水溜りボンド・カンタ、令和ロマン・くるま(撮影=池村隆司)

写真拡大

 400万人超えのYouTube登録者を抱えるチャンネルのブレーン的役割を担い、「佐藤寛太」名義でミュージックビデオなどの映像作家としても目覚ましく活躍する水溜りボンド・カンタと様々な業界のクリエイターが、クリエイティブの源流を含む創作論について語り合う連載企画「クリエイティブの方舟」。

(関連:【写真】水溜りボンド・カンタ、令和ロマン・くるまの撮り下ろしカット

 第6回は、令和ロマン・くるまが登場。2024年の『M-1グランプリ』で史上初の2連覇を成し遂げたあと、活動自粛や事務所退所など人生において大きな転機を迎えたくるま。カンタとはともに1994年生まれ、大学のお笑いサークルに所属していたという共通点をもつ。今回は2人に、学生時代から現在~未来のこと、そしてYouTubeとお笑いについて語ってもらった。(編集部)

■2人から明かされた、意外な水溜りボンドの“原点”

ーーお2人は1994年生まれですが、くるまさんは浪人されているので同級生ではないですし、出身校も違いますよね。共通点といえばお互い“大学お笑い”をやっていたことだと思うのですが、ファーストコンタクトはどのタイミングだったのでしょうか。

くるま:最初にカンタさんを見たのは、僕が大学1年生のときですね。カンタさんの母校の青学(青山学院大学)や僕の母校の慶應義塾大学、そして早稲田大学と明治大学が集まってできた『CHAP』というユニットがあって、そのユニットライブにカンタさんが出演した際にお見かけしました。

 でもちゃんと話したのは、ナイチンゲールダンスのヤスさんが主催した飲み会で。カンタさんはぜんぜんご飯を食べてないし、お酒も飲んでないのに、割り勘させられてました(笑)。

カンタ:名前が出た『CHAP』に関しては、ライブをやるだけじゃなくて当時YouTubeチャンネルを立ち上げていて。色んなグループが曜日レギュラーを担当して動画を作っていくという活動を取っていて、水溜りボンドもそのなかの一組だったんですけど……誰もちゃんと更新してなかったよね。

くるま:そうなんですよ。

カンタ:僕らは動画を作れたからちゃんとやっていたけど、あまりに誰も更新しないから「もう自分たちでYouTubeやった方がよくね?」というのもあった。お笑いはもちろん大好きだけど、動画でも満たされる感覚があったし、この組み合わせは普通できないことだし。

 そんな状況で活動を続けるなかで『キングオブコント2014』では準々決勝まで進むことができたんですけど、そこから壁にぶち当たって。知名度とかもしっかり蓄えていかないといけないぞと、自分たちのチャンネルを作ったわけです。

くるま:そう考えると『CHAP』って意外と大事なトピックだったんですね……(笑)。カンタさんはあの時期に一番ちゃんとしていた人なんですよ。当時の慶應のお笑いサークルはとくに周りに馴染めない奴が集まっている傾向にあって。そんななか、青学は明らかにまともで人気もあって、ちゃんと青学の学生が見にくるみたいな。

カンタ:たしかに真空ジェシカのガクさんやさすらいラビーの宇野さんのような、すごく真面目な人たちが多かったかも。

 それで言うと、僕は近くにいた後輩たちのあいだで高比良くん(くるま)という名前をよく聞いていて。舞台上だとちょっと様子おかしいけど、すごくまともなイメージだったから、しっかり話せる人がいてよかったというところはあった。

くるま:そのときはヤバい奴になりたかったんですよね。そうじゃないとウケないというか……。

カンタ:それこそテレビで見てきた芸人さんとまたちょっと違うヤバさも感じたかも。「お笑いに命かけてる」雰囲気はあった気がします。

くるま:僕自身はヤバいふりをして頑張っていたけど、正直、根っからヤバい奴ではないので、無理して顔を白く塗ったりして……。途中で「俺、違うかも」と思いはじめ、いまのコンビではおとなしく漫才をするようになりました。

