だから「サザエさん」を見ると憂鬱になる…心療内科医が指摘「月曜日がツラいのは"金曜日の夜"が原因です」
※本稿は、森下克也『「月曜の朝がつらい」がなくなる本』(三笠書房)の一部を再編集したものです。

■20代後半になると「平日の疲れが取れない」
多くのビジネスパーソンは、週末の土曜日と日曜日が休日です。その休日を、実際にはみなさん、どのように過ごしているでしょうか。20代から40代のビジネスパーソンにアンケートを取ってみますと、多くの人がインターネットやテレビ、普段はできない家事やショッピングに時間を割いています。既婚者では家族と過ごすということも大切になってきます。
週末の限られた時間の過ごし方としてはおおむねそんなものだろうという結果で、さほど問題ないかのように見えます。しかし、平日に多忙を極めるビジネスパーソンの心の内は、そう平穏なものでもなさそうです。
まず、20代の後半くらいから、どうも平日の疲れが取れないという声がよく聞かれます。そのため、どうしても朝寝坊となり、起きた後も何か目的があるわけでなく、ただなんとなくダラダラ過ごしてしまいます。
何かをやろうにも月曜日からの仕事のことが気になって、どうもハメを外しきれません。なんとなく仕事のことを考えながらインターネットやテレビで時間をつぶし、「サザエさん」の始まるころには憂うつでたまらなくなります。
■金夜は「別世界」の演出が必要
こういう週末の過ごし方の問題点は、休日を休日として過ごせていないということです。平日の疲れを引きずってダラダラ寝てしまう、漫然とインターネットをしている、夕方から憂うつになる、これらはあくまで仕事を軸とした休日の過ごし方で、週末が平日の延長となっている過ごし方です。
大切なことは、休日に「別世界」を導入することです。仕事とはまったく無関係の、それそのものが気分転換や娯楽としての意味を持つ何かを休日に持ってくるのです。
それは、かなり意識的にやらないとできません。その第一のポイントは、金曜日の夜です。本書でお話ししているように、金曜日の夜からが土曜日であるという意識を持って、これからお話しする週末改革に取り組んでみてください。
休日に「別世界」を導入するということは、1週間にリズムをつけるということです。5日間の仕事モードの後、2日間の週末モードになることで、次の仕事モードを新鮮な気持ちで、意欲を持って取り組むことができるようになります。このリズム感が重要なのです。
では、どのようにして週末モードの「別世界」を演出するか。
■「習い事」で仕事を忘れる
かなり意識的にやらないといけないとお話ししましたが、イベントに参加したり旅行に行ったりなど、お金をかけて大がかりに行動を変えればいいというものではありません。「別世界」というのは、自分の心のありかを平日とは異にすることなので、それさえできれば些細なことでもかまいません。
そのためには、金曜日の夜に、平日はやらないことを、週末モードに入るスイッチとして意識するといいでしょう。
たとえば、習い事の予定を入れ、そこで仕事のことは頭から一切排除する、などです。どんなに仕事で疲れていても、習い事は、日常とは違った場所に身を置き、違った空気に触れることになるので、複雑な習い事でも案外頭は働くし身体も動きます。習い事は、「別腹」ならぬ「別頭」なのです。
習い事を金曜日の夜に入れるのは、それが週末モードに切り替える格好のスイッチだからです。習い事に集中することで仕事関係のいろいろなことを頭から消去し、「週末自由人」になるための第一歩を踏み出させてくれます。さらに、翌日が土曜日なので、明日の予定を気にすることなく習い事に集中することができます。
月曜日から木曜日は仕事で忙しいから習い事を入れないのはわかるとしても、土曜日と日曜日ではダメなのかと聞かれそうです。後ほどお話ししますが、土曜日は基本的に「だらだらする日」なので、予定は入れないようにします。
■“週末モード”のスイッチを入れる
たいていの習い事は義務というより「やりたいこと」なので、土曜日に入れてもよさそうですが、「やりたいこと」だからこそつい没頭し、神経をすり減らしてしまうということが起こりかねません。金曜日までに神経は十分すり減らしていますので、たとえ「やりたいこと」であっても、土曜日はこれを避けるようにし、あくまで「だらだら」して、心と身体を休めるようにします。
いっぽう、日曜日はかまいません。けれども、習い事は定期的に入ってくるので、日曜日がこれに取られるとなかなか別の予定が入れにくくなります。日曜日は自由度を高めておきたいので、やはり習い事を入れるなら金曜日の夜ということになります。
週末へと意識を切り替えるためのスイッチは、飲み会でもかまいません。ただし、その際は、週末にしか利用しない飲み屋を決めておいて、そこに行くようにします。
そのほかにも、週末だけ恋人の家に泊まる、映画館に映画を観に行くなどでもいいでしょう。週末モードに切り替えるスイッチとして機能するなら、なんでもありなのです。

