京都で憧れの和朝食をいただく。早起きして食べに行きたい名店

旅を有意義に過ごすために、欠かせないのは早起きすること。京都での理想的な一日を手に入れるなら、まずは朝食の予約から始めよう。
〈旧三井家下鴨別邸〉の精進料理
胡麻豆腐、梅の天ぷら、粟麩田楽などが漆器に盛られた〈泉仙〉の精進料理3,500円。
主屋3階は東山の眺望を楽しむ望楼。通常は非公開ながら、朝食後には見学ができる。
朝食のために用意されるのは、明治13(1880)年に建てられ、木屋町三条から移築された主屋2階の座敷。ゆったりした席に座り、ガラス越しに見る庭や池の姿も美しい。
朝のスタートがうまくいけば、いい一日は約束されたも同然。となれば大切になってくるのが朝食。きちんと予約して朝のスケジュールを立てることから、素晴らしい旅は始まるに違いない。 下鴨神社のすぐ南にある〈旧三井家下鴨別邸〉は、大正14年に完成した豪商・旧三井家の別邸。木屋町三条から移築された木造3階建の主屋は、外に広がる景色を眺めるための開放的な造りが特徴で、国の重要文化財でもある。広く一般に公開されるようになったのは2016年と、まだ日が浅いこともあって知る人ぞ知る存在。その座敷で精進料理を味わう朝食は、京都らしさを存分に味わえるもの。 御膳は仕出し料理〈泉仙(いずせん)〉から届けられる。仏教の教えに基づき、肉や魚を使わず野菜や豆だけで作られる精進料理は、僧侶が托鉢の際に使う鉄鉢を模した朱塗りの器に盛り込まれたもの。先付から八寸、煮物、浸し物と目にも美しく、食べごたえも十分。また、お客をもてなすための料理が家々に届けられる仕出し文化は、京都に受け継がれる伝統のひとつでもある。 精進料理、仕出し、そして歴史ある建造物と、幾重にも京都ならではの文化に浸ることができる朝食がなによりの贅沢だ。
旧三井家下鴨別邸
開催日はHP(https://ja.kyoto.travel/tourism/article/mitsuike/)で確認を。住所:京都府京都市左京区下鴨宮河町58-2TEL:075-366-4321営業時間9:00〜10:30 定休日:不定休席数:10席 ※完全予約制。別途入館料要(平日500円、土日祝600円)
〈丹〉の丹の朝食
丹後の蒸し野菜、へしこの炭火焼、特別濃厚卵、季節の和え物、自家製漬物にご飯と味噌汁がつく。ご飯のお代わりは何杯でも。2,750円。
土鍋炊きのご飯は朝食のほか昼食の「山椒たっぷり牛丼」などでも楽しめる。
目の前に白川が流れるロケーションが清々しい。食後は2階で飲み物を。
“苔地の庭”を眺める座敷で味わう仕出し朝食で、京の文化に浸る。白川を眺めながら、大きな食卓を囲む温もりある空間へ。料亭〈和傳(わくでん)〉が手がける〈丹〉の朝食は、京都の恵みがぎゅっと凝縮している。ご飯は〈和久傳〉創業の地・京丹後で自家栽培された米を土鍋で炊きあげたもの。ふんだんに使われた野菜は、同じく京丹後で無施肥・無農薬で育てられたものが中心だ。金山寺味噌を添えた蒸し野菜、香ばしい胡麻をたっぷり使った胡麻和え、濃厚な生卵、郷土料理のへしこと、選び抜いた食材と調理は料亭ならではの上質さ。ご飯を進ませるおかず揃いで、ついついお代わりという口福が待っている。
丹
住所:京都府京都市東山区五軒町106-13 三条通り白川橋下ル東側TEL:075-533-7744 営業時間:朝食8:00〜、9:00〜(2部制)、12:00〜14:30(14:00LO)、18:00〜22:00(21:00LO) 定休日:月休(祝の場合営業、翌火休)、月1回不定休 席数:10席 ※要予約
〈ロリマー京都〉の一汁五菜二魚
この日の魚料理は、グレープフルーツとタイムの風味を加えたアジの幽庵焼きと、ヒラマサと鯛など今日の造り2種。2,860円。
京都駅からも歩いて10分ほどの距離。到着後すぐに朝食というコースもいい。
町家を改装した明るい空間。カウンターのほか、テーブルの2階席もある。