 そうこうしているうちに、暴れん坊たちが暴れきったのか、『M-1グランプリ2016』で正統派の銀シャリさんが優勝したからなのか、学生お笑いも一気に流れが変わったんです。いままで個性派に負けていた正統派の人たちが突然評価されるようになって。

カンタ:あのころの学生芸人はみんな銀シャリさんの影響を受けているかもね。

くるま:そのあとシンクロニシティの西野さんが当時組んでた漫才コンビの30度バンクが学生お笑いの大会で優勝して、俺らもその恩恵を受けて、K-PROがやっている『レジスタリーグ!』とかで急に優勝できちゃったんですよ。そのあと3連勝して、そこから中心に入れてもらえました。

カンタ:面白い! でも大学お笑いは難しかったね。しっかりやっていても負けちゃうし、しっかりやらなかったらプロで通用しないこともあるから。それこそスパナペンチや真空ジェシカが人力舎に入って、初めての実例が出たみたいな。

 僕は当時、慶應とライブを一緒にさせてもらって上手くいかなかったときに、真空ジェシカの川北(茂澄)さんが裏で「よかったよ」って言ってくださったことがあって、このまま続けようと思った時期だった。

くるま:僕はたまたま流れが変わって、このままでいいかとなりましたけど、カンタさんはそこで違う能力と掛け合わせて、別のフィールドに行ったじゃないですか。そういうの、すごく尊敬しますね。

カンタ:嬉しい。でもね、大学お笑いというフィールドからYouTubeにいくって、セルアウトみたいに思われないかという不安はずっと付きまとっていたし、なんなら今も少しそういうコンプレックスはあるかもしれない。芸人さんもYouTubeをやっていない時代だったから、どう見えているのかはすごく怖かった。

くるま:先輩たちが水溜りボンドのトランプを投げてきゅうりを切る動画をみて、「どうしたんだ……」「何をしているんだ……」とか言ってましたよ。水溜りボンドはすごいのに、YouTubeの評価が極端に低いから、動揺してたんでしょうね。

 動画がすごく伸びてからは、僕の周りでも「あのとき俺たちもやっていればな」みたいに言っている人は多かったですよ。みんな羨んでました。

■令和ロマンが“M-1戦士”になったのは消去法だった?

カンタ:僕はYouTubeでの数字が積み重なってからは、『キングオブコント』の予選には出ないようにしてた。出たら自分たちのファンの方たちが来て、出てきただけで喜んでもらえるみたいなことになっちゃうから。学生のうちにちゃんと収益を立ててプロになろうと思っていたけど、やっぱりちょっとどこかで芸人になりたくて。めっちゃ面白い学生お笑いの人たちがどんどん売れていって、俺たちは面白くないと思われたらどうしようとか、何百万再生とっても「裏でなんて言われているんだろう」とか、怖かった時期ではあった。

くるま:よくそれであんな大変なことをやり続けられますよね。

カンタ:まあ……。で、くるまくんは『M-1』チャンピオンでしょ? 去年ご飯行ったとき、たしか『M-1』目前で。いままで『M-1』を見てきたなかで2回優勝したコンビはいないから、難しいんだろうなと勝手に思っていたけど、めちゃくちゃ優勝したから。

くるま:めちゃくちゃ優勝しました(笑)。

カンタ:令和ロマンが勝ってくれるのは嬉しいよね。自分がやってきたこともちょっと肯定されるような気がして。仲間だと思う人がそこで結果を出すというのは誇らしかった。

くるま:本当に嬉しい。

カンタ:もうやりたいことないんじゃない?

くるま:やりたいことはもともと一つもないんです。“流され師”なんで、流されるままにやってるだけですよ。

カンタ:そうなんだ! 『M-1』を獲りたいとかもなかった? 漫才は好きでやっているわけでしょ?

