脳と体の健康維持に効果的な栄養素は何か。医師の牧田善二さんは「私が今、最も注目している栄養素に『イミダゾールペプチド』という脳にも全身の健康にもいい成分がある。動物性タンパク質に含まれるため、これからの食生活では意識して選ぶといい」という――。

※本稿は、牧田善二『糖が脳を破壊する』(SB新書)の一部を再編集したものです。

写真=iStock.com/Irina Kozmova
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Irina Kozmova

■脳疲労を解消するサプリの種類

脳疲労を解消するという名目のサプリメントが、いろいろと売られています。そのアプローチ法はさまざまですが、ビタミンB群を主体にしたものも多く見られます。

ビタミンB群は、脂質、糖質、タンパク質などの栄養素を代謝するときに必要です。

たとえば、ビタミンB1は糖質を分解してエネルギーをつくり出すために、ビタミンB2は脂質の代謝に、ビタミンB6はタンパク質とアミノ酸の分解・合成に必要です。

だから、こうしたビタミンB類を補給すれば、脳にエネルギーが回りやすくなりますし、全身の疲労感解消などにも効果的です。

私も、ビタミンB群のサプリメントを愛用しています。

なお、ビタミンB1はアルコールの代謝にも必要とされるために、お酒を飲む人は不足しがちです。

依存症になるほどお酒を飲む人では、ビタミンB1不足による意識障害(ウェルニッケ脳症)や記憶喪失(コルサコフ症候群)を起こし、脳に大きなダメージを与えるケースも見られます。

お酒を飲むにしろ、飲まないにしろ、脳を大事にしたいならビタミンB群を多く含む食品を積極的に摂りましょう。

なかなか食事で摂れない人は、私のようにサプリメントに頼ってもいいでしょう。

ちなみに、「栄養ドリンク」や「エナジードリンク」と言われるような類いの飲料の場合、ビタミンは入っていても、飲みやすくするために余計な糖分も入っているのでおすすめできません。

■脳と体の疲労をWケアする成分

私が今、最も注目している栄養素に「イミダゾールペプチド」という物質があります。イミダゾールペプチドには「カルノシン」「アンセリン」「バレニン」「ホモカルノシン」などがあり、体を酸化から守り、疲労から回復させる効果があることがわかっています。

また、中高年の健常者を対象に数カ月間にわたって行った実験では、1日1回イミダゾールペプチド1グラムを含む飲料を摂ったグループは、プラセボを摂ったグループよりも、記憶力の低下が抑制されたという報告もなされています。

つまり、脳にも全身の健康にもいい成分と考えることができます。

イミダゾールペプチドは、マグロやカツオのような回遊魚、ウナギ、鶏のむね肉などに多く含まれます。

回遊魚はずっと泳ぎ続けていますし、ウナギは産地から遠く海を渡ってきて長距離を移動します。そうした持久力を支えているのがイミダゾールペプチドです。

鶏のむね肉に多いのも、もともと鶏が翼をずっと動かすために使っている部位だからなのかもしれません。

これからの食生活において、動物性タンパク質を摂るときには、イミダゾールペプチドが多いものを選ぶのもいいでしょう。

カツオやマグロなどは、刺身で食べることでAGEを増やさずに摂取できます。

鶏肉の場合、揚げ物ではなく、蒸すなどの調理法でAGEを増やさないようにしましょう。そのときに、調理で出た煮汁にもイミダゾールペプチドが溶け出ていますので、スープにしてあますことなくいただきましょう。

小腹が空いたときのおやつとして、むね肉でできたサラダチキンもおすすめです。

■高血圧で中年期の血管性認知症リスクが最大5.6倍

1961年から長期間にわたり、大学のチームが地域の人を対象に行った、いくつもの大規模調査があります。

そのひとつが、血圧と認知症の関係を追っていくというものです。そこでは、中年期(50〜64歳)の534名、老年期(65〜79歳)の668名について、血圧レベルと認知症の関係が調べられました。

