NOBUTA GROUP マスターズGCレディースに出場したイ・ボミ【写真:Getty Images】

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NOBUTA GROUP マスターズGCレディース第2日

 女子ゴルフの国内ツアー・NOBUTA GROUP マスターズGCレディース第2日が20日、兵庫・マスターズGC(6495ヤード、パー72)で行われた。107位で出た韓国の2015、16年賞金女王イ・ボミ(延田グループ)は、日本ツアー引退試合で通算11オーバーの99位で予選落ち。一時代を築いた35歳が日本のツアー生活に別れを告げたが、実は初日に83を叩いた後に人知れず大号泣。ゴルフ界に多大な功績を残した選手へ、サプライズの贈り物があったからだった。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)

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 誰とでも平等に接するボミの人柄。プロアマ戦で同組で回るなど親交のある前巨人監督・原辰徳氏は、ボミについてこう語っていたことがある。

「彼女は“四種”の神器を兼ね備えているね。心・技・体。もう一つ? ホスピタリティーだよ」

 賞金女王になって大金を稼ぐと、どうしても“寄ってくる”人たちがいる。中には数百万円規模の謝礼を用意してディナーを求める人も。しかし、ボミは応援に来てくれた清水重憲キャディーの家族など、“身内”を優先した。試合で疲れていても「1時間だけでもいいから行こう」と恩返しを欠かさない。

 会場で顔見知りを見つければ、後ろから腕をツンツン。相手が振り返ったところで驚かせ、その場を楽しませた。何年も前に担当を離れた記者と再会しても、「忘れるわけないでしょ!」とニッコリ。予選落ちをすれば、決勝ラウンドのチケットを買った人への申し訳なさが募る。「ツアー選手で恩返しができるのは成績だけ」。日本最後の試合も同じ気概で臨んだ。

 初日は日本ツアー自己ワーストとなる11オーバーの83と大きく崩れた。「恩返しできないから凄く悲しいし、つらい」。これまで競技の面白さとたくさんの愛を届けた名ゴルファー。そんな“与える側”だったボミへ、今週はたくさんの愛が返ってきた。

児童養護施設の子どもたちから受け取った言葉とは

 初日ラウンド後の取材を終え、練習に行く直前。クラブハウスで待っていたのは、神戸市の児童養護施設「長田こどもホーム」の子どもたちだった。賞金女王になった後、親のいない境遇の子のため、「何かできないか」とボミの要望を聞いた所属事務所が同施設に連絡。韓国で慈善活動をしていたが、日本でもツアー優勝時に獲得する副賞を寄付するようになった。

 お手製の応援うちわに書かれた韓国語。目に入った瞬間、ボミの涙腺が崩壊した。

「幸せにしてくれてありがとう」

 練習に行けなくなるほどの大号泣。周囲も心配になるくらい泣き崩れた。自身の父・ソクジュさんは2014年に死去。毎試合コースを歩く母・ファジャさんにも多く支えてもらった。親から受ける愛の深さを知るだけに、子どもたちの健気なメッセージが胸を打った。

 事情を知らないファンが気づけば、ネガティブな理由で泣いていると思われかねない。時間を置き、気丈に最終調整へ向かっていた。「嬉しい想いをして帰ってもらいたい」と“ホスピタリティー”の精神を胸に、ファンを楽しませようと奮闘。第2日、ファンは大雨でずぶ濡れになりながら声援を送ってくれた。

 ボミは会見や引退セレモニーを終えた後、待っていた約280人にサインや写真撮影で対応。「今日はずっと皆さんの顔を見ながら回っていました。私はここにいらっしゃる皆さんのおかげで本当に幸せでした」。子どもたちや大勢のファンから恩返しを受け取った2日間だった。

(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)