くるま:もともと『M-1』を見たことがあんまりなくて、ネタもまったく知らなかった。バラエティで仕切っている人が一番偉くて、ネタをやっている人は「面白くないからなにか披露させられている」と思っていたんですよ。

カンタ:学校みたいな(笑)?

くるま:明石家さんまさんとかビートたけしさんとかは、学校の先生みたいなことじゃないですか。こういう方々が偉いと思っていたから、ネタを披露する芸人に注目したことがなくて、偉い人たちがなんて言うのかを見てました。

カンタ:でもその世代かもね。MCの人にネタを見てもらう時代みたいな。令和ロマンはもともとネタ至上主義ではなくて、バラエティという感じだったよね。

くるま:そうですね。それで芸人になってから『M-1』は自分たちに向いているし、最初は『M-1』だけやっておくかみたいな。当時はオーディションを受けたり、お笑い第7世代が一気に注目された時期で、“次の第7世代”を探すための流れのなかでやるのは難しかったです。ものまねやショートネタとかをやって、TikTokも本当は頑張らなきゃいけなかったんですけど、そこでサボりすぎちゃって。漫才はちょっと上手だったからやっていたら、「M-1戦士だね」とか言われだしたんです。

カンタ:誰かがそう言ってくれたからここにいようと、ここで輝こうと思えたの?

くるま:輝こうというより「漫才だったら大丈夫かな」みたいな感じですね。なんかもう、頑張れなかったんですよ。こういうのをやってみようと思いついてケムリさんに言っても、反応がよくなかったらなにも始まらない。もうダメだと思っていたらM-1戦士扱いしてくれたんで、「これぐらいなら頑張れるよね」とお互いに確認して、『M-1』に挑戦した感じですね。

 なんとなくそれでいいやと思ってやっていたらコロナが流行って、その煽りを受けて。当時はバイトで月30万くらい稼いでいたんですけど、そのバイトもコロナで整理されてクビになって、SNSもやっていないから金ゼロ。国の補助金とか家賃補助を受けたときに、「ヤバい!」みたいな。

カンタ:最低限は生きてはいけるだろうみたいに思っていた?

くるま:生きていけないと思ったときに、芸人を辞めようと思ったんです。芸人になりたくてなったけど、テレビにいっぱい出れるわけじゃないし、なんとなく閉塞感があって。1年目はまだ稽古があったり、闇営業問題で会社も厳しくなって、しんどいなと思っていました。

カンタ:お笑い自体も大丈夫なのか、みたいな感じだったよね。

くるま:女性問題もお金関係も気をつけなきゃいけないというがんじがらめ状態で。だから今後どうしようかなと思っていたんですけど、その年の11月に『NHK新人お笑い大賞』でたまたま優勝できたんですよ。

 優勝できたおかげでコロナ禍でも劇場に呼ばれる数少ない枠に入れて、大阪の劇場にも呼んでもらえるようになって、ギリギリご飯が食べられた。これなら漫才で稼げると、俺が漫才に飛びついたんですよね。とりあえず稼がなきゃと思って、ケムリさんを「漫才だけやりましょう」と説得して。いろいろあったけど、漫才でギリギリ食べられるようになりましたね。

■あらゆることをやってきた2人が次に目指す場所とは

ーーくるまさんはいま活動の幅を広げられている途中だと思いますが、いろいろやっていらっしゃいますよね。

くるま:いまは「禊」の最中だと思っています。自粛期間中に僕の代わりにライブやイベントに出てもらった人もいますし、自粛が明けてもう一度オファーをくれた方もいたんです。その恩返しというか、仁義を果たすというのをやっていたら結果的に幅広くなっただけで。そのなかで次の何かが見つかるかもしれないなと思っています。

カンタ:探している途中とも言えるわけだ。

くるま:そうですね。そのなかで一番大きいのが、もともと決まっていたKアリーナ横浜の単独ライブ『RE:IWAROMAN』だったんですよ。来年の5月とまだまだ先ですけど、たまたま海外のアーティストの方が会場をキャンセルして、僕らに話が巡ってきたんです。『M-1』の代わりじゃないですけど、新しいネタを出す場所としてやれるかなと。でも、そのあとはどうするかわからないですね。逆にカンタさんはいま、なにを目標にやっているんですか?

