エスパ復帰の原輝綺と鈴木唯人。市船の先輩後輩コンビの現状と期待すること「戦術の幅が大いに広がる」「もっと違いを見せてほしい」
しかしながら、シーズンが開幕すると序盤7戦未勝利というまさかの苦境に直面。昨季途中から指揮を執っていたゼ・リカルド監督が4月頭に解任されるというショッキングな出来事も起きた。
直後に秋葉忠宏コーチが監督に昇格。4月8日の東京ヴェルディ戦で初勝利を挙げると、そこから8戦無敗の快進撃を披露。立て直しの布石を打った。
前節・栃木SC戦で攻撃の絶対的キーマン・乾貴士が負傷し、欠場を余儀なくされるなか、秋葉監督は白崎凌兵をトップ下に抜擢。通常通りの4−2−3−1でスタートし、良いリズムで試合を運んだ。
「他のところが上手くいっていたので、チームを大きく変える必要はなかった。点こそ入らなかったが、凌兵は面白い形で動いていた」と指揮官は背番号14を評価したが、押し込みながら決めきれなかったのも確かだ。
そこで、後半から3−4−2−1に布陣変更し、11分にはストラスブールへのレンタル移籍から復帰した鈴木唯人を投入。3分後に彼とのワンツーから中央を切れ込んだカルリーニョス・ジュニオが先制弾を奪うことに成功する。
この虎の子の1点を最後まで守り切った清水が首尾よく勝点3をゲット。暫定4位まで順位を上げ、自動昇格圏の2位・ジュビロ磐田に5ポイント差まで迫ってきた。
乾の不在は少なくとも8月半ばまでは続く見通しで、それはチームにとって大きな懸念材料と言える。そんな時期だからこそ、鈴木とグラスホッパーへレンタル移籍していた原輝綺の“ダブル復帰”は非常に大きい。
前述の通り、鈴木は後半の約35分間のプレーだったが、決勝点をアシストし、64分には芸術的な右足ループシュートをお見舞いした。これはクロスバーを直撃し、得点には至らなかったものの、高度な技術と創造性溢れる彼らしいプレーだった。
一方の原も、古巣復帰2戦目ながら先発フル出場し、前半は右SB、後半は3バックの右に入ってプレー。タッチライン際の攻撃参加やクロスに加え、後半はボランチの位置まで上がってボールをさばくシーンも随所に見せていた。
秋葉監督は、市立船橋高の後輩にあたる2人の現状を次のように説明する。
「唯人はもっともっとやれる選手。彼の良さはゴールに直結したプレー、ゴールに絡むプレー。今日はワンツーの壁になりましたけど、彼自身にはもっと違いを見せてほしいので、コンディションを整え、チームにフィットして、持っている能力を100パーセント、120パーセント出せるようにやっていきたいです。
輝綺に関しては、90分間、しっかりコンディションを整えながら、かなり違いを見せてくれたと思っています。彼が1人いるだけで戦術の幅が大いに広がるので、『戦術・原輝綺』も十分にある(笑)。あれだけ地上戦も空中戦も強さを見せてくれると、我々としても非常に頼もしいと感じます」
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指揮官の発言通り、鈴木のほうはコンディションが不十分というのは否めない事実。ストラスブールで過ごした半年間は、公式戦出場がわずか3試合。それも全て終盤の短時間、ピッチに立っただけということで、実戦感覚が遠のいているのだろう。どうしても一つひとつの動きにキレや動き出しの鋭さ、アジリティの部分で物足りなさが見て取れた。
「今の日本の暑さと湿度は正直、かなりキツい。(大岩)剛さん(U-22日本代表監督)が見に来ていたと聞きましたけど、見に来ないでほしいですね」と本人も苦笑していたが、今は環境に慣れ、ゲーム体力を取り戻していくしかない。
「4−2−3−1のトップ下に入って乾の代役をこなせるのは唯人だけ」という関係者もいるだけに、彼には早く本来のフィットネスを取り戻してほしいというのが秋葉監督の本音だろう。
それは大岩監督にとっても同じ。9月初旬にはU-23アジアアップ予選も控えており、背番号10候補の状態が上がらなければ、日本の足かせになりかねない。
「とにかく自分は今、コンディションを上げていかないといけない。今日(岡山戦)もあんまりボールに触ってないし、もっとプレーに関われれば良かった。味方もキツいなかで上手く手助けになれるように考えながらやっていきたい」と、鈴木は覚悟を持って再出発する構えだ。
原については、すでに公式戦にフル出場できる状態まで上がってきている。そういう意味では、秋葉監督が言うようにチーム戦術の幅を広げる新たなピースになれるだろう。フィジカル的にも目に見えてガッチリし、当たりや球際の部分で迫力が増したのも好材料と見ていいはずだ。
「スイスに行って最初に苦労したのはピッチ状態。柔らかいピッチなので、あそこで練習していれば自然と筋力が増えたり、身体が鍛えられると思います。
僕の場合は行ってすぐに怪我をしたので、最後まで試行錯誤しながらやっていた状態。多少慣れて、やれることが増えてきたなと思ったところでシーズンが終わってしまった感じですね(苦笑)。
『奪い切る守備』というのも勉強させてもらったけど、日本では活かせる場面と活かせない場面がある。周りやタイミングを見ながら、上手くやるしかないと思ってます」と、本人もスイスで経験したことをどう清水に還元すべきか今、必死に模索している様子だ。
彼らが加わったことで、清水の戦力アップは間違いない。ただ、8月末まで夏の欧州移籍期間が続くため、2人が田川亨介(ハーツ)のように再移籍しないとも限らないだろう。そのリスクがある分、秋葉監督としては彼らに依存した戦いはできない。2人の力を上手く借りながら、チーム全体をレベルアップさせ、勝ち切れる底力を養っていくことは肝心ではないか。
いずれにしても、J2は残り14試合。清水が初めてJ2を戦った2016年は、リーグ終盤に猛スパートをかけて、最終的に松本山雅FCをかわして2位に入り、自動昇格を手にしている。
その再現を見せられれば理想的。それを現実にするために、市船の先輩後輩コンビがどんな役割を果たすのか。慎重に見守っていきたい。
取材・文●元川悦子(フリーライター)
