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元タレントの中居正広さんによる女性アナウンサーへの性加害報道は、中居さん本人の芸能界引退にとどまらず、女性が勤務していたフジテレビからCMが相次いで消えるなど、局全体に大きな打撃を与えた。

2025年のテレビ業界を振り返ったとき、最重要トピックは、この「中居氏の問題をきっかけとしたフジテレビ問題」で決まりだろう。

テレビプロデューサーの鎮目博道氏は「テレビ業界は2025年を境に、明確に区切られる」と指摘する。フジテレビだけではなく、他局にも波及した変化について解説する。

なかでも、今年、大物芸能人の番組降板に踏み切ったTBSの姿勢は「エポックメイキング」と捉えられるという。

●変わらずにいようとしてきたテレビ局が、変わり始めた

2025年のテレビ業界を振り返ると、やはり突出していたのは、元タレントの中居正広氏による性加害問題を発端とした「フジテレビ問題」だった。

フジテレビからCMが消え、前代未聞の危機に陥ったこと自体が衝撃的だったのは言うまでもない。しかし、その影響は同局にとどまらず、他のテレビ各局にも大きく揺さぶりをかけた。

恐れずに言えば、これまでのテレビ局は、どのような問題が起きても、できる限り「変わらずにいよう」としてきた。

ところが、遅きに失した感は否めないものの、各局はようやく大きく変わり始めた。コンプライアンス遵守に本腰を入れる姿勢が目立ち、とりわけタレントへの向き合い方が、これまでとは明らかに異なってきている。

●超功労者を切る──「中居以前」ならありえなかったTBSの動き

最も素早く動いたのはTBSだった。

中居氏の問題が発覚した直後の1月27日、TBS生島ヒロシ氏について「コンプライアンス違反」を理由に、約30年続いていたTBSラジオ番組からの降板を発表した。

生島氏はTBS出身の大物アナウンサーで、フリーアナウンサーらを多く擁する芸能事務所「生島企画室」を経営するなど、いわば業界の超大物だ。TBSにとって、局への貢献度を踏まえても、かなり特別な存在だったと言っていい。

そのような"功労者"であっても、厳格に処分した。言い換えれば、このTBSの対応は「フジテレビと同じ轍を踏むことはしない」という新たな業界標準を明確に示したエポックメイキングな出来事だった。

●フジ、TBSに続く日本テレビの「国分事変」

日本テレビもまた、「いかに大物であろうと、コンプライアンス違反には厳正に対処する」という姿勢をより明確に示した。

6月20日の緊急会見で、福田博之社長は、コンプライアンス上の問題を理由に『ザ!鉄腕!DASH!!』から国分太一氏を降板させると発表した。

その後、国分氏側が人権救済を申し立てようと、あるいは「答え合わせがしたい」と涙ながらの会見を開こうと、日本テレビは、被害者への二次加害の恐れを理由に詳細を一切明らかにしていない。

さらに、この問題をきっかけに、城島茂氏、松岡昌宏氏といった元TOKIOメンバーとの関係が悪化しているとされるが、それでも日本テレビの姿勢は揺らいでいないように見える。

●問題発覚後に芸能事務所と「すり合わせる」時代は終わった

この2つの事例について、私は「局のギアが一段上がった」と感じている。

ポイントは「放送局が自発的・能動的に出演者の疑惑を調査し、その結果に基づいて自発的に厳正に処分した」という点だ。

これまで放送局は、週刊誌など他媒体の報道が大きく社会問題になるまで、出演者を降板させることはほとんどなかった。処分に踏み切る場合でも、多くは所属事務所と水面下で調整し、双方が納得できる「落としどころ」を探るのが文化だった。

しかし、フジテレビ問題を契機として、放送局は「スキャンダルが発覚したら事務所と相談して処分する」という慣行から脱却しつつある。「スキャンダルを調査していち早く処分する」という方向へ、舵を切り始めたのだ。

●まだ公表されていない降板事案もある

事務所に事前相談しなければ、軋轢が生じることもあるだろう。それでも局主導で処分を決定し、詳細は関係者保護のため、あえて発表しない。

こうしたスタイルが、すでに一般化しつつある。明らかにフジテレビに対するスポンサーの動きを目の当たりにした各局が「同じ轍を踏まない」ために、対応方針を根本から見直した結果だといえる。

実際、こうした事例は、生島氏や国分氏のケースに限らない。理由ははっきりと公表されていないものの、コンプラ調査の後に降板が決まった出演者の話は、業界内では少なくない。

終了が決まった番組の中には「出演者のコンプラではないか」と噂されているものもある。

●不可解なベテランスタッフの電撃解任も

さらに各局では、「ベテラン制作スタッフの突然の解任」といった事例も散発的に起き始めている。

具体的な番組名は避けるが、構造的には生島氏や国分氏のケースに近いものが多い。コンプラ違反を理由に外部スタッフが番組から外されたり、問題のあるスタッフが中核を担ってきた番組が終了したりする例が見られる。

このように、各局への「コンプライアンスへのギア」は確実に一段上がっている。あちこちから「セクハラやパワハラに関する局の調査が突然始まった」といった話も、珍しくなくなった。

ただし、現時点では局ごとに温度差があるのも事実だ。日本テレビとフジテレビは最も生まれ変わった印象がある一方、依然として従来と大きく変わらない局も存在する。

それでも2026年、さらに各局のコンプライアンスへの対応は、さらに次の段階に進むだろう。すでに「問題が起きてから」ではなく「未然に防ぐ」ための動きが始まりつつある。

(テレビプロデューサー・鎮目博道)