カンタ:YouTubeを始めて今年で10年。それこそお笑いが中学生の頃から大好きでやっていたらYouTubeクリエイターになり、『オールナイトニッポン0(ZERO)』をやらせていただいたりとか、いっぱい楽しませていただいた。でも、もっと経験したことないことを経験したいなと。自分がやってきていない領域にいくとゴールが想像できないことがいっぱい転がっていて、たとえば最近は映像会社のArksで『ぼーっとする大会』を去年から開いていたりする。

 『ぼーっとする大会』は韓国で発足した大会で、それを日本に持ってきた大学生の方から「資金がショートしてヤバいです」と、Zoom越しで初めて会ったときに泣かれて。インターネットが加速していく時代でみんなはいつもスマホを見ているし、僕自身、休めなくてパニック障害みたいになっちゃってる。もっと大切なことがあるんじゃないかということで、一緒にやっていきましょうと手を取ったのが、次第にどんどん大きくなっていって。新幹線でやってみたりとか、9月末には大阪・関西万博でも大会を開催しました。

くるま:すげー!

カンタ:その規模感のことはいままでやったことないし、そこに来てくれるお客さんはまた違うお客さんだから嬉しい。自分がチヤホヤされたいというよりかは、存在していていいと思いたい。どんどん大きな話になっていくから、なんか面白いね。

くるま:映像はもちろん、制作もたくさんやってきたじゃないですか。いまは『ぼーっとする大会』のリアルイベントや展示とか、そういったものにくすぐられる感じですか?

カンタ:YouTubeをやっていてすごく感じたのは、100万再生をとっても次の日にそれを上書きしていっている感覚があって。懐かしいと思って見るけど、耐久度でいうと、そこまで強いコンテンツじゃないと思っていて、いま走っていることが面白い。だからいまはそれがやりたいのかもしれない。なんか残したいみたいな。

 僕、アニメーションの『ふーごん。【Fugon】』というキャラクターを作っているんだけど、自分に子どもができたときにYouTubeをいっぱい見せるかというと、ちょっと迷いがあって。それこそヒカキンさんはすごく安全ななかでやられているという信頼があるけど、基本下世話な方が数字は取れるから、若いインフルエンサーの子たちがドーピングしちゃうんだよね。だからふーごん。みたいなものを作っていかないと、破滅に向かっていくんじゃないかなという危機感があるのかも。

くるま:安全なコンテンツとしてキャラクターを作っていくということですか? なおかつカンタさんがやることによって、それが成功してちゃんとお金になるとなれば、そっちの風潮になるかもしれないですもんね。

カンタ:普通に考えたらめっちゃ難易度は高いけど、YouTubeを10年やって、30代でもう1回挑戦していくんだったら、より難しい方がいいなという。

くるま:世界的にはキャラクタービジネスは激アツですし、やりがいはありますよね。

カンタ:くるまは世界で漫才をやりたいとかはないの? 日本の芸人さんでちゃんとやれている人はまだいないよね。

くるま:漫才で世界に出れていると言い切れるような方はまだ出ていないですね。世界の漫才はよく議題に上がるんですけど、やる必要があるか、というところで。アメリカのスタンドアップコメディは、昔から政治や宗教のネタがすごく多かったんですけど、さまざまなダイバーシティが叫ばれるなかでだんだん過激すぎるネタがやりづらくなってきたりとか、笑いづらくなってきている人もいる。そうなった時に、向こうのスタンドアップコメディアンが日本のフリップネタのようなものをやりだしたりとか、そういう流れが出始めているんです。

