「このままでは物も人も運べない」深刻化するドライバー不足…外国人への指導に奮闘する教習所の「リアル」
コンビニや介護の世界で外国人が増えていると感じるなか、いまや、ドライバーの顔ぶれも大きく変わろうとしています。なぜ、トラックやタクシーなどの外国人運転手は増えているのか?接客とは違い、交通ルールや免許取得には言語のハードルも大きそうなのにどうしてでしょう。「移動インフラは待ったなしなんです」と言う、ほめちぎる教習所 伊勢の副管理者・米澤義幸さんに伺います。
【写真】「皆さんの出身はどちら?」国際色ゆたかな指導員さん(8枚目/全9枚)
トラック、タクシー…ドライバー問題は待ったなし
── 外国人運転手(トラック・バス・タクシー)の試験合格者は昨年8月時点で2000人を突破。今後5年間で、政府は約2万5000人を受け入れる計画です。内閣府資料によれば、2020年~2024年で日本の運転免許を保有する外国人は約27.3%増加したと言われています。なぜ、そこまで増えたのでしょうか?
米澤さん:2024年12月の特定技能「自動車運送業」が開始され、トラック、バス、タクシーの外国人ドライバー雇用が可能となったからです。大きなきっかけは、働き方改革関連法により、2024年4月から国内のトラックドライバーの時間外労働時間が制限されたことです。物流業界は人手不足による輸送力減や売上減など、懸念される問題に対応するため、2025年3月から同特定技能制度が本格運用されています。
── とはいえ、日本と他国では交通ルールや言語が異なります。外国人が複雑そうな日本の交通ルールに対応できるものでしょうか?
米澤さん:たしかにルールは違います。たとえば、多くの国が「右側通行・左ハンドル」を採用。踏切の一時停止が不要な国もあると言われています。ドライバーの多くの担い手となるのは東南アジアの方々。彼らの国では法律や標識だけでなく、その場の交通状況(バイクの数やクラクションの音)に合わせた「ローカルルール」が優先されることも多いようです。
ただ、東南アジアの教習生は、その国民性からとても真面目で熱心に人の話を聞いてくれるので、現在は自国と日本のルールを比較して指導するのではなく、日本の交通ルールを一から学んでもらっている状況です。
── そこまでされているなかでも、文化の違いなどから外国人ドライバーだと不安といった懸念の声もあるようです。
米澤さん:一般の外国人ドライバーですと日本の交通ルールに理解が乏しいので不安を感じるかもしれません。ただ、繰り返しになりますが、運転を職業とする方々は働く意欲も職業意識も高い。ルールを理解しようと必死に学んでいる方が多く、私たちは彼らのそうした姿勢に寄り添っていきたいと考えます。
アプリ開発で運転中も同時翻訳が可能に
── 米澤さんが所属する教習所で指導する際に、言語の違いは大きな課題にはならないでしょうか?
米澤さん:技能教習では、教習生と指導員間で言葉のやりとりが必須です。自社のグループ企業でソフトウェアを開発し、瞬時に翻訳する外国語自動翻訳アプリをAT教習車に搭載して、昨年4月から実証実験を開始しています。
このアプリは携帯端末に専用ソフトをダウンロードするだけで利用でき、英語、ベトナム語、中国語、ミャンマー語など、現在は10か国語に対応しています。今後は、全国の運転免許センターの学科試験で対応する20言語にならい、その言語数を目標に実装できるようにさらなる開発を進めています。
また、数年前から外国人指導員も徐々に採用し、外国籍の方々により安心して教習を受けられるように努めてまいりました。今回のアプリ導入で、さらに満足度や質の高い教習を提供できればという思いです。
── テクノロジーと外国人材による指導が機能すれば、ドライバー問題解決の一助となるいっぽうで、外国籍の教習生を確保することは、ビジネス面でもメリットがありそうですね。
米澤さん:(免許を取得できる年齢となる)日本人の18歳人口は減少をたどるなか、在留外国人は増えてきているので、事業の面でも外国人をターゲットにしていくことは重要です。同時に、東南アジア圏の方は勤勉で努力家なので教えやすく、彼らの姿勢は今の日本人が学ぶべきところも多いと実感します。
実際、日本人のドライバー不足に悩む国内のタクシー会社などからの問合せを受け、外国人人材を増やせるよう務めています。私たちの教習所では、ベトナムなど現地でドライバーとして日本で働きたい人を募って受け入れ、免許を取得してもらい、日本のタクシー会社などに就職して働いてもらうなど、連携を深めています。さらにいえば、日本で指導できる人を養成する意味も含め、ベトナムで現地法人と共同出資し、荒れた地を開墾して教習所を作り、インドネシアでも同じ構想があります。
すべては分け隔てなく運転を楽しんでもらいたい思いから
── そこまで、外国人を受け入れる体制を築けるのはなぜでしょうか?
米澤さん:先に挙げたビジネス面もありますが、私たち教習所の理念が「すべての運転する人の喜びと安全」だからです。日本で暮らす人たちにとって、運転できるようになることで少しでもできることを増やしてほしいからです。そのなかで成長実感を得られるよう、弊社が少しでもサポートできればと考えています。
── 「すべての運転する人の喜び」を体現すべく、運転免許取得に不安のある方への教習をサポートするための全国的な活動「つばさプラン」も導入しているそうですね。
米澤さん:日本人でも心を病む人やコミュニケーションが苦手な人に向けて、弊社は分け隔てなく、運転を楽しんでもらえたらと思い、受け入れ体制を整え、免許取得を目指します。運転能力があれば、定職に就くなど就労する際の力になりますから。運転できることが、何かのきっかけになれば嬉しいです。
そのため、指導員が発達障害や福祉・教育に関する勉強会を受け、指導にあたっています。国内のドライバー不足は喫緊の課題ですが、私たちとしては国籍やサポートが必要な人など分け隔てなく、運転を安全、かつ楽しんでもらえたらと考えています。
取材・文:西村智宏 写真:ほめちぎる教習所 伊勢

