「母さんが救急車で運ばれた」父親から突然のメール…48歳の週刊誌記者が直面したケアマネ問題 実家を訪ねると「いきなり25万円のベッドが…」〉から続く

「まだ大丈夫」と目をそらしてきた「親の介護」。親が倒れ、ついに目の前に難題が突き付けられた。週刊誌記者が丹念に紐解くと、矛盾と謎に包まれた「介護の実情」が、徐々に明らかに――。(2022年に「週刊文春」に掲載された連載「実録ルポ『介護の謎』」を再公開します。肩書、年齡はすべて当時)

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要介護認定の「不公平」


 

 親の介護に直面したとき、まず最初にすべきことは、「地域包括支援センター」(以下・包括)と呼ばれる機関(地域によって呼び名が違う場合もある)または区(市)役所の老人福祉関連部署、あるいは「居宅介護支援事業所」のいずれかにとにかく電話をすることだ。このうち、どこに電話をしても構わない。もちろん相談は無料だ。

 介護サービスを受けるには、本人や家族が、介護の総合相談窓口である包括などに電話をし、介護を必要とする者の状況などを説明したうえで、その後「要介護認定」を受けるというルートを経なければならないのだ。

 私の親も、要介護認定を受ける方法を病院から聞き、ネットで包括の代表電話番号を調べ、自ら電話をしていた。

 要介護認定の申請を役所で行うと、この人に介護が必要なのか、必要であればどのくらい必要なのかの“ランク”を判定されることになる。私の実家にも、役所の職員が来て、母親に聞き取り調査を行った。この時、私は立ち会っていないが、ある取材で聞き取り調査の様子を見たことがある。その時、区役所から年配の女性が一人でやってきて、介護を希望する本人に、いくつかの質問をしていた。

「寝た状態から上半身を起こせますか」

「座った状態を十分間保持できますか」

「起床から就寝まで日課を理解できてますか」

「この面接調査の直前、何をしていましたか」

 など数十項目を矢継早に質問すると今度は、

「テーブルに手をつかないで、そのまま立ち上がってみてください」

「片足を一秒程度あげてみてください」

「掴まらないで5メートル歩いてみてください」

 などと身体の動きもチェックしていた。

 こうした調査結果を基にコンピューターで1次判定をし、さらに「主治医の意見書」などを基に数人の専門家で2次判定を行い、ようやく「要介護認定」がされる仕組みだ。

 介護までは必要ないが、「支援が必要」と判断されると、「要支援」に認定される。介護が必要な場合は「要介護」となり、要支援は1と2、要介護は1から5のどれかにランク付けされるのだ。最も介護の必要性が高いのが「要介護5」であり、私の母親は「要介護4」と認定されていた。

 ところが、この要介護認定のジャッジもブラックボックスだ。取材をすると、「判定結果に不公平がある」との声をよく聞く。そうした声があることから、「不服申し立て(審査請求)」、「区分変更申請」などの制度もある。なぜなら、このランクによって、受けられる介護サービスの内容やサービスの自己負担額も異なるからだ。いわゆる「老人ホーム」の利用にも、介護のランクは関係してくる。

 無事に「要介護認定」を受ければもう安心とはならないのが介護。認定はまだ、介護の序章に過ぎない。

《この続きでは、「ケアマネの選び方」「危ない施設の見分け方」「保険不正請求の現場」など介護の闇を詳しく報じている。この連載をまとめた書籍『実録ルポ 介護の裏』が好評発売中》

じんのひろのり/1973年生まれ。2006年から「週刊文春」記者。2017年の「『甘利明大臣事務所に賄賂1200万円を渡した』実名告発」などの記事で「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」のスクープ賞を2度受賞。現在はフリーランスのノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌などで社会ニュースやルポルタージュなどの記事を執筆。近著に『実録ルポ 介護の裏』(文藝春秋)、『ルポ 超高級老人ホーム』(ダイヤモンド社)がある

(甚野 博則/週刊文春)