 そこを踏まえると、もしかしたら日本の漫才というのが過激なスタンドアップコメディのマイルド版のような感じで、セーフティなバラエティとして見られる世の中になるかもしれないですね。今後英訳したものが英語圏で流行るのか、日本語でもてはやされるのか、どっちになるかはわからないですけど。

カンタ:奇跡が何回も起きれば、ビジネスとして広がるかもね。

くるま:継承されていったらそうなるかもしれないですけど、まずは渡辺直美さんのような日本人がやっているコメディがわかるようになってからバラエティが輸出されて、漫才がそこに続いていくと思います。世界的にバラエティはほとんどないですし、ワイプとかトークショーの見方がわかってからの漫才になると思うので、俺が死ぬまではない気がします。

カンタ:YouTubeではMrBeastというアメリカのトップYouTubeクリエイターが世界中に進出しているから、僕らの文化が出ていくのもそうだし、海外からもどんどん入ってきている。MrBeastの吹き替えは『NARUTO -ナルト-』の声優の方(竹内順子)がやっていて、日本で動画を再生すると日本語で字幕が出るし、子どもたちはナルト役の人の声で楽しんでいるんだよね。

くるま:だから楽しみなんですよね。いまはAIの翻訳がすごいから、自分の動画を海外の言語に翻訳していくという流れになるんだろうなと思っています。

ーー令和ロマンはYouTubeを始めて5年。水溜りボンドのちょうど半分ですよね。その点も含めて、YouTubeへの向き合い方は変わってきていますか?

くるま:まったく変わっていないですね。令和ロマンとしての話をすると、仕事にしようとするとたぶん苦しいんですよ。頑張る意欲がものすごくあるわけじゃないし、俺も弱いし。YouTubeもいままで企画会議をしたことないんです。

カンタ:それで言うと、仕事とされるものはなんなの?

くるま:この対談とか。やりがい100でやって、チェックする気合いを入れているというころで。俺らのYouTubeは撮影場所に集まって、作家さんとしゃべって、一度撮ってみましょうという感じで、まったく構成も決めていないんです。1本撮ったらだらだらして、もう1本撮って終わりなんで、本当にぬるっとやっていますね。

ーーYouTubeではその空気感がすごくあるというか。ナチュラルかつ、反応速度も速いですよね。

くるま:それぐらい楽しくて。コンビで出させてもらっているテレビもそうですけど、ひとりでの仕事だったらやらないことも、なんでもやりますという感じで。それは趣味というわけじゃなくて、これも自分に必要だなと思うから、コミュニティにいるという感覚でゆるくやっています。

ーー最近は更新が止まっていますが、くるまさんは9番街レトロの京極さんと「黙って食べれん」チャンネルをやっていますし、ケムリさんは「僕らの別荘」をやっていますよね。チャンネルを増やそうみたいな時期もあったんですか?

くるま:ケムリは「僕らの別荘」が趣味兼仕事というか、「僕らの別荘」がメインなんですよ。「僕らの別荘」は毎週撮っていて、そっちのスケジュールが先に入るので、“僕らの別荘のケムリ”というのが正しい。で、令和ロマンもやっている人なんですよ。

 僕も仕事が令和ロマンとは別であって、ラジオとかYouTubeで遊んでいて、人によってはこれを片手間でやっているような、冷たい、ドライという印象をもつかもしれないですけど、本当にただ楽しく、これも自分のひとつの人格としてやっています。

カンタ:分かりますね。お笑いとYouTubeは違うとはいえ、結局コンビの話ではあるのかなと思って。僕らのYouTubeでの10年というのは、これで稼いできたわけだから仕事ではあるんだけど、この強度で一生お金を稼ぎ続けるのかとなると、お互い家族ができるかもしれないし、ほかにもやりたいことや趣味もある。そうなってくると、YouTubeを収益を立てるものという認識で会ってしまうと、気楽にはできなくなってくる。伸びなかったらどうしようとか、昔できてたリスクの取り方ができなくなっているというのがあるから、気楽にやるようにしている。

