片山さつき財務相も「ショック」…日本の若者が“NISA貧乏”に陥る決定的な理由 専門家は「年収1年分の貯蓄がない若者はNISAに手を出してはダメ」と指摘
衆議院財務金融委員会で3月10日、国民民主党の田中健議員が片山さつき財務大臣に「NISA貧乏という言葉、お聞きになったことはありますでしょうか」と質問した。田中議員は「20代と30代は75%が『公的年金に期待していない』」と回答している」、「かつては老後に1000万円が必要と言われていたが、今は2000万円、3000万円と言われるようになり、『とりあえずNISA』が増えている」といった趣旨の説明を行った。(全2回の第1回)
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【写真を見る】「えっ、こんなに増えるの?」 毎月3万円を40年間積み立てると1440万円が驚きの金額に ※事例はあくまでシミュレーションです(金融庁HP「NISAを利用する皆様へ」より)
担当記者は「何しろ場所が国会なので田中議員も『20代は投資を増やしているが消費は伸び悩んでいるそうです』と終始一貫して“上品”な質問内容でした」と苦笑する。

「しかし、もっと身も蓋もない表現に翻訳すれば、『若者を中心にNISAに対する過剰な投資が目立っており、食費にも事欠くため“NISA貧乏”と呼ばれている。これを片山大臣はどう思うか?』という内容だったのです。新聞・雑誌記事のデータベースを検索すると、2024年ごろからNISA貧乏に関する記事が掲載されていることが確認できます。金融の専門家が『SNSやYouTubeでは「NISAを始めないと大変なことになる」と不安を煽る投稿が多い』と注意を呼びかけています。騙された若者は『なるべく早く、一円でも多く投資したほうがいい』と思い込み、生活費さえ足りなくなってしまうのです」
片山財務相は質問に「ちょっとショックを受けたところです」と正直な気持ちを吐露。その上で、今後は“啓蒙”が重要との答弁を行った。
「つまり片山財務相は金融教育の重要性を指摘しました。『生活費の中からバランスよく投資に回す重要性』を国民に広く呼びかけ、NISA貧乏を撲滅しようというわけです。この答弁にSNSでは大きく分けて2種類の反応がありました。一つは『投資は自己責任だから放置しろ』という冷めた意見。もう一つは『NISAに投資しろと煽っていたのは政府だ』と国の責任を問う声です」(同・記者)
NISAでお金を失った人も
投資に詳しい経済ジャーナリストの荻原博子氏は「やはりNISAに関して間違った認識を持っている人が少なくないと指摘せざるを得ません」と言う。
「NISAを元本保証の積立預金のような印象を持っている人が目立ちます。率直に言って投資とは本質的に博打・ギャンブルなのです。金融機関のNISA専用サイトには『毎月1万円の積立を数十年続けた場合、年利何パーセントの運用が可能か?』などと書かれています。しかし投資とはプラスの利益を出すこともあるとはいえ、マイナスの損失をもたらす危険性も同じようにあるのです」
荻原さんの周囲には「数年ほどNISAに投資してみたが、損失に耐えきれず撤退した」という人が相当な数に上るという。
「例えば3月9日の東京株式市場は急落しました。一時は前週末比4200円超安まで売られましたから、NISAで“火傷”した人が出たはずです。NISA貧乏は『生活費まで投資につぎ込んだ』という意味ですが、そもそも“NISA金持”という流行語が存在しないことにも注意が必要でしょう。NISAでお金を失った人も珍しくないのです。投資とは資金に余裕を持つ人が自己責任で行うものであり、ろくに貯金もないような人が手を出すべき世界ではないのです」
年収一年分の余裕が必要
日本経済はデフレからインフレに変わり、「貯蓄より投資」が有効と言われている。だが荻原さんは「やはり現金を手元に持っていることは重要です」と指摘する。
「比較的若い年齢で、独身、子供もいないという人を想定してみましょう。『どうしてもNISAに投資したい』と考えているのなら、まずは銀行口座に“年収1年分”のお金を貯めてください。日本経済はインフレというよりスタグフレーション、つまり不況とインフレが同時に進んでいる懸念があります。今の物価上昇率なら年収1年分の貯蓄があれば、不況で解雇されても失業保険を足して2年は生活できる余裕が生まれます。こうした余裕を持つ人が生活費の一部を投資に回すのと、生活費に余裕のない人が投資をするのでは、リターンも違ってくるのです」(同・荻原さん)
実はNISA貧乏に苦しんでいるのは若者だけではない。ローンを抱えている中高年の間でもNISAのため生活費に余裕のない人々が増えているのだ。
第2回【住宅ローンを抱える中高年が投資なんて“NISA貧乏”まっしぐら…専門家がNISA投資よりも「繰り上げ返済」を強く勧める納得の理由】では、今すぐ中高年が手を付けなければならないのはNISAではなく、借金返済だという“真実”についてお伝えする──。
デイリー新潮編集部
