NBAは「華やかな部分だけじゃない」 自身の暗部をさらけ出しても知ってほしい“心の問題”
連載「Athlete Life in Japan」――第7回Bリーグ横浜BCゲイリー・クラーク【番外編】
いまやプロスポーツで当たり前の存在になった外国籍選手や指導者たち。しかし、競技以外にスポットライトが当たることは多くない。母国を離れて日本という異国で適応に励みながら、どんな日々を送っているのか。「THE ANSWER」は、連載「Athlete Life in Japan」で様々な声を取り上げる。第7回はバスケットボールBリーグの横浜ビー・コルセアーズ(横浜BC)に所属するゲイリー・クラークを前後編で取り上げた。今回は番外編として、NBAで4季プレーした米国出身の31歳がメンタルヘルスの啓発イベントに取り組む理由を聞いた。(取材・文=THE ANSWER編集部・鉾久 真大)
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トップアスリートだって生身の人間。輝かしいスポットライトの外では、誰にも言えない悩みを抱えているかもしれない。世界最高峰の舞台、NBAで4季プレーしたクラークもその一人だった。
「みんなに知ってほしかったんだ。NBAまで辿り着き、世界中をバスケしながら旅して、多くの人に憧れられる男でさえ、インスタグラムで見えるような華やかな部分だけじゃないんだ、と」
2024-25シーズンから横浜BCに加入した31歳。2024年の来日前に、地元で「ゲイリー・クラーク・ファウンデーション」という財団を立ち上げた。子どもたちに学用品を提供するバック・トゥ・スクール(新学期支援)イベントなどを開催。昨夏に始めたのが、メンタルヘルス問題を啓発するための5キロマラソン大会だ。
「次の世代に何を残せるか妻と一緒に考えたんだ。バスケットボールの技術なら、僕以外に何十万人という人が教えられる。でもバスケ界の中で、僕だからこそ話せることがあるとすれば、それは自分のメンタルヘルスについてだった。これまでの旅路で僕が苦しんできたこと。それについての認識を広め、研究のための資金を集めたいと思ったんだ」
自身の暗部をさらけ出すワケ「まだ十分に話題になっていない」
葛藤を抱え、足が止まることもあった。「今ここにいるために、多くの闘いを乗り越えてきた。成功の裏には、たくさんの暗い日々があるもの。自分を奮い立たせなければいけなかった。そういう時はたいてい精神的に健全とはいえない。ポジティブなところに辿り着くために、健全なルートを選べなかったこともあった」。自分の経験を伝え、あまり話題にならない陰の部分に光を当てようとする。
自身の暗部をさらけ出すのは簡単なことではない。「かなりのエネルギーが必要だったし、時間もかかったよ」。財団と自分のメンタルヘルスについてドキュメンタリーシリーズを作成したが、まだ一部しか公開しておらず、告知もあまりしていない。「ワクワクすること」ではないからだ。それでも、これからもっと詳しく自分の内面について話していくつもりだという。
「まだまだ十分に話題になっていないと思うんだ。心の中で何が起きているかについて、多くの人が気軽に話すための土壌がまだできていない。依存症であれ、鬱であれ、不安障害であれ、それが何だって、決して間違いじゃないんだ。各自が闘っていることについて、安心して打ち明けられるためには、まだまだ会話が足りないと思っている。だから知ってほしいんだ」
イベント後、参加者や友人らから「この話題を出してくれてありがとう。今まで安心して話せなかったから」といった感謝のメッセージももらった。これからも啓発活動は継続していく予定だ。ドキュメンタリーの撮影クルーからは「日本で何かやろう」という話も上がっているという。「現地のメンタルコーチと話して、日本のメンタルヘルスの状況について知ることができれば」と見据えていた。
(THE ANSWER編集部・鉾久 真大 / Masahiro Muku)