くるま:あえて近いイメージで例えるならば、夫婦とかカップルにも近い要素はありますよね。その強度と2人という関係性の難しさというね。とくに僕らはルーツが適当なんで、大学の流れで組んだけど、「コンビを組んでください」とか言っていないですし、お互い続けるのかは分からない。

 ケムリさんにとって「僕らの別荘」というものが、仕事と趣味であるということが大事で、俺もいろんな仕事があって、それがこの令和ロマンというユニットで接近しているのがいいじゃないですか。それはそういう形があるんですよ。

ーーくるまさんの自粛期間中にケムリさんがひとりでテレビに出ていて、自粛が明けてからはコンビの仕事も各々の露出も増えていったところは、ポジティブに働いている部分もある?

くるま:本来そういう風に生きていたということですよね。それがいままで遊びだったり、趣味だったのが、ありがたいことに優勝のおかげでこうやっておしゃべりすることが取材というお仕事として成立しているから可視化されているだけで。そもそも令和ロマンはお互いにいろんなことをしていたんですよ。だから頻繁に起きる“日食”だと思っていて、「ああ、重なったな」というイメージですね。

カンタ:そういう方がいいのかもね。コンビというものは、いつ重なるかは不明ってことでしょ?

くるま:それがYouTubeというのはありますけどね。ラジオもあるけど不定期ですし、あとは自分たちの意識と時代の変化ですよね。単純に芸人という立場の人がいろんな形で対談やモデルみたいな形で呼ばれることが増えたからチャンネルが増えているけど、もしかしたらそれで令和ロマンでの稼働が多くなるかもしれないし。

ーーその芸人としてのキャリアのなかでも、コンビでやっている時期とソロが多い時期があったり。

くるま:広まって縮まる方がずっと物事が成長しますからね。

カンタ:でもYouTubeはまだ歴史が浅いからさ。2人組のYouTubeクリエイターは俺らから始まったわけで、こうなりますという実例がないのよ。いまお互い個人チャンネルをやっているけど、視聴者の方からすると、やっぱり水溜りボンドでずっとやっていてほしい。要は芸人さんも同じで、ファンの人とちゃんとコミュニケーションを取らないと、仲悪くなっちゃったのかなとか、身近だからこそそう感じさせちゃうこともある。

くるま:これはパイオニアの苦労ですよね。

カンタ:プロデューサー目線というか引きで見たときに、YouTubeクリエイターは主観で走って転ぶときは盛大に転んで、スピード出るときはすごいスピードが出てる。この波が面白いのに、うねっているときにうねらないようにしちゃうのよ。事故らずにずっとゆっくり走っている感じがあるけど、うねらせた方が見る側は面白いから。

 要は番組を自分で作ってるみたいなもんだもんね。頻度を上げようとか、もうひと番組やろうとか考える。でも番組打ち切りでこの仕事なくなりますとか外的要因がないのが辛い。自分でディレクションして、キャスティングもしているから、始めるのも自分、終わらせるのも自分という状態。

くるま:芸人の最大の恩恵である“やらされている”がないですもんね。やらされていることによって起きる笑いとか、どこまでいったってドッキリ企画だろうがなんだろうが、あくまで自分で企画したわけじゃないですか。

カンタ:編集までして、タイトルもサムネイルも「これが面白いでしょ」と自分で決めているから。だからもっとそれに気づかれないような感じでやっておけばよかった。昔は自分は頑張ってるんだぞという感じでインタビューに答えちゃってたんだよ。「自分はマーケティングもやっていて、大食いもあえてフルーチェにしている」「赤色にすることで視認性を上げているんだ」とか言っちゃったから、もう気づいたらガチガチ理論の人みたいになっちゃったという。

