【永田 雅乙】オワコン化すすむカツ丼チェーン「かつや」の嘆き《しんぱち食堂を横取りされた…》買収計画の夢ついえる
圧倒的なコスパとボリュームで人気を集める、カツ丼専門チェーン「かつや」が、ここ最近は、値上げや競合チェーンの成長などを理由に、意外にも苦戦を強いられていた。
これまで、業界内において「かつや」という存在を際立たせていたのは、間違いなく“安さ”という一点に尽きる。だが、物価高にあえぎ、値上げを余儀なくされている昨今では、その強さも失われつつある。
そんな中、実は苦境を打破するとっておきの“ウルトラC”案があったのだが――。
【前編記事】『店内ガラガラ「かつや」の客離れが止まらない…“安さ”という取り柄を失ったカツ丼王者の末路』よりつづく。
高級路線のトンカツ屋、あえなく失敗
「かつや」の運営元のアークランドサービス社も、いずれは「安さ」だけで戦っていても将来的に危うくなる時がくる、と予想していたのだろう。実際、2020年頃に思い切った策に打って出る。
それが安売りとは真逆の“高級路線”を目指した新業態の開発だ。その名は「とんかつ はま田」。2020年6月、東京・立川に1号店をオープンした新業態店だ。
先に結論から言えば、この「とんかつ はま田」は失敗に終わる。展開した数店舗はいずれもわずか1〜2年の間に閉店もしくは別業態への転換を余儀なくされ、2026年現在、同業態として残っている店舗はゼロだ。
当時のプレスリリースから同店のコンセプトを抜粋すると、以下の通り。
〈わざわざ電車に乗らなくていい、有名な老舗までいかなくてもいい。一緒に遠出できなかった家族や友人と一緒に、自分へのご褒美や大切な人との記念日に、自宅の近隣でゆったりと食事をする。
東北の広大な大地で育まれたSPF豚『桃豚』、独自の配合で軽い揚げ上がりを追求したパン粉、豚肉に合わせ厳選した揚げ油で温度を変えて仕上げる。こだわりがたくさん詰まったとんかつは揚げたてが一番美味しい。
素材から仕上げまで見渡せるオープンキッチン。「こんなお店があったらいいな」を身近に。それが「とんかつ はま田」です。〉
『ロースカツ丼(100g)』税別900円、『ヒレカツ丼(90g)』税別1000円という値付けは、上述のコンセプトに沿った“特別感”を演出するには、少し弱気な気もする。とはいえ「かつや」と比較すれば、確かに高級路線を目指したことには間違いない。
一発逆転も狙える“ウルトラC”のプロジェクト
だが、結果を見れば一目瞭然。「大手の外食企業であっても業態開発は非常に難しい」とよく言われるが、ご多分に漏れずアークランドサービス社もまた、業態開発に失敗してしまったのである。
一方、この失敗が決定的となった2022〜2023年頃、一発逆転も狙える“ウルトラC”のプロジェクトが水面下で動いていたことをご存じだろうか。
〈すかいらーくHDは、定食チェーン「しんぱち食堂」を運営するしんぱちを買収すると発表した〉そんな外食業界を揺るがす巨額M&Aが報じられたのは、今年3月24日のこと。
「ガスト」や「バーミヤン」、「しゃぶ葉」などを傘下に置く巨大外食グループのすかいらーくが、2024年9月に九州地盤のローカルチェーンだった「資さんうどん」を約240億円で買収したことは記憶に新しいが、今度は焼き魚をウリにした「しんぱち食堂」を約110億円で買収することを決めたのだから、当然、業界内は大いにざわついたという。
ところが、この報道を見つめながら「すかいらーくに横取りされた…!」とほぞを嚙む者がいた。それこそが、アークランドサービス社だったのだ。
買収候補の最有力候補だったのに…
フードビジネスコンサルタントの永田雅乙氏はこう明かす。
「元々『しんぱち食堂』を持っていた投資ファンドのJ-STAR社ですが、2022〜2023年頃、私の元にも『どこか買い手はないか』と相談に来たことがありました。同社は2017年に『しんぱち食堂』を買収し、当初は5年ほどで売り抜く思惑だったようですが、想定外のコロナ禍で売りたくても売れない状況に陥ってしまったのです。
早く買い手を見つけたい状況下で、最有力候補に挙がったのが実はアークランドサービス社だったのです。当時の『かつや』は業績好調も、それ以外の業態開発が上手く行っておらず、まして都市部の市場に弱かった同社にとって、『しんぱち食堂』はまさに理想の業態だったわけです。
ですから業界内では『アークランドが近々買う』と散々言われていたのですが、まさか別の企業、それもすかいらーくが買うなんて、正直夢にも思いませんでした」
すかいらーくに「しんぱち食堂」を横取りされた要因は資金力か交渉力か、それとも……。今となってはわからないが、いずれにせよ「かつや」とアークランドサービス社はまた振り出しに戻ってしまった。同社の次なる一手はいかに。
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