ワンプレートに仕立てた、舞鶴港直送のモダンな魚料理。一汁三菜という和食の基本を掲げながら、モダンな空気が漂うのは、こちらがブルックリンから逆輸入された和食店だという成り立ちから。魚のおいしさを広く知ってほしいと、舞鶴港から直送される鮮魚が主役だ。ユニークなのは塩焼きや幽庵焼きにハーブやフルーツが使われていること。なじみのある焼き魚も、口に運んだ瞬間にはっと驚きがあるのはそのため。三菜、五菜と選べる副菜は、低温調理でプリンのような食感の卵焼きに、切り干し大根のジェノベーゼ和え、季節野菜の浅漬けなど。軽やかさをまとった和朝食が新鮮。
ロリマー京都
住所:京都府京都市下京区橋詰町143 TEL:075-366-5787 営業時間:8:00(土日7:30)〜15:00(14:30LO) 定休日:無休 22席 ※予約がベター
〈旬菜いまり〉の京の朝ごはん
京野菜などを使ったおばんざいは、旬を伝えてくれる。昆布佃煮、鰹ふりかけなども自家製で、どれもご飯と相性よし。1,700円。
夜はカウンターにおばんざいの大鉢が並ぶカジュアルな料理店。
気に入った料理があれば、次は夜に訪ねてみるという使い方もできる。
炊きたて土鍋ご飯を進ませるおばんざいづくしがご馳走。来店時間に合わせて炊きあげられる、熱々の土鍋ご飯がテーブルごとに運ばれてくるのが何よりの贅沢。つやつやのご飯は京丹後産コシヒカリ。おかずは西京焼にだしまき、茄子のオランダ煮や万願寺唐辛子とじゃこの炊いたんなどその日のおばんざい2種、自家製ぬか漬けと、京都に来たら食べたいと思うものがずらりと揃う。ホテルやゲストハウスが増え、海外からの旅行客も増えたエリアにあって、夜の食事に来た人のリクエストから生まれたという朝ごはん。京都旅の理想と思える内容は、そんな成り立ちがあってのこと。
旬菜いまり
住所:京都府京都市中京区六角通新町西入ル西六角町108TEL:075-231-1354営業時間:7:30〜11:00(10:00LO)、17:30〜24:00定休日:火休席数:24席 ※完全予約制(予約は前日まで)
〈花梓侘〉のつまみ寿し
赤だしと、黒蜜かんのココナッツミルクなど選べるデザートが付く。タコは秋にはキノコに替わるなど、季節のネタも。10貫2,640円。
古伊万里などの器も扱っている。
2021年に北山から移転。北大路駅からすぐのため、京都に到着してまずここで朝食をと足を運ぶ人もいるという。
目でも舌でもあれこれ味わう和菓子のような姿の寿司。赤酢を使った甘さ控えめのシャリに、まぐろのヅケや〆鯖など迷うこと必至のネタを揃えた、つまみ寿し。上生菓子からイメージを膨らませた寿司は、まず品よく愛らしい見た目に目を奪われ、ひとつ、またひとつと口にするたび工夫を凝らした味わいに嬉しくなる。棒湯葉を煮含めた「生湯葉」、よもぎ麩を白味噌の田楽味噌で味わう「生麩」など京都らしい食材が使われているのも人気の秘訣。軽めに楽しみたいなら10貫、全種類制覇したいなら15貫。胃袋の具合と相談しながら味わえるのも魅力。京湯葉を使った「京のおたぬきさん」も。
花梓侘
住所:京都府京都市北区小山下内河原町3-3TEL:075-491-7056営業時間:9:00〜17:00(朝〜10:30LO、昼11:30〜13:30LO)定休日:水、第2・4火休 15席 ※予約がベター
大和まこ
京都に暮らして25年。外での朝食は予約しないとくじけると身をもって実感している。
photo_Yoshiko Watanabe text_Mako Yamato
No. 1224
No.1224 『京都の味』 2023年08月28日 発売号
今号から、Hanakoがリニューアルします。 Hanakoが創刊時から大事にしてきたDNA・食と旅を軸にして。 領域は、家の食事を楽しむためのインテリアと道具、旅の持ち物、日本各地のカルチャー情報も……。 一時的な情報だけでなく、読者のみなさんにとって、Hanakoの記事が刺激となり、脳内シナプスが多方向につながり、楽しいことがどんどん広がって、新しい世界が開いていく特集を作っていきます。 リニューアル第一号は、京都の味について考えます。 平安時代に始まり、戦国時代を通して、現代へ。古くから、日本人が京都を目指すの …
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