くるま:俺に関しては頑張ってるぞとかはなかったんですけど、自分なりに工夫があって。インタビューで聞かれたからその工夫について答えたら、それをアピールしている人になっちゃうじゃないですか。言わなきゃよかったみたいなこといっぱいありますけどね。

カンタ:そうだよね。「あのテクニックでしょ」と言われるようになっちゃう。一概に言えないことばっかりだもんね。

くるま:一概に言えないことを一概に言うのが芸人かもなと思っちゃう。インタビューとかで真面目に答える部分はあるけど、一概に言っちゃうときはあるじゃないですか。とくに優勝前後とかはチェックもできないから、言ったことがバンバン流れて。

カンタ:その記事は誰かが切り抜いたもので、「本当はこうです」と言えはするじゃん。でも俺、自分で切り抜いて、自分で発言をパッキングして出しているから、言えないもんね。例えばコラボしてカメラを回して、話したのを編集したら、もう僕がこれを言ったことにしましたよとなっちゃう。

くるま:ある種言わせたことにもなっちゃうわけですもんね。はぁー、大変。

カンタ:大変だから操作されたい欲はあるよ。働き方とかもそうだから。休日を作ったら、「休日を作っても売れ続けられると判断をしたんですか?」「今日は何時に帰るの? それはどういう理由で?」みたいな。

くるま:誰が聞いてくるんですか(笑)。

カンタ:もうひとりの自分が許してくれないんだよ。「サムネイルは本当にこれでいいのか。あと1時間あるぞ」と言われるから、ギリギリまで仕事をやるようになっちゃって。早めに作り終わると、「これはあなたのMAXですか」と聞かれる。

くるま:やりきる人の思考は大変。自分がもうひとりいるんだ。自分はそういう風に思わないです。俺、カンタさんみたいに責任を取っていないので。

カンタ:いいなー。責任感ありそうな雰囲気あるけどね。

くるま:責任を持つものと持たないものを分けていますね。例えばラーメンの写真をInstagramにあげたらラーメン好きみたいに思われてラーメン関連のオファーがあったりするけど、ラーメンが嫌いなわけではないから断らない、みたいな。にわかとか思われるかもしれないけど、主体はテレビだし、こちらとしてもあまりに責任が取れない仕事すぎるし。

 YouTubeは自分たちが主体だし、特にカンタさんは撮って編集までやっているわけですから、責任を取るというリスクもありながら、好きなものを撮れるし好きな企画に出れる、というメリットもあるじゃないですか。それが羨ましいけど、自分にはできないなーとも思います。

カンタ:そういうことなんだ。いろんな考え方があるし、それぞれの大変さがあるんだな……。

ーーお2人でやりたいことはあります?

カンタ:価値観が近いことは改めてわかったので、そのうえで共通する部分を踏まえたなにかを一緒に作りたいですね。

くるま:今回のテーマで言うと、「まとも」がキーワードな気がするので「まとも×お笑い」の枠の中で、そのまともさを笑えるようなものをやりたいですね。

カンタ:地球全体で見たら、まともな人の方が多いからね。

くるま:まともな人がまともだからこそ、ヤバい人を笑うみたいなところがあると思うんですよ。芸人をやる前から、満員電車であえてつり革などなにもつかまずに体を預けたらどうなるかみたいな実験をしていたんですけど、それをまともな人が考えたら笑えるのかなとか思ったら、そういうあるあるネタみたいなものが一個入り口だと思うんですよ。「普通だけど、いたわー」ということが面白いというか。

カンタ:『ぼーっとする大会』に参加する人は忙しい人が多いから、まともである人を面白くしたい感じもある。

くるま:俺もそう思います。ほかのイベントでもいいですし、変なことを言わせて笑わせるとかじゃなくて、日常にある“ちょっと面白い”ことを分けあえるようなものがやりたいです。

(取材/文=中村拓海)