地震から2年4か月、水道復旧めど立たぬ地域で「水循環システム」の実証実験開始 石川・珠洲市

地震と豪雨、相次いだ自然災害で奥能登・石川県珠洲市ではいまだに水道の復旧が進んでいない地域があります。この場所で、生活再建の鍵を握る「新たな水の形」の実証実験が始まりました。
過疎化とインフラ維持という、全国の自治体が直面する難題への挑戦を取材しました。
住民「ほらほら出たよ!」
珠洲市宝立町にある住宅。およそ2年ぶりにキッチンの蛇口からあふれ出した水に住民の女性は思わず笑みをこぼします。
水がある当たり前の日常が戻り、再び故郷で暮らす希望が見えてきました。山あいに位置するこの地域は、地震から2年4か月がたった今も水道復旧のめどが立っていません。
97%が再利用可能 風呂やトイレの排水を独自の技術で浄化厳しい状況下でなぜ水が使えるようになったのか。答えは、家のそばに置かれた装置にありました。
近未来的なデザインの白くて大きな装置。
東京のスタートアップ企業「WOTA(ウォータ)」が開発した家庭用水循環システムです。
風呂やキッチン、トイレから出る排水を独自の技術で安全な水に浄化。一度使った水の97パーセントを再利用できるしくみです。
このシステムを導入したことで、水道が途絶えた地域でも自立した生活が可能になりました。
今回の取り組みは珠洲市と、震災直後から被災地支援を続けてきたWOTAが共同で行う国の実証事業です。
水道インフラの分散の可能性を検証従来の「巨大な浄水場」と「長い水道管」に頼る「集中型」ではなく、住宅や地域単位で水を循環させる「分散型インフラ」の可能性を検証します。
WOTA・前田瑶介代表取締役「従来のいわゆる大規模集約型の上下水道だけでは中々対処が難しいそういう状況になってきております。分散型ソリューションが役割分担を新しい可能性があるんじゃないかと12年前からご提案、開発を進めてきました」
実証事業に参加したこちらの世帯ではトイレのために150リットル、飲み水や風呂、洗濯に必要な400リットル余りと、家族3人が使用する量の水を確保。
モニターで残量を確認することもできます。
電気さえ使えれば、災害などで断水したときにも水に困ることはありません。
事業に参加した住民「いやぁ天国ですよ。やっと戻れるな、住めるなと」「ここにお嫁に来ると決めた時から、ここに骨をうずめるじゃないけど、そういうつもりで来てるもんで、何が何でも、どれだけかかっても良いから水だけは通してほしいと思いました」「ずっと待ちわびていたから、本当に涙でました」
老朽化の水道管をどう更新するのか、課題解決のモデルケースに住民が涙ながらに語る生活の再建。しかし、この事業にはもう1つ、自治体が抱える切実な課題があります。
珠洲市・金田直之副市長「インフラ、特に上下水道の多くは昭和の時代、平成の時代に作られたものがほとんどです。人口も3万数千人から今は1万人を切るかどうかとなっていますので、今後老朽化してきた水道管、下水道をどう更新するのか?」
莫大な費用がかかる水道管の更新。過疎化が進む奥能登でいかにコストを抑えつつ住民の命を守るか。
WOTA側も、珠洲での実証実験を全国のモデルケースにしたい考えです。
WOTA・越智浩樹執行役員「本当に今のままの形で戻す方が良いのか、もしくは新しい技術を入れて、集約型と分散型で分散すべきところは分散させて持続可能なものにするのか。もともと我々人口減少にお悩みの水道事業体とお付き合いしていくそういった所に展開していく、標準化、量産化というのを進めていきたい
震災を機に動き出した新しい水インフラの形。珠洲市では今後、2つの地域で2027年3月まで検証を行い、持続可能な未来への道筋を探ります。
