『ガールズバンドクライ』©東映アニメーション

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 春アニメもポツポツと始まっていますが(今期は久々に毎週80本ほど観られることになりそうで、嬉しい限りです)、冬アニメが『闇芝居』第十二期でようやく一段落しました。このタイミングで、筆者が冬アニメを72作品ほど見終えて感じられた3つのトピックと、春アニメをザッと眺めての展望を簡単に触れていきます。

参考:『ガールズバンドクライ』に結集した東映アニメーションのCG技術 平山理志Pが狙いを語る

●冬アニメ重大トピック1:歌ものアニメがない!

 筆者の連載(【神回】オブ・ザ・ウィーク)でも以前触れましたが、冬アニメにはアイドルや歌をメインテーマにしたアニメが存在しませんでした。『ラブライブ!』などが流行した2010年代前半以降は毎クールそういった作品が必ず存在し、多い時は数作品楽しめたイメージがあるだけに、この事態はかなり残念。明確な大手がシリーズ展開を続けていて新作はヒットが難しい、もうCDは商売になりづらい、コロナ禍で(現実世界における)ライブの客足が遠のいたなどいろんな理由があるのかもしれませんが……。

 そんななかでも『魔法少女にあこがれて』第9話のロコや『道産子ギャルはなまらめんこい』第11話のオーイシマサヨシ(キャラクター)などが印象的なライブを見せてくれました。以前からその傾向はありますが、別ジャンルのアニメでも当たり前にフィーチャーされるくらい、歌唱やライブシーンはすっかり定着したという見方もできるかもしれません。

●冬アニメ重大トピック2:現実世界と異世界の距離が近付いた

 歌ものとは逆に、増え続けているのが小説家になろう発の“なろうアニメ”をはじめとする異世界/ファンタジー世界を扱うアニメです。転生を伴わないものも含めると冬アニメにも10作品強ありましたが、その世界観の扱われ方が変わってきた……具体的には現実世界と異世界の距離が近くなったように感じました。

 『俺だけレベルアップな件』や『佐々木とピーちゃん』は現実世界と異世界を頻繁に行き来し、『外科医エリーゼ』は第1話で、『結婚指輪物語』も終盤で現実世界と異世界を往復しました。もちろんこれまでもそうした作品はありましたが、これほど多かったのは珍しいのでは。単純な異世界転生が飽和状態となり、悪役令嬢や追放系などが流行ったのと同じく、原作となる小説界隈の流行を追従して表れた傾向でしょう。

●冬アニメ重大トピック3:オリジナルアニメの存在感

 アニメ関係者と話していると「ヒットを見込みづらいから最近はオリジナル作品の企画が本当に通らない」とよく聞かれますが、冬アニメに限ってはオリジナルアニメの存在感が強烈でした。『勇気爆発バーンブレイバーン』は言うに及ばず、『SYNDUALITY Noir』(第2クール)や『ぶっちぎり?!!』『ぽんのみち』『明治撃剣-1874-』『メタリックルージュ』、そして『月刊モー想科学』と、好みはあるでしょうがそれぞれに個性を爆発させていました。こうしたオリジナル作品に関しては、原作のある作品に比べて注目度が低くなりがちなぶん、いい回があったら余計に褒めたくなりますよね。

●春アニメのトピック1:『週刊少年ジャンプ』アニメが多いが……

 ここ数クールの新作アニメで、『週刊少年ジャンプ』連載作とその他のジャンプ系列での連載作は同数か、もしくは後者(おもに『少年ジャンプ+』連載作)のほうが多いくらいでした。しかしこの春は以下のように、久々に『週刊少年ジャンプ』連載作が圧倒的に多いクールとなります。

【『週刊少年ジャンプ』連載作】『鬼滅の刃』柱稽古編、『僕のヒーローアカデミア』(第7期)、『夜桜さんちの大作戦』、『SAND LAND: THE SERIES』、『ライジングインパクト』

【『少年ジャンプ+』連載作】『怪獣8号』、『忘却バッテリー』

 ただし『週刊少年ジャンプ』連載作で、フレッシュな新作と言えるのは『夜桜さんちの大作戦』のみ。本誌を読む限りアニメ化してもおかしくない作品はもっとありそうですが、安定を求めるならシリーズものや旧作が多くなるのでしょう。

●春アニメのトピック2:「なろうアニメ」三国時代へ

 この春も多くの「なろうアニメ」や異世界転生ものがありますが、『この素晴らしい世界に祝福を!3』、『無職転生 II ~異世界行ったら本気だす~』第2クール、『転生したらスライムだった件 第3期』という、そうしたジャンルを代表すると言っても過言ではないような人気の3作が揃いました。

 まさに「なろうアニメ」三国時代とも言える状況ですが、個人的には天才・稲垣隆行監督が(「イナガキタカユキ」名義で)手がける『Re:Monster』に南蛮のような存在感を放ってほしいところ。読者のみなさんはどの作品に期待を寄せているでしょうか?

●春アニメのトピック3:そんなにジャンルが被ることある?

 最後は重箱の隅です。先述した稲垣監督による近年の大傑作『BIRDIE WING -Golf Girls' Story-』に続けと言わんばかりに、この春はゴルフアニメが続きます。『週刊ゴルフダイジェスト』という渋い専門誌で連載中のマンガが原作の『オーイ!とんぼ』と、配信開始は6月22日からとまだ少し先ですが『ライジングインパクト』の2本です。さらに2025年にはオリジナルアニメ『空色ユーティリティ』も控えていますが、それほどアニメではメジャーではないジャンルでこんなに被ることがあるものでしょうか。

 ……なんて考えていましたが、いざ春アニメが始まってみると『ガールズバンドクライ』と『夜のクラゲは泳げない』の被り具合も驚きでした。どちらもオリジナルアニメですが、まだ何者でもないティーン女子が女性と出会い、路上パフォーマンスからバンド(音楽)の道を歩み出すという点が第1話時点で共通していました。

 個人的にはキャッチーかつツッコミどころのある花田十輝先生の脚本に、ファニーなCGキャラクターと演技、そして“怒り”や反逆心で戦ってくれそうな主人公がロック好きなおじさんにはクリティカルで(あと「東京ワッショイ」「夜行性の生き物が3匹」といったサブタイトルもタマらない)『ガールズバンドクライ』推しですが、『夜のクラゲは泳げない』も見応えがあったのは確か。春は同じくバンドものの『ささやくように恋を唄う』もあり、まさに“大ガールズバンド時代”到来です。

(文=はるのおと)