その結果、血圧が高くなるほど血管性認知症のリスクが上がることが明らかになりました。血圧が高いと脳梗塞や脳出血が起きやすくなります。そして、脳梗塞や脳出血を引き金に、血管性認知症になる人が増えるのです。

この調査では、血圧とアルツハイマー型認知症の直接的な関連は指摘されていませんが、そもそも、血管性認知症があるとアルツハイマー型認知症を発症しやすいことがわかっています。

つまり高血圧は、脳梗塞や脳出血という脳疾患に加え、血管性認知症もアルツハイマー型認知症のリスクも高めます。

さらに、動脈硬化が進んで、ほかの生活習慣病にも罹りやすくなるので、血圧管理は、中年から取り組むべき重要なテーマです。

出所=『糖が脳を破壊する』

血圧は、医療機関で測ると高くなる人が多く、なかなか正確なところが把握できません。一番良いのは、自宅で自ら計測することです。

今はさまざまなタイプの血圧計が、家電量販店やドラッグストアで販売されています。ネットでも簡単に入手できるので、一家に1台揃えましょう。

ただし、信頼のおけるメーカーのもので、上腕にカフを巻いて測るタイプを選んでください。手首や指先で測ると、どうしても誤差が出ます。

■「降圧剤を飲んだらやめられない」は大誤解

そして、起きてトイレを済ませたら、リラックスして計測し、数値を記録しましょう。緊張して上がってしまうようなら、2回計測して低いほうを採用して構いません。できれば、就寝前にも測るようにするといいでしょう。

牧田善二『糖が脳を破壊する』(SB新書)

日本高血圧学会のガイドラインによれば、診察室血圧で収縮期血圧(上の血圧)が140以上、拡張期血圧(下の血圧)が90以上のいずれかに該当すれば高血圧と診断されます。

家で計測すればもっと低くなるはずなので、上が135以上、下が85以上のいずれかで高血圧となります。

なお、血圧は、ちょっとした体調不良やストレスで高くなることがあるので、一喜一憂する必要はありません。むしろ、日々計測していると、緊張が解けて低めに計測することがあるくらいです。

それでも、計測を続けて高血圧状態が長く続くようなら迷わず、医療機関を受診し、適切な治療を受けてください。

ときどき、「降圧剤は一度飲み始めたらやめられないので飲みたくない」という人がいます。しかし、これは非常に非合理的な考えだと言わざるをえません。まず、「やめられない」というのは誤解で、状況に応じて減薬していけます。

それになにより、飲み続けることになったとして、それのどこが問題なのでしょう。服薬することで血圧を正常に保ち、結果として脳や全身の健康を守れるなら、それでいいではありませんか。

服薬を拒否して動脈硬化を進行させ、脳卒中や心筋梗塞を起こす道をあえて選ぶ必要はないと私は考えています。

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牧田 善二(まきた・ぜんじ)
AGE牧田クリニック院長
1979年、北海道大学医学部卒業。地域医療に従事した後、ニューヨークのロックフェラー大学医生化学講座などで、糖尿病合併症の原因として注目されているAGEの研究を約5年間行う。この間、血中AGEの測定法を世界で初めて開発し、「The New England Journal of Medicine」「Science」「THE LANCET」等のトップジャーナルにAGEに関する論文を筆頭著者として発表。1996年より北海道大学医学部講師、2000年より久留米大学医学部教授を歴任。2003年より、糖尿病をはじめとする生活習慣病、肥満治療のための「AGE牧田クリニック」を東京・銀座で開業。世界アンチエイジング学会に所属し、エイジングケアやダイエットの分野でも活躍、これまでに延べ20万人以上の患者を診ている。著書に『医者が教える食事術 最強の教科書』(ダイヤモンド社)、『糖質オフのやせる作おき』(新星出版社)、『糖尿病専門医にまかせなさい』(文春文庫)、『日本人の9割が誤解している糖質制限』(ベスト新書)、『人間ドックの9割は間違い』(幻冬舎新書)他、多数。 雑誌、テレビにも出演多数。
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(AGE牧田クリニック院長 牧田 善二)