『SAKAMOTO DAYS』目黒蓮×高橋文哉の相性抜群 実写化の壁を越えた“バディ”の説得力
『名探偵コナン ハイウェイの堕天使』『ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー』ら大型タイトルが劇場にひしめく2026年のゴールデンウィーク。その中で、4月29日に公開された実写映画『SAKAMOTO DAYS』が話題を集めている。
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漫画・アニメ原作の実写化に対して、観客の目は年々細やかになっており、SNSでは“キャラ崩壊”を嘆く声も少なくない。特にアニメが先行して放送・公開されている作品は、声や動きのイメージがすでに観客の中に出来上がっているぶん、実写化のハードルが一段高いとも言える。
その意味で、実写映画『SAKAMOTO DAYS』はかなり繊細な題材だったように思う。2025年にはすでにTVアニメが放送されており、観客の中にはキャラクターの声や動きのイメージが出来上がっている状態でのスタートとなった。また本作は、坂本商店での日常パートと、世界中から集結する刺客とのバトルパートが交互に走り、そこにギャグが挟まる。日常と非日常、コメディとバイオレンスが行き来する作品であり、実写映像化においてかなり懸念になっていたのは、まずこのトーンの切り替えや配分だろう。
さらに本作は、目黒蓮演じる坂本太郎を中心に置きながら、葵(上戸彩)、陸少糖(横田真悠)、眞霜平助(戸塚純貴)、南雲(北村匠海)……と、セリフのある脇役の層が分厚い。それぞれが原作で固有のキャラクター性を持ち、全体としてメインに匹敵する登場人物が多いのも本作の特徴だ。そのバランスを成立させるうえで、目黒蓮演じる坂本と並んで重要な役割を担っていたのが、高橋文哉演じる朝倉シンだった。
高橋文哉といえば、特撮ドラマ『仮面ライダーゼロワン』(テレビ朝日系)で主役・飛電或人役に抜擢されてキャリアをスタート。以降、ドラマ『最愛』(TBS系)、『君の花になる』(TBS系)などの話題作を重ね、2025年度前期の連続テレビ小説『あんぱん』(NHK総合)では“健ちゃん”こと辛島健太郎役で朝ドラ初出演を果たした。直近では2026年1月期曜ドラマ『DREAM STAGE』(TBS系)に韓国語のセリフにも挑むダンスコーチ役で友情出演。同じく1月に封切られた東野圭吾の小説が初めてアニメ化された『クスノキの番人』では、主人公・直井玲斗役で長編アニメーション映画初主演声優も務めるなど、フォーマットを問わず幅広い役柄をこなしてきた。
そして特筆すべきは、そのキャリアの中でも“漫画の実写化”で実力を発揮してきた作品が多いことだろう。映画『ブルーピリオド』では、自分の好きに揺れる鮎川龍二(ユカちゃん)を、8キロの減量と脱毛、香水やネイルを取り入れた日常からの役作りで体現。ドラマ『フェルマーの料理』(TBS系)では数学者を志して挫折した天才・北田岳役で、見事な“闇落ち”の演技を見せた。さらにドラマ『伝説の頭 翔』(テレビ朝日系)では、千人を従えるカリスマヤンキー・伊集院翔と、最弱のいじめられっ子・山田達人の1人2役を、髪型、声、身体の使い方まで細かく分けて演じきった。
原作ファンの中でイメージが固まったキャラクターを、画面の中で生身の人物として立ち上げる。そうした仕事を何本も積み上げてきた経験は、シンの演技の隅々にまでにじんでいた。
今回高橋が演じた朝倉シンは、坂本の元部下であり、他人の思考を読むエスパー能力を持つ若き殺し屋だ。組織の命令で坂本を暗殺しようとするも、坂本一家の温かさに触れて殺し屋を引退し、坂本商店で働くようになる。シンは坂本の“日常”を守る側のもう一本の柱として、坂本が出ない場面でも単独でメインアクションを担う場面が多い。本格アクションは初挑戦だったという高橋は、撮影前から練習を重ね、「トランポリンを使ったり、ワイヤーアクションをやったり。マット運動や、4メートル先の目標物を飛び越える練習なんかもしました」と語っている(※1)。漫画の実写化は、作り手の力量次第ではコスプレ映像のように見えてしまうことがあるが、シンが画面に立ったときの“地に足のついた”感覚は、高橋の役作りにしっかり支えられていた。
※次ページ以降、実写映画『SAKAMOTO DAYS』のネタバレを含みます。
■“信頼”を感じさせる目黒蓮×高橋文哉の掛け合い 見どころとなるアクションはいくつもあるが、序盤の坂本を殺せなかったシンが、加藤浩次演じるかつての殺し屋組織のボスと向き合うシーンで一気にその世界に引き込まれた観客は多いのではないか。室内に置かれたものを生かしながら大勢を相手に戦う、軽快で身体感覚の伝わるアクションの迫力は、それだけで劇場に足を運ぶ価値になる。
他にも安西慎太郎演じる銀髪の毒使い・タツとのジェットコースター上の戦いや、光学迷彩スーツで姿を消す勢羽との戦いなど、原作ならではのフィクショナルな状況を実写で映像化した見せ場が並ぶ。
目黒蓮演じる坂本とのバディ感もまた、本作の大きな魅力だ。坂本に10億円の懸賞金がかけられ、次々と刺客が現れる中で、相棒として並び立つ2人の姿はもちろん、娘・花のために限定発売のシュガーちゃんランドセルを奪い合う場面や、遊園地で殺し屋稼業が葵にバレて説教される場面では、ギャグ感の強い会話が次々と飛び出す。
ふくよかな姿のオフモードと、本気モードのシャープな姿。その対極を演じ分ける目黒の坂本に対し、高橋は驚きや焦り、ツッコミの反応を細かく返していく。バディとしての信頼を感じさせる距離感を自然に成立させた掛け合いには、2人の俳優としての呼吸の良さがにじんでいた。
そして高橋には、漫画実写化の大きな役がもう一つ控えている。8月7日公開の実写映画『ブルーロック』の主人公・潔世一役だ。累計発行部数5000万部を超えるサッカー漫画の主人公を、サッカー未経験の状態から約1年半におよぶトレーニングを経て掴み取った大作である(※2)。1000人規模のオーディションを実施したと発表された本作の主役を任されたという事実そのものが、いまの高橋に寄せられている信頼の大きさを物語る。
原作の熱量が高く、観客の目も厳しい漫画実写化の現場で、高橋は役ごとに身体と表情を作り変えながら、原作の像を壊さずに人物として立ち上げる仕事を重ねてきた。2026年、“漫画実写化”の世界でいま最も目が離せない俳優として、高橋文哉の名はますます広がっていくのではないだろうか。
参考※1. https://gingerweb.jp/timeless/person/article/20260425-fumiya_takahashi-20※2. https://realsound.jp/movie/2026/01/post-2288558.html(文=すなくじら)
