ダークエネルギーカメラが観測した「ソンブレロ銀河」 広大なハローも詳細に捉える
こちらは、セロ・トロロ汎米天文台(チリ)のブランコ4m望遠鏡が観測した「ソンブレロ銀河」(Messier 104、M104)。おとめ座の方向、地球から約3000万光年先にあります。

暗い塵の帯が特徴的な銀河
画像を公開したNOIRLab(アメリカ国立光学・赤外天文学研究所)によると、ソンブレロ銀河は差し渡し約5万光年におよぶ天体です。明るく輝く中心核を、低温の塵(ダスト)と水素ガスからなる暗い帯が取り囲んでいて、この帯の部分で活発な星形成が行われています。
高く盛り上がった中心部と、広い円盤部からなるその姿が、メキシコの伝統的なつば広帽子「ソンブレロ」に似ていることから、ソンブレロ銀河と呼ばれるようになりました。
鮮明に捉えられた巨大なハローと恒星の帯
この画像は、ブランコ4m望遠鏡の「DECam(ダークエネルギーカメラ)」で取得したデータを使って作成されました。DECamは画素数約520メガピクセル、満月約14個分の広さ(3平方度)を1回の観測で捉えることが可能で、ダークエネルギー(暗黒エネルギー)の研究を主な目的として開発された観測装置です。
NOIRLabによると、今回公開された画像で最も注目すべきは、ソンブレロ銀河の周囲に広がる「ハロー(銀河全体を包み込む球状の領域)」と「恒星ストリーム(銀河の重力で引き延ばされた星々の流れ)」です。
高い解像度を持つDECamは、中心核の周囲にある約2000個の球状星団や、銀河本体の幅の3倍以上にわたって広がっているように見える淡いハローを詳細に捉えられました。これほどの規模と詳細さで銀河のハローが観測されたのは、今回が初めてかもしれないとNOIRLabは述べています。
また、画像の南側(下部)には、帯状に伸びる恒星ストリームも確認できます。広大なハローや恒星ストリームには、かつてソンブレロ銀河がより小さな衛星銀河(伴銀河)と衝突・合体した際に引き剥がされた星々が含まれていると考えられており、過去に起きた銀河どうしのダイナミックな相互作用の歴史を物語っています。
複数の天文学者が紡いだ発見の歴史

ソンブレロ銀河は美しい姿だけでなく、発見に至る歴史も興味深い天体です。
1781年にソンブレロ銀河を発見したフランスの天文学者Pierre Méchain(ピエール・メシャン)は当時、同僚であるCharles Messier(シャルル・メシエ)の彗星探索を支援していました。この時Messierが作成していたのが、彗星と紛らわしい天体をまとめた、現在「メシエカタログ」として知られるリストです。ソンブレロ銀河は出版されたオリジナルのメシエカタログには記載されていませんでしたが、Messierは個人的なコピーへ手書きで追加していたことが後に判明しました。
また、Méchainとは別に、1784年にはイギリスの天文学者William Herschel(ウィリアム・ハーシェル)も独立してこの銀河を発見しています。これらが同一の天体であることを1921年にフランスの天文学者Camille Flammarion(カミーユ・フラマリオン)が最終的に確認したことで、ソンブレロ銀河は「M104」として正式にメシエカタログへ追加されました。
時代を超えた天文学者たちの協力によってカタログに加わったソンブレロ銀河は、現在もアマチュア天文家から最先端の研究者まで、多くの人々を魅了し続けています。
冒頭の画像はNOIRLabから2026年4月24日付で公開されています。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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