他クラブとは異なる独自路線。橋本拳人、佐藤龍之介らを輩出したFC東京の“地域と共に”を合言葉にした育成哲学とは
地域と一緒になって、子どもたちと向き合うスタッフが青赤にはいる。そのひとりであるU−12プロジェクトリーダーで育成スカウト兼育成コーチを務める山口広野は、目を輝かせてこう口にした。
「入り口だからこそ、メチャメチャ大切で、面白いです」
FC東京は昨シーズンもJリーグ最優秀育成クラブ賞を受賞し、3年連続5度目の最多受賞を更新した。この賞はアカデミーからトップチームへの選手輩出数や、アカデミーに在籍した21歳以下の対象選手の公式戦出場時間を評価基準としている。浅利悟アカデミーダイレクターは受賞後の喜びのなかに「加えて」と、コメントしている。
「FC東京アカデミーに選手を送り出してくださっている4種(12歳以下・小学生年代)のチームのみなさまにも、この場をお借りして感謝の気持ちをお伝えしたいと思います」
FC東京のアカデミーの歴史は1993年にU−15チーム(後のU−15深川)が誕生し、続いて95年にU−18が立ち上がった。2004年からはU−15むさしが設立され、現在に至っている。ただし、青赤の入り口となるはずの4種のチームはあえて持たず、他の育成先進クラブとは異なる独自路線を走ってきた。山口はこう言葉にする。
「FC東京は地域と一緒になって子どもたちを育ててきました」
それはクラブ設立以前から脈々と受け継いだバトンでもある。地域貢献の一環で、サッカースクールを開催していた東京ガスの活動をベースにクラブ創設時にプロとして何をすべきかが議論された。その結果、4種のチームを持つのではなく、小学生までの年代は「広める」に焦点を当てることとなった。
そして、グラスルーツ活動に力を入れ、都内各地で指導者講習も含めた多様な普及活動に取り組んできた。さらに、スクールの延長線上で、より専門的な指導を行うために4年生以上を対象にした選抜クラスも設立。『アドバンスクラス』と名づけ、現在はスクール生以外からも参加を募っている。そのセレクションも「地域と共に」が重要になる。
「技量を見るけど、それ以前に所属チームの指導者にもヒアリングを重ねる。その子の性格や、チームでの立ち位置も把握しなければいけないので」
合格して終わりではない。その後も、所属チームの指導者や、家族とも密に連絡を取り合いながら一緒になって選手を育ててきた。だからこそ、山口らスタッフは「僕たちはサッカーの技量以上に喜怒哀楽を大事にしてきたし、自分の意見を主張する力や、それぞれの人間味を引き出すことも大切にしてきた」と言う。一人ひとりと寄り添うなかで、成功も失敗も経験した。それらが蓄えられて「あの選手と似ているから」と、少し先の未来を描きながら先回りして指導ができるようにもなってきた。
1期生の重松健太郎や2期生の武藤嘉紀をはじめ、アドバンスクラスを入り口に多くの選手がアカデミーを経てプロの道を切り開いた。現在トップチームに所属する18選手のアカデミー出身のうちアドバンスクラス出身は11選手。その中には高校、大学を経て再び帰ってきた選手もいる。アドバンスクラスは、青赤にとって大切な入り口の一つを担っている。
しかし、ジュニアチームの設立は、過去に何度も浮上しては消えてきた。それは昨シーズンも例外ではなかった。山口はこう明かす。
