カンニング竹山

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「全力!脱力タイムズ」

 2月20日放送の「全力!脱力タイムズ」(フジテレビ系)で、カンニング竹山が久々に「キレ芸」を披露したことが話題になっている。世代交代の波を感じている中年芸人の竹山が、今も全力で仕事に取り組んでいるかどうかを検証するという内容だった。【ラリー遠田/お笑い評論家】

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 ピン芸人の永野が「カンニング竹山を見続ける会」の代表として登場し、竹山の現状に対して苦言を呈した。「ある時期から置物タレントになり、芸人としての魅力がない」「キレ芸でブレークしたのに、今は側(がわ)だけ怒ってる感じを出している」「手抜きばかりで全力投球していない」などと厳しい言葉を並べた。

カンニング竹山

 その後、竹山に密着したロケのVTRが流された。竹山には番組の企画だとは知らせずに、女子大生の卒業制作という名目で、竹山の普段の仕事ぶりを追いかけていたのだ。その中で竹山は、取材する女子大生の質問を無視したり、「いいケツしてんな。どんなパンツはいてるの?」などと卑猥な言葉を投げかけたりしていた。口止め料と思われる現金を渡す場面まで映像に収められ、スタジオにいた共演者たちもただ目を丸くするばかりだった。

 もちろんこれは、この番組のお家芸である「切り取り編集」によるものだろう。しかし、番組側がそのような説明をすることはない。竹山はVTRを見ながら必死で反論をしていたが、メインキャスターのアリタ哲平(有田哲平)は取り合わない。一方、竹山の現状に不満を持っていた永野は「最高!」と絶賛。「これが、僕が憧れた竹山という男です」と太鼓判を押した。

 追い詰められた竹山は「オンエアまでに事件起こして、この番組つぶしてやる! 捕まってやるからな! 取調室でこの番組のこと言ってやる」とまくし立てて、すさまじい勢いでキレまくってみせた。かつて「エンタの神様」の舞台上で「ここでウンコするぞ!」と宣言してズボンとパンツを下ろそうとしていた頃のような、荒々しい竹山の姿がそこにはあった。

 近年の竹山は情報番組のMCやコメンテーターとしての仕事が増えていて、そのイメージが定着していた。真面目なニュースを扱う番組に出演して、社会問題について穏やかに持論を述べる姿は、かつての過激な芸風とはかけ離れている。

潜在的なニーズ

 もちろん、芸歴を重ねてポジションが変わっていくこと自体は自然な流れではある。しかし、永野がそんな現在の竹山のことを「置物タレント」と言い切ったのは、多くの視聴者が彼に対して漠然と感じていた物足りなさを見事に言語化したものだった。あの頃のようなキレ芸をもう一度見せてほしいという潜在的なニーズは確実に存在していたのだ。

 今回の「脱力タイムズ」では、そんな竹山の芸人魂を呼び起こすための工夫があった。それは「悪意のある切り取り編集」という手法を用いたことだ。というのも、竹山は昨年10月に「ABEMA Prime」(ABEMA)に出演した際、「国旗損壊罪」をめぐる発言で炎上したことがあったからだ。その際に、発言の一部が切り取られてネットニュースなどで広まることで、本人の意図しない形で言葉が独り歩きしてしまうということがあったのだ。

 竹山はそれを引き合いに出して「去年の年末やられてるんだよ! こんなの流されたら、まただよ!」とぼやいていた。番組側は竹山がコメンテーターとして切り取り被害に悩まされているということは承知の上で、それをあえて誘発するようなVTRを作ってみせたのだ。竹山が怒っても当然の状況を整えることで、彼の全力のキレ芸を引き出すことに成功していた。

 竹山は社会問題を語るコメンテーターとしても立派な仕事をしている。しかし、芸人としての彼の面白さを知っている人からすると、そこにとどまっているのは物足りないという感想が出てくるのも当然だ。そんな中で、「脱力タイムズ」は少々荒っぽいやり方で彼を追い込んで、本領を発揮できる場面を演出してみせた。

 この企画が大きな反響を巻き起こしたのは、単に竹山のキレ芸が久々に見られたからではなく、テレビというメディアの中でどんどん失われていく「制御不能な笑い」を視聴者が求めていたからなのかもしれない。

ラリー遠田(らりー・とおだ)
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)、『松本人志とお笑いとテレビ』(中公新書ラクレ)など著書多数。

デイリー新潮編集部