◆高齢者を制限すると、飼育可能世帯の半分を切り捨てることになる

――「高齢者や単身者はペットを飼ってはいけないのか」という問題については、率直にどうお考えですか。

奥田先生:日本では保護団体では、高齢者や単身者には譲渡しないという傾向があります。しかし、できないのは仕組みがないからです。「ペット後見互助会とものわ」では、会員が万が一飼えなくなったときに引き取り、新しい飼い主を探す仲介役となるサービスを提供しています。

 飼い主が飼えなくなったときに、家族や親類でどうにか対応できるのが理想ですが、地縁血縁が弱くなった昨今、頼れる人がいない、動物たちを路頭に迷わせる訳にはいかないと考える方から多数ご連絡をいただいています。

 また、高齢者や単身者の方が「新たに保護犬・保護猫を迎えたいが、そのための保証人が欲しいので会員になる」というケースが普通に見られます。

 現在、新規契約の3分の1くらいは「これから犬猫を迎えたい」という方の相談です。最近でも、30代の一人暮らしの女性で、ご両親は遠方に住んでいて、周りにもあまり頼れないという方が、万が一の保証として契約し、ワンちゃんを迎え入れました。

――本書でも、NPO法人「猫と人を繋ぐツキネコ北海道」が実施している「永年預かり制度」が紹介されていますが、私が住んでいる地域でも「終生預かり」という名称で設けている団体があります。シニア猫をシニアの方が団体から預かって暮らす「永年預かり」制度についてはどう思われますか?

奥田先生:非常に良い方法だと思います。保護犬猫たちの幸せを考えれば、やはり、早く迎えてくれる家庭を見つけたいわけです。高齢者への譲渡を不可にすることは、選択肢を大きく狭めることになります。終生預かりによって、選択肢を増やすことは保護犬猫にとっても、高齢者にとってもwin-winの取り組みとなります。

 動物愛護の意識が高まり、飼育のハードルは高くなっています。しかし、一部の富裕層や条件に恵まれた方しか動物を飼えない社会は、幸福度が低いと私は考えています。ペット後見や終生預かり制度のように、単身者や高齢者であっても、互いに助け合い、飼育することができる共助の社会が求められていると感じます。

◆動物たちの未来へバトンを渡す遺贈寄付

――本書にも紹介されている「遺贈寄付」という仕組みについても、知りたい人が多いと思います。もともと猫と暮らしていた私の知人も、これから新たに飼うつもりはないけれど、自分の遺産を、行き場をなくした猫たちのために使ってほしい。でもどこの団体にどうやって寄付すればいいか分からないと言っていました。

奥田先生:具体的な方法や注意点が本書に書かれているので、ぜひ参考にしてもらえたらと思いますが、たとえば「住んでいる家を寄付したい」と考える方も多いのですが、不動産のまま寄付すると、受け取る団体側に税金(みなし譲渡所得税)がかかったり、使い道に困ったりすることがあります。そのため、現金化してから寄付するのがスムーズです。

 日本の保護団体に遺贈寄付しにくい原因として、多くの団体がボランティアベースであることが挙げられます。組織基盤が弱く遺贈寄付の受け皿になりにくいんですよね。この先、動物保護活動=ボランティアという認識を脱却し、NPOが組織基盤を強化し、会社組織としてガバナンスとコンプライアンスを守り、獣医師や愛玩動物看護師等の専門家が有給で働くような保護事業を作っていく必要があります。

 日本で年間亡くなる方の遺産総額は40〜50兆円あり、ペットを飼っていた人がそのうち3割、100人に1人が遺贈寄付をすれば1000億円規模になります。それだけの規模があれば、全国に拠点を置き、専門職を1万人雇用して社会課題を解決できる可能性があります。

 私が目指しているのは、ボランティアや個人の犠牲に頼るのではなく、全国に拠点をおき、民間の専門家が仕事として持続可能な保護事業に従事し、人と動物の共生を作っていく未来です。

――最後に、改めて読者にメッセージをお願いします。

奥田先生:現実を見て、万が一の際「うちの子をどうするのか」を考え始めてください。生命保険や車の保険と同じように、ペットのために備えることは当たり前です。専門家に相談して、一緒に考えてもらうことが大切です。

<取材・文:望月ふみ>

参考書籍『自分の死後も愛犬・愛猫を幸せにする方法』
著者:奥田順之 発行:ワニブックス

NPO法人「人と動物の共生センター」
ペット後見互助会とものわ

【望月ふみ】
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆。現在はインタビューを中心に活動中。@mochi_fumi