「他クラブのジュニアからどれだけの選手がトップチームに昇格したかも全て調べました。それと比較して東京もアドバンスからどれだけトップチームにつながっているかも数値化してジュニアをつくった際の費用対効果も含め、議論を重ねました。今まで東京都をはじめとする地域の方々と一緒になって4種はやってきた。その今のやり方が東京に合っていて、それを引き継いだ方がFC東京らしいという結論に至りました」

 そう結論づけた理由も存在する。Jリーグ60クラブ時代となり、ジュニア年代のタレントの争奪戦は激しさを増している。FC東京には山口をはじめ、4種に4人のスカウトが在籍する。都内全域だけでなく関東近郊や、全国各地まで飛び回る生活を日々送っている。多忙を極めるスカウトを支えてくれるのが、地域の指導者や、選手の家族たちだという。

 本音で深く付き合ってきた彼らは大事な選手を託し、まだ見ぬ才能とのマッチングを後押してくれるのだ。そうして発掘した選手がアドバンスクラスで磨かれ、また地域と一緒になって育てていくサイクルも生まれている。プロ入りや、移籍の際に生まれる報奨金制度は12歳時点の所属チームまでさかのぼって支払われる。それを受け取る以上に、一緒になって育てた選手の成功を共に喜べることにFC東京は価値を見い出してきた。
「このクラブだけで育てるわけではない。どうすれば選手が良くなるか、どんな選手がいい選手なのかを地域と一緒になって考えてきた。だから、僕たちFC東京は今後も『地域と共に』というキーワードを変わらず大切にしていきたい」

 青赤育ちの選手が山口と思い出話に花を咲かせる姿を何度も見てきた。今回の取材中もそうだった。横を通り過ぎる度に、何人かに声を掛けられていた。ただ、いつもと少し違った言葉を掛けられていた。

「オレを見つけてくれてありがとう」

 山口は「そう思うなら活躍してくれよ(笑)」と軽口をたたいたが、唐突の感謝の言葉に目元を緩ませ、少し照れくさそうにしていた。FC東京と地域で育てた選手が、また次の青赤の夢や目標となる──。「メッチャメッチャ大切で、面白い」。そう胸を張れる、素敵な仕事だ。

取材・文●馬場康平(フリーライター)

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