東北大学総長・冨永悌二の「世界と伍して、成長していくための大学改革を!」
そうした状況に、同じ英語圏のイギリス、カナダ、豪州や欧州各国からは、研究者や教育者を「受け入れる」と表明する大学が相次いだ。
日本の中でいち早く手を挙げたのは東北大学。そうした行動に出た理由について氏が語る。
「そうですね。それはやはり、国際卓越研究大学の第1号として、国から多額の体制強化促進費をいただいています。支援金ですね。(国が運用する)10兆円ファンドからの支援金をいただいておりますので、その分、通常の大学経費に加えて予算があるので、われわれこそ、その受け皿にならなければいけないと考えました」
国際卓越研究大学─。これは、近年、諸外国のトップレベルにある研究大学が豊富な資金を背景に研究力・技術開発力を高めているのに対し、日本の大学の研究論文が質・量ともに低調になっているという危機感から、国(文部科学省)が公的な財政支援を行うというもの。
国からの財政支援だけではなく、民間企業との連携、いわゆる産学連携を推進し、民間からの寄付金も仰ぐ。さらには、大学自らの力で資産運用し、多様な財源を持つようにしようという趣旨で始まった制度である。
昨年末、この国際卓越研究大学の第1号に認定されたのが東北大学。国の財政支援は今後25年続けられるから、〝国際卓越研究大学〟に認定されたことの意義は大きい。
支援額は、過去5年間のその大学の産学連携や、それから生じる寄付金集めなど、自主努力の実績を鑑みて決められる。東北大学の場合は、年間150億円余となる。現在、同大学の年間予算は1600億円前後であるから、実に大きい支援金と言っていい。
米国を離れざるを得ない研究者や留学生について、「われわれこそ、その受け皿にならないといけない」と冨永氏が考えたのには、こうした背景があった。
海外研究員の採用にはそれなりの報酬が……
世界と伍する研究力、人材育成の力を持つ大学運営というのが総長としての冨永氏の考え。
そのためには、「人が戦略達成のカギになる」として、総長に就任して半年が経った昨年10月、戦略本部内に「Human Capital Management室」(略称HCM室)を設置。
「このHCM室は研究者のリクルートなどの雇用関連や受け入れ体制の整備など、人的資本に関連する業務を担う部署。われわれは米国からだけでなく、世界中、どこの国からも優秀な研究者を継続的に受け入れていきたいと考えています。そのためにはそれなりの体制が必要だと。その重要な一つは財務基盤ですね」
日本の研究力が低下していることの一つに、研究者への報酬が各国と比べて低いことがある。
海外から優秀な研究者を招くとなると、報酬が欧米に準ずる水準でないとそれは難しい。
「欧米の助教(昔の講師に相当)と一番若い大学のスタッフが日本の教授の報酬よりも高いのが現状です」
「ですから、(海外の研究者は)給与が高いので、そういった方を継続して雇っていくためには、やはり1年、2年の話ではないですからね。それが5年、10年と続いて、そういった方を何人も雇うということは、それなりの財務基盤が必要だということが一点ですね」
冨永氏は二点目のポイントとして、「研究者を採用するための成長戦略」をあげる。
「例えば、自分たちの大学は、この部局でこういった将来成長戦略を描いている。その自分たちの成長のために、こういった部局にはこんな優れた研究者がいる。相乗効果をあげるために、こういった人が欲しいんだと。そういう戦略です」
そして、三番目のポイントとして、『受け入れの仕組み』をあげる。
