記事のポイント
美容ブランドが機能性ソーダブランドと協業し、リップ製品を相次いで展開している。
健康志向とノスタルジー需要が重なり、食と美容の境界が曖昧になっている。
コラボは店頭露出拡大や新規顧客獲得を狙う小売戦略として機能している。


1990年代に流行したフレーバー付きリップ「ドクターペッパー・リップスマッカー(Dr. Pepper Lip Smackers)」の香りを、いまでも忘れられない人たちがいる。

リップスマッカーが姿を消して久しいが、30年後の現在、ソーダ風味のリップグロスが次々と店頭に並んでいる。

昨年9月には、タワー28(Tower 28)とプレバイオティクス系ソーダブランドのポッピ(Poppi)が、ポッピの季節限定フレーバー「クランベリー・フィズ」に着想を得た、ホリデーシーズン限定のリップグロスとパウダーチークを発売した。

今年1月には、エルフ(E.l.f.)とスパークリングウォーターブランドのリキッド・デス(Liquid Death)が、2024年のコラボレーションに続く形でリップグロスラインを発表した。

2月には、ココカインド(Cocokind)がプレバイオティクス系ソーダブランドのオリポップ(Olipop)と協業し、セラミド配合リップバームの新フレーバー3種を発売した。

健康志向時代における「ウェルネス系ソーダ」との親和性



しかし、糖分たっぷりのドクターペッパーとは異なり、今日の飲料と美容の融合は、ソーダを含め、あらゆる場面でヘルス&ウェルネスを求める消費者のニーズに応えている。

「ポッピは、いまの時代のドクターペッパーである」と、タワー28の創業者エイミー・リュー氏は語った。

タワー28とポッピのコラボレーションは、リュー氏とポッピの共同創業者アリソン・エルズワース氏との友情から生まれたと同氏は述べているが、それと同時に、食に着想を得た感覚的なストーリーテリングを追求するビューティー業界の流れにも自然に合致していた。

「ビューティーブランドとして、我々は常に『フレーバーの物語』を語ろうとしている」と同氏は述べた。

タワー28によると、ポッピとのホリデーキャンペーンは獲得メディア価値1140万ドル(約17億1000万円)を生み出し、2億2300万人の消費者にリーチした。

「食と美容は似ている。どちらも日常的に消費され、ソーシャル上で視覚的に映り、感覚に訴える点で類似しているのだ」。

小売戦略としての店頭露出と話題性の拡張



ココカインドにとって、オリポップとのコラボレーションは、2025年に初めて発売したセラミド配合リップバームへの関心を維持するチャンスでもあった。

また、この協業の独占小売パートナーであるアルタビューティー(Ulta Beauty)において、初めて店頭最前列でのプロモーションディスプレイを設置する機会にもなった。

「人々はオリポップのフレーバーに対して非常にノスタルジックで感慨深くなっている。それをリップバームに反映させることは、無理やりコラボレーションしたのではなく、ごく自然な流れだった」と、ココカインドのCMOであるマリア・マチェヨウスキ氏は述べた。

「誰もが消費に対してより思慮深く、注意深くなっている。それはスキンケアや美容だけでなく、当然ながら食生活や健康全般にも及んでいる。だからこそ、パートナーを探す際、オリポップの名前が挙がったのである」。

食と美容の境界線が曖昧に



ポッピやオリポップブランドのリップグロスは、スタンレー・カップ(Stanley Cup)やエレウォン(Erewhon)のスムージーなどと同様に、飲食の選択肢のひとつとして健康補助食品を選ぶのではなく、自身のメイクアップルーティンのアクセサリー(すなわちルーティンの一環)として捉える消費者にも響いている。

「これらの食品や飲料とのコラボレーションの一部は、消費者がこれまで以上に体に取り入れる行為をライフスタイルの一部として捉えるようになっていることを象徴している」と、市場調査会社ミンテル(Mintel)のフード・飲料部門アソシエイト・プリンシパルであるメラニー・バーテルメ氏は述べた。

「機能性ソーダブランドには『クールさ』があり、ビューティーブランドにも同様のクールさがある」。

見た目の美しさと気分のよさを同一視する消費者が増えるなかで、何が食品で何がビューティーツールなのか、境界線はますます曖昧になっている。

ミンテルによると、米国の消費者の48%が美容効果を意識して食品や飲料を摂取していると回答し、74%が食事やライフスタイルの改善をすることで、外用剤(いわゆる塗り薬や貼り薬)の必要性がなくなるだろうと述べている。

機能性ソーダの台頭と大手の参入



腸にやさしい食物繊維やプレバイオティクスをうたう機能性ソーダのスタートアップであるポッピとオリポップはいずれも2018年に創業し、コカ・コーラ(Coca-Cola)やペプシ(Pepsi)のような巨人に立ち向かう「ダビデ」のような存在となっている。

昨年2月、コカ・コーラ社は独自のプレバイオティクス系ソーダブランド「シンプリー・ポップ(Simply Pop)」を立ち上げた。その3カ月後、ペプシ社は19億5000万ドル(約2925億円)でポッピを買収した。

しかし、健康志向のソーダが次々と市場に投入されるなかで、ココカインドのようなブランドとのコラボレーションにより、オリポップがスーパーマーケットの棚で埋もれずに存在感を示すだけでなく、飲料売り場の外にも登場する手段となる。

「ココカインドとの取り組みで興味深いのは、我々のブランドがこれまで飲料を扱ったことのないアルタビューティーに並ぶ点である」と、オリポップのメディア&パートナーシップ担当ディレクターであるスティーブン・ビジランテ氏は述べた。

「アルタビューティーは全国規模の大手小売店であり、通常であれば我々が存在し得ない場所である」。

もうひとつの潮流「レトロ回帰」



一方で、ドクターペッパーのリップバームにより近いものを求める人々に向けては、食物繊維入りソーダ風味グロス以外の選択肢もある。

今年2月には、バケーション社(Vacation Inc.)がペプシとコラボレーションした、チェリーコーラ風味のリップバームを発売した。このレトロなキャンペーンは、現代のウェルネス系ソーダ以上に、消費者にとって魅力的かもしれない。

「2026年ミンテルが発表した予測のひとつに『レトロ・リジュベネーション(レトロ回帰)』がある」とバーテルメ氏は述べた。

「これは、消費者がこれまで以上にノスタルジアに引き寄せられていることを分析したもの。世界があまりにも混迷して不安に満ちているため、『いまではない時代に生きていたら、もっとよかったのに』と感じているのだろう」。

[原文:Beauty Briefing: Why every beauty brand is collaborating with a soda]

Emily Jensen(翻訳、編集:藏西隆介)