新聞社でも「男性が優遇されている」女性の約6割が実感 男女の認識ギャップ浮き彫り、新聞協会が初調査
社会の不正や差別を追及してきた報道機関で働く人たちは、自らの職場をどう見ているのか。
一般社団法人「日本新聞協会」は4月23日、加盟する新聞社・通信社の社員・役員を対象に実施した「ジェンダー・多様性に関する意識調査」の結果を発表した。性別による認識のギャップが浮き彫りになった。
●「男性が優遇されている」女性は男性の約2倍
調査は、加盟99社の社員・役員約3万6000人を対象におこなわれ、9630人が回答した(回答率約27%)。
「職場において男女の地位は平等か」との問いに、「平等である」と答えた男性が40.7%だったのに対し、女性は26.0%にとどまった。
一方、「男性が優遇されている」と感じている女性は58.3%に上り、男性(29.4%)の約2倍に達した。
「平等でない」と感じる場面については、男女ともに「管理職や経営層に登用される男性が多い」との回答が最も多かった。
また、女性管理職比率に数値目標を設けることについて、全体の55.6%(女性は67.9%)が賛成し、「女性登用に必要な措置」と捉える傾向がうかがえた。
●「長時間労働」の評価に世代・役職間の差
深夜に及ぶ新聞制作や突発対応など、新聞社特有の長時間労働に対する意識の違いも明らかになった。
「長時間働く人が高く評価される職場か」という問いに対し、40代以下の女性と20〜30代男性の約6割が「そう思う(評価される)」と回答した。
一方で、50代男性の半数超と役員層の7割弱が「そう思わない」と答え、世代や役職による認識の差が際立った。
また、「将来管理職になりたいか」という問いには、全体の50.8%が「なりたくない」と回答。特に30代女性では58.1%に上り、40代以下の女性の理由として「家庭との両立困難」や「ロールモデル不在」などが目立った。
●男性の長期育休、意識と実態に隔たり
男性社員の1年以上の育休取得については、全体の77.8%(20代、30代では約9割)が賛成した。
一方で、実際に取得経験のある人のうち、1年以上取得した人は1.3%にとどまる。取得を望みながら断念した人も5.8%存在しており、意識と実態の間に大きな隔たりがあることが浮かび上がった。
●有識者「分断が生まている」
調査結果について、東京大学大学院の林香里教授(ジャーナリズム論)は、次のように指摘する。
<多様な働き方を実践する過程では、包摂性と公平性が課題となる。本来、社員一丸でこの難題に向きあうべき過程で分断が生まれている。
旧態依然とした新聞業界の変革を望む声がありながら、リーダーになりたい人が男女ともに少ないというミスマッチが生じている。
新聞業界はデジタル化の中で変革が要請されている状態にあり、ビジョンをつくり実行する人材が十分に育っていないことは深刻である。このような状況では、今後、外部から経営人材を迎えることなども検討に値するのではないか。>
また、関西大学の多賀太教授(ジェンダー学)は「性別や立場の違いによる不満は別個の問題ではなく、共通の構造的要因から生じたコインの裏表」と指摘し、働き方や人事制度の構造的な改革の必要性を提示した。
●「取り残されている」危機感
調査結果を受け、日本新聞協会の中村史郎会長(朝日新聞社代表取締役会長)は、次のようなコメントを発表した。
<1万人近くの回答を集計して見えてきたのは、「新聞業界が世の中の流れから取り残され ている」という危機感や、「多様な視点を確保しないと業界の未来は暗い」といった変革を 望む多くの声です。
現に働く人に加え、これから新聞業界をめざす人にもより働きやすい環境を提供できるよう、議論と取り組みを一層加速させてまいります。>
