太陽系外惑星「L 98-59 d」には深い“マグマの海”がある可能性 地球の過去の姿を映す?
宇宙のスケールからすれば近所といえる地球から約35光年先に、これまでの天文学における分類の枠には収まらない惑星が存在するかもしれません。
オックスフォード大学のHarrison Nichollsさんを筆頭とする国際研究チームは、これまで水が豊富な海洋惑星の可能性が指摘されていた太陽系外惑星「L 98-59 d」について、実際には深さ数千キロメートルにも及ぶ恒久的な「マグマオーシャン(マグマの海)」を持つ、全く新しいタイプの惑星である可能性を示す研究成果を発表しました。研究チームの成果をまとめた論文は学術誌「Nature Astronomy」に掲載されています。

従来の予想を覆す新たなタイプの惑星か
これまで、地球よりも少し大きなサイズの惑星(スーパーアースやサブネプチューンと呼ばれる)のなかでも低密度のものは、岩石の核(コア)と厚い水素やヘリウムの大気を持つ「ガス惑星」か、深い海(もしくは氷)に覆われた「海洋惑星」のどちらかだと考えられてきました。
とびうお座の赤色矮星「L 98-59」を公転するL 98-59 dも、ポルト大学の研究者らによる2021年の発表では質量の最大30パーセントを水が占める海洋惑星の可能性があるとされ、注目を集めていました。
35光年先の系外惑星を詳細に観測、ハビタブルゾーン内に新たな惑星が存在か(2021年8月7日)
しかし、Nichollsさんらによれば、L 98-59 dはガス惑星と海洋惑星のどちらにも当てはまりません。最新の観測データとシミュレーションによる分析の結果、この惑星は硫黄と水素を豊富に含む、「溶融惑星」とでも呼ぶべき新しいタイプの天体である可能性が示されたのです。
灼熱のマグマオーシャンが硫黄の貯蔵庫に?
研究チームがL 98-59 dの数十億年におよぶ歴史をシミュレーションしたところ、水が豊富に存在するというかつての予想とは異なる、驚くべき内部構造が浮かび上がりました。
論文によると、L 98-59 dの内部はドロドロに溶けたケイ酸塩でできており、深さは数千キロメートルに達するマグマオーシャンを形成しています。しかも、このマグマオーシャンは惑星が形成されてから現在に至るまで、固まることなく存在し続けていると研究チームは考えているのです。
2024年のジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)による観測データから、L 98-59 dの上層大気には二酸化硫黄が存在することが示唆されていました。検出された二酸化硫黄は、主星であるL 98-59から届く強力な紫外線によって大気中の硫化水素と水分子が光化学反応を起こすことで生成されているとみられています。
通常、大気が強い紫外線を浴びると、大気を構成する分子の一部が宇宙空間へ吹き飛ばされてしまいます。しかし研究チームによれば、L 98-59 dでは巨大なマグマオーシャンが硫黄を蓄える貯蔵庫として機能しているといいます。硫化水素の形でマグマから少しずつ硫黄が放出され続けることで、数十億年にわたって厚い大気が維持されているというわけです。
注目の惑星系が地球の過去の手がかりに

L 98-59の惑星系は、ハビタブルゾーン(天体の表面に液体の水が存在し得る領域)を公転する5番目の惑星「L 98-59 f」の存在が2025年に発表されるなど、近年熱い視線が注がれている研究対象です。今回の発見は、天の川銀河には私たちが知らない多様な惑星がまだまだ存在し得ることを示していると言えそうです。
約35光年先の赤色矮星で5番目の惑星を発見 ハビタブルゾーン内を公転(2025年7月26日)
地球や火星など太陽系の岩石惑星も、形成直後には全体がマグマで覆われるマグマオーシャンの時代があったと考えられています。今の人類には決して訪れることができない遠く離れた世界ですが、L 98-59 dを研究することは現在の地球がどのようにして形作られてきたのか、その原始の姿を探る重要な手がかりになるのかもしれません。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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