東京スター銀行本店の社食で行員とランチを囲む伊東武頭取(右から2人目)(22日、港区で)

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 物価高で外食代が高騰する中、都内の企業では、従業員がお手頃な価格で食事ができる「社員食堂(社食)」の導入が相次いでいる。

 新年度の税制改正で、企業による従業員の食事補助の非課税枠が大幅に引き上げられ、家計支援に乗り出す動きもある。(五十川由夏)

ランチ代高騰

 港区赤坂にある東京スター銀行本店の社食。22日昼、1食530円の日替わり定食や麻婆(マーボー)ナス丼など4種のメニューが用意され、多くの社員でにぎわっていた。

 同行は昨年3月、魅力的なオフィス環境づくりの一環で、厨房(ちゅうぼう)や排水設備が不要の「キッチンレス社食」を導入。製造拠点で調理され、運ばれてきたランチを温かい状態で食べられる。行員の男性(43)は「外食だと1500円くらいかかることもあり、社食は家計にとって非常に助かる」と笑顔を見せた。

 同行の担当者は「社食だと500円前後で提供でき、従業員を金銭的な面でサポートできる」と話す。

 「ホットペッパーグルメ外食総研」が首都圏、東海圏、関西圏で働く人を対象に実施した3月の調査によると、平日ランチ代(外食)の平均予算額は前年比88円増の1338円に上り、過去最高だった。

 ランチ代が高騰する中、企業が食費を補填(ほてん)する社食は、手頃な価格で食事ができる存在として注目が集まる。同行の社食を運営するボンディッシュ(千代田区)によると、キッチンレス社食を導入する企業は相次ぎ、1〜3月の問い合わせが前年同期比で4割増えているという。

非課税の上限拡大

 企業の食事補助を促すきっかけになっているのが、新年度の税制改正だ。企業が補助する勤務時間の食事代については元々、一定額まで所得税が課されない制度があるが、政府は物価高への対応として、非課税となる上限額を42年ぶりに拡大。1人当たり月3500円から月7500円に引き上げた。従業員が総額の半分以上を負担する要件を満たせば、食事補助にかかる所得税が非課税となる。

 たとえば、1か月当たり総額1万5000円分の食事をした場合、半額の7500円を従業員が負担すれば、企業が補助する7500円は非課税になる。ただ、社員の負担が半額に届かなければ、企業からの補助は所得税として全額が課税対象となる。

 食事補助は、従業員にとって実質的な手取りの増加につながるとあって、「第3の賃上げ」として注目されている。

関連サービス充実

 税制改正を受け、社食関連のサービスを営む会社には問い合わせが相次いでいる。

 食堂を設けなくても社食が導入できるサービスを手がける江崎グリコ(大阪市)は4月、大阪市内で展開していたデリバリー型社食「SUNAOデリバリー」を首都圏にも拡大した。最少で1日5食から利用でき、中小企業からの引き合いも多いという。

 「エデンレッドジャパン」(港区)が展開するのは、専用ICカードで決済する食事補助サービス「チケットレストラン」。企業と従業員が入金額を折半して負担するカードを使い、対象のコンビニや飲食店で食事が購入できる。同社は「昨年と比較しても大幅に問い合わせが増加している」としている。

 山梨大の西久保浩二名誉教授(人的資源管理論)は「福利厚生の中でも食の支援は目に見えて分かりやすく、従業員の定着や採用の際のアピール材料にもなる。税制改正を機に食事補助に関心を持つ企業はさらに増えるのではないか」と指摘している。