31歳という若さでMONAさんが直面したのは大腸がんという思いもよらない現実でした。治療方針の決定からライフプランの再設計まで。立ちはだかる数々の課題と向き合うことは容易ではありませんでしたが、ネガティブな気持ちとも正直に向き合い、自分を見つめ直してきました。

【写真】「抗がん剤で激痛」赤裸々に綴られたMONAさんの闘病ノート(全10枚)

抗がん剤治療をするべきか、悩みを救った夫の言葉

── 31歳のときに大腸がんと診断され、SNSでその経験を発信しているMONAさん。原発である腸の手術後、抗がん剤の治療について悩むことがあったそうですね。

MONAさん:悩ましかったのは、自分で抗がん剤の治療をするかしないか選択しなければならないことでした。担当の先生は、治療をおすすめするけれど、最終的な決断はこちらに委ねるというスタンスだったんです。先生からは「抗がん剤治療をすると再発の可能性が10%下がる、でも治療をして再発する人も、治療しなくても再発しない人もいる」という説明を受けました。

── 難しい判断だと思います。

MONAさん:どれだけの副作用が出るのかもわからないし、結果も人によって違う。ネットでさまざまな経験談を読んでは迷い、なかなか決められなかったですね。でも悩んでいると、夫が「手術で実際に体を診てくれたお医者さんの言うことを1度信じてみたら」と言ってくれたんです。その言葉を聞いて、「たしかに、実際に私の体の中を見てくれた人は先生しかいないのに、ネットの情報に左右されるのは違うかも」と思い、ふんぎりがつきました。 

入院中、毎日お見舞いに来てくれていた夫との2ショット

さらに抗がん剤治療の前に気になったのは、治療が終わった後に妊娠ができるのかどうかでした。先生に尋ねると、治療後は妊娠しにくくなる場合もあるとわかり、専門の部門と相談して、抗がん剤の治療前に受精卵を凍結することに決めました。

── 旦那さんとはどんなことを話しましたか?

MONAさん:闘病がどれくらい長引くのかわからないし、子どもを持てるのか、持つべきなのか今すぐには結論は出せないという話をしました。そのうえで、やらなかったことを後悔するよりは今できることはすべてやっておこう、という結論になりました。

受精卵の凍結に1か月ほどかかるため、そのぶん、抗がん剤の治療が遅れることも気がかりでしたが、今ではやっていてよかったと思います。受精卵凍結には若い世代のがん患者のための助成金が出たこともあり、とても助かりました。

保険の解約直後にがんがわかって後悔

── 闘病中は治療にかかる費用も気がかりですよね。

MONAさん:私の場合は、入院・手術代や抗がん剤の治療費、受精卵の凍結費のほか、通院の交通費、お見舞いに来てくれた親の交通費なども含めて100万円ほどかかったかと思います。幸い、受精卵凍結の助成金約30万円と、入院保険の20万円ほどで費用の半分はカバーできましたが、ひとつ保険で後悔していることがあって…。

── どういったことでしょうか?

MONAさん:実は病気が見つかる直前に、加入している保険を見直したくて、入っていた保険をひとつ解約したまま新しい保険に入りそびれていたんです。入院保険だけでもずいぶん助かりましたが、見直しを後回しにせず、解約と同時に新しく入り直していれば、負担がもっと少なくなっていたかもしれません。当時はそんなにすぐ自分ががんと診断されると思っていなかったので仕方ないのですが、ちゃんと考えておけばよかったです。

つらい気持ちを言葉を選ばずノートに書き綴り

── お話を聞いていると、闘病中に旦那さんがMONAさんに寄り添ってくれていたことがよくわかります。

MONAさん:夫は診察のたびに必ず付き添ってくれて、私と一緒に病気を受け止めようとしてくれました。自分の仕事があるにも関わらず家事もして、手術のときも入院中の14日間、毎日面会に来てくれたんです。退院後も私がしんどいときはすぐに横になれるよう布団を敷いてくれたり、私がひとりになりたいときは外出してくれたり…。細やかな心遣いがとてもありがたかったです。

治療のために仕事をやめることにした際も、「経済面では心配しないでいい、サポートする」と夫が話してくれたことに、今でもとても感謝しています。

── 闘病中のつらい気持ちも聞いてもらっていましたか?

MONAさん:いえ、仕事や治療のことなど選択に悩むときは相談にのってもらっていましたが、つらさや不安を一方的に夫に聞いてもらうのは違うなと思っていました。それで、自分の気持ちをノートに書き留めるようにしていたんです。

── どんなことを書いていたんでしょう。

MONAさん:治療を通して感じたことや生き方について考えたことのほか、治療・体調の記録、治療が終わったらやりたいことなどを書いていました。特にやっていてよかったなと思うのは「つらい気持ちもありのまま書いていくこと」です。エクスプレッシブ・ライティングという手法で、言葉を選ばずに思ったことを書き綴って、最後に破って捨てることで気持ちに整理をつける方法なんです。

「こんなに早く人生の終わりが来るかもしれないと知っていたら、やりたいことを後回しになんてしなかった」「なんでもっと健康に気をつけられなかったんだろう」といった病気になった後悔や治療への葛藤などを書いていました。

MONAさんがつけていた治療の記録

また、がんの治療にあたって知人からアドバイスをもらう機会がたくさんあったんです。みなさんよかれと思って教えてくださるんですが、闘病中はそのアドバイスを聞くのがつらいこともあって。たとえば「私の親族は抗がん剤治療をしなくても再発しなかったから、抗がん剤治療は無理してしなくてもいいのでは」と言われて、自分の選択が間違っているのだろうかと感じたりしたんです。そんなときは、気持ちを書き出してそのつらさを整理していました。ワンクッション置くことで、相手が自分のことを思って教えてくれているんだと素直に感謝できるようにもなりました。

── 闘病をきっかけに、SNSや動画の発信を始められたそうですね。

MONAさん:もともと仕事用のSNSアカウントを持っていたんですが、病気になる前には運用の方向性に悩み一度やめていたんです。でも、病気になったことが人伝いに知人に広まるのが嫌で、自分の言葉で状況や気持ちを伝えるために改めてSNSを始めました。

大腸がんは若い世代だと稀な病気だそうですが、SNSのおかげで同年代の患者さんと繋がることができましたし、また、自分や親族が同じ病気の方からもコメントをいただくことが増え、大変なのは私だけじゃないと励まされていました。

私は25年の1月に抗がん剤の治療が終わり、今は経過観察中です。副作用の足のしびれがまだ残っており、再発の可能性もあるので、今は体に負担をかけないペースで仕事や自分のやりたいことを模索しています。同じように日常に戻ることに難しさを抱えている方はたくさんいると思うので、私の経験が誰かの役に立つように今後も発信を続けていきたいと思っています。

闘病の中でさまざまな課題と向き合わなければならないとき、MONAさんの支えになっていたのは自分の気持ちを偽らず、正直に書き出し向き合う時間でした。「つらい」「悲しい」など、ごまかしがちな自分の本音と向き合うために、あなたが持っている自分だけの時間や習慣はありますか?

取材・文:阿部祐子 写真:MONA