そして、いったんスイッチが入ったら、仕事のことは忘れましょう。徹底的に無責任になりきりましょう。「そんなことできない」と言われるかもしれませんが、そうすることが翌週の仕事のモチベーションにつながっていくのです。
■「金曜の夜更かし」の影響は月曜まで続いてしまう
明日は休みだ、と思うとつい夜更かししてしまい、普段はできない趣味に没頭したりインターネットに熱中したりしてしまいます。気持ちはわかりますが、これはやめましょう。リズムコントロールにおいては、とにかく寝る時間と起きる時間をできるだけずらさないようにすることが大切です。
もし、それこそ朝までインターネットの画面にくぎづけになっていると、そこから寝たとしても起床はお昼過ぎでしょう。人間が眠くなる時間は起床した時間に規定されていますので、遅く起きれば眠くなるのもその分だけ遅くなります。それを日曜日に修正して早く起きたとしても、日曜日の睡眠時間が極端に短くなってしまいます。
短時間の睡眠では交感神経から副交感神経への切り替えがうまくいかず、眠いのに眠れない、だるい、めまいがするなどの症状が出ます。そうすると、日曜日の夜の入眠がうまくいくかわかりません。場合によったら、寝つきが悪くなって結局月曜の朝に起きられないということになってしまいます。
睡眠時間のバランスがくずれると、細胞の修復機能を担っている成長ホルモンの分泌も抑えられます。分泌は特に午前0時から2時ごろにピークを迎えますので、この時間に起きていると修復機能が働かず、疲労感や痛み、冷えなどにつながります。
さらにこれに深夜の飲酒が重なると、睡眠の質そのものを悪化させたり、水のめぐりのバランスをくずしてしびれやむくみの原因となります。金曜日の夜はつい羽目を外しがちですが、睡眠の時間だけはできるだけずらさないようにするのが健康的な週末を迎えるコツです。

■平日5日間の「よかったところ」を見つける
人間は、報酬をもらわなければ仕事を長く続けることができません。報酬がモチベーションとなって、困難なタスクに挑んでいくことができるのです。
報酬とはお金ばかりではありません。賞賛や感心など、上司や同僚からのポジティブな評価が「貢献している」という実感をもたらし、それが「やりがい」や「生きがい」につながります。給料は月に1回です。その1回で1カ月のモチベーションを維持できればいいのですが、多忙な上にストレスの多い世の中、なかなかそうもいきません。
上司や同僚がつねにポジティブな評価をしてくれるとも限りません。逆に批判や叱責を受けてしまうと、モチベーションはむしろ下がってしまいます。そうであるなら、自分で自分をポジティブに評価してあげればいいのです。
金曜日の夜、1週間の仕事を終えた後に、その週の月曜日からの5日間をサマライズしましょう。そして、反省点はそれなりに挙げておいて、良くできた点を意識的に探して、その1つひとつについてプラスの評価を与えてあげましょう。
■「怒り」「いらいら」は引きずらない
ただ単にサマライズするだけであれば、悪い点、できなかったことだけが目についてしまいます。すると、いかに自分がダメかということしか頭に残らず、なかなか仕事のモチベーションにつながっていきません。毎週金曜日の夜にぜひ「マイ賞賛」という報酬を自らに与えて、翌週の仕事に意欲的に取り組む準備をしておきましょう。
上司から感情的な言葉をぶつけられた、同僚と口論した、取引先の態度が失礼だったなど、日々の仕事の中では感情を揺さぶられることが多々あります。
それは仕方がないとしても、金曜日にそれを引きずることは止めましょう。「怒り」や「いらいら」に捕われっぱなしになってしまうと、せっかくの週末が台なしになってしまいます。
「怒り」や「いらいら」の感情はあたかも渦巻きのようです。理性を飲み込み、そのことを考えれば考えるほど巻き込まれていきます。人や物に当たってみたり、ときには衝動的に大声を出してみたり……。十分に理性が働いていれば到底やらないようなことをやってしまいます。我を忘れて、「怒り」や「いらいら」は肥大するのです。

■「もう1人の自分」に監視してもらう
では、どうやってそれを長引かせないようにすればいいのでしょう。そうならないようにするためには、いかに我を忘れないようにするか、つまり理性を維持するかです。それには、自分の頭の斜め上のほうに「もう1人の自分」を置くようにします。
「怒り」や「いらいら」で我を忘れそうになるとき、「もう1人の自分」に監視をしてもらって、「このままいくと感情の渦に巻き込まれてしまうぞ」とか「さあもっと冷静になろう」などと自分で自分に声をかけるのです。そうすると、感情的になりかけた自分が滑稽だったり馬鹿らしく見えてきたりします。
これは、自分自身を客観視するということです。客観視することができれば、感情的になる前に何をすべきか、相手の言葉や態度をどう受け取るべきかということなどが見えてきます。そこから解決策が導き出されることもあります。感情の渦に巻き込まれていたら、決してそうはならないでしょう。
■グチばかりの飲み会は避ける
ビジネスパーソンのみなさんは、金曜日は仕事の後に飲酒する機会も多いでしょう。その際、抱えている仕事のさまざまな問題を忘れようとやけ酒になったりします。

しかし、金曜日につらくてお酒を飲むときでも、あからさまなグチにならないように心がけたいものです。
飲酒でのストレス発散は悪いことではありませんが、グチばかりだとつい深酒になってしまい、身体にもよくありません。ポジティブな話題になるように意識し、お酒の量も適量にします。そのためには、前述したように、1週間の評価できる点を一緒に飲む相手に話せるよう、頑張ってみましょう。
(主な参考文献)
・森雄材『図説漢方処方の構成と適用』(名著出版)
・大塚敬節『症候による漢方治療の実際』(南山堂)
・大塚敬節『漢方診療医典』(南山堂)
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森下 克也(もりした・かつや)
心療内科医、医学博士
1963年生まれ。久留米大学医学部卒業後、東京女子医科大学で8年間の脳外科医のキャリアを経て、米国へ留学。帰国後は浜松医科大学心療内科にて、全人的医療の提唱者である永田勝太郎先生に師事、漢方と心療内科の研鑽を積む。浜松医科大学病院、浜松赤十字病院、豊橋光生会病院などを経て、2006年精神科漢方の専門施設としてもりしたクリニックを開業。著書に、『決定版「軽症うつ」を治す』(角川SSC新書)、『うつ消し漢方』(方丈社)、『もしかして、適応障害?』(CEメディアハウス)他多数。
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(心療内科医、医学博士 森下 克也)
