
〈あっという間に1Rが過ぎた〉
〈2人とも駆け引きすごかった〉
などの声が寄せられた。
この日の興行は7試合すべてが判定決着。トータル時間は7時間半に及んだ。
「SNSでも称賛の声が多いのは、時代とともに視聴方法が変化したこともある。世紀の一戦をどうしても見たい人たちが現地に行き、PPVを利用する。少なからずボクシングに精通しているので、玄人好みに見えた井上−中谷戦は大満足だった。もしこれがテレビで全国放送されていたら、ネットの反応もまた違ったものになっていたはずだ」(スポーツ紙記者)
以前は黙っていてもテレビで放送されていた。チャンネル権を握る父親に強制的に見せられ、ボクシングの魅力にハマった人、つまらないと感じた人もいたはずだ。
地上波放送にこだわった武尊
「それはそれで良さはあったが、今後は“見たい人だけがおカネを払って見る”文化になる。そのほうが団体や選手も(金銭的に)潤う」(同・スポーツ紙記者)
有料放送で物議を醸したのは3月に幕を閉じたWBCだ。こちらはネットフリックスが独占配信したが、その過程では放映権を獲得できなかった日本のテレビ局に批判も相次いだ。
「野球はボクシングと違って、古くから日本のお茶の間に浸透してきた。だから有料配信には拒絶反応が出たが、今後もこの流れは変わらないと思う」(同・スポーツ紙記者)
ゴールデンウィーク中にはもう1つ、格闘界のビッグマッチが行われた。4月29日に東京・有明アリーナで行われた武尊(34)の引退試合だ。
対戦相手は“宿敵”ロッタン・ジットムアンノン(タイ)。下馬評では武尊不利とされていたが、壮絶な5ラウンドKO勝ちで有終の美を飾った。
会場は総立ちの大歓声。この試合は前出の井上−中谷戦と違い、午後10時から11時24分までフジテレビ系でフルラウンド放送された。あるフジテレビ関係者は本サイトの取材に対し、
「フジで放送が決まるまでは紆余曲折があったと聞いています。格闘技ということで、どうしても反社対策を含むコンプライアンスが必須になる。武尊が所属する『ONE』が地上波放送に動いていることを聞きつけ、それを妨害しようと物騒な情報を流す連中もいました」
と明かす。
試合後のSNS上は
〈昔のK-1の熱気を思い出した〉
〈素晴らしい引退試合をありがとう〉
など称賛コメント一色。あまりにも劇的なラストにケチをつける者はほとんどいなかった。
前出のフジテレビ関係者は、
「誰でも視聴できる地上波放送でここまで言わしめた武尊はすさまじい。ひとりで興行を成功に導いたようなものですよ」
と語る。武尊は低迷するキックボクシング界の起爆剤となるべく、地上波放送にこだわっていたという。
ケタ違いの“利益”を叩き出した井上vs.中谷。感動を呼んだ武尊の引退試合。どちらも格闘技の魅力が詰まった大会だったことに間違いはないだろう――。
