ロシアW杯後に行われた森保新監督就任記者会見の席上で、田嶋幸三会長は「日本人で最も結果を残した監督だから」と、実績重視で招聘したことを強調した。それから4年半後経過した今回、続投会見の席上では「ベスト8という新しい景色を見るためには、森保監督が最適だ」と述べている。

 会長のこだわりが成績であることがわかる。サッカーの中身や方向性についての話は、前回に引き続き今回も出なかった。会長は元サッカー選手で、日本代表に選出された経験も僅かながらある。サッカーに詳しい人物であるように見えるが、元選手の中には詳しい人もいれば、詳しくない人もいる。これが現実だ。「名選手名監督に非ず」とはよく言われるが、「名選手名評論家に非ず」であり、さらには、選手と監督、指導者はその延長線上にはない全く別の職業であることを、田嶋会長の台詞を聞くたびに再認識させられる。

 前回ロシアW杯で西野ジャパンが演じたサッカーについて、会長は「西野さんがやった、ああいうサッカーはいい」と批評したが、「ああいう」の中身の説明はついに出てこなかった。説明する時間がなかった。言葉にする力に欠けたというより、サッカーにそう詳しくない人の言い回しに聞こえた。

 だが、サッカー偏差値が高そうではない人から「日本人で最も結果を残した監督だから」とか「ベスト8という新しい景色を見るためには、森保監督が最適だ」と言われても、説得力は生まれない。

 だとすれば、分業制を敷き技術委員長に託せばいい。会長は奥座敷に座り、金は出すが実務に口を挟まない、一歩引いたスタンスを取ればバランスは取れる。だが、反町技術委員長も多くを語らなかった。森保監督がカタールW杯本大会で見せた守備的な采配を「フレキシブルなサッカー」と、言ったのが精一杯。大会後、森保監督と2時間ほど膝を付け合わせて話し合ったことは強調したが、そこで具体的に何を話し合ったのか、詳らかにしなかった。中身や方向性の話は出ず終いだった。これでは技術委員長の仕事の中身も詳らかにならない。

 会長と技術委員長と代表監督。それぞれの関係はどうなっているのか。監督監督の続投は異例中の異例だ。丸4年半プラス3年半。契約満了すれば計8年に及ぶ。世界に例はあるとはいえ、日本サッカー史においては初の出来事になる。年俸もトータルで推定15億円近くに及ぶ。この出所の中には当然、選手の登録料も含まれている。日本サッカー協会主催の大会に登録料を払っていない選手は出場できないので、それは選手に課す税金のようなものだ。使い道は明らかにされる必要がある。頂点に立つ代表監督の年俸である。典型的な強化費なのだ。選手たちに向け可能な限りメッセージ性の高い言葉を発する義務が会長、技術委員長、代表監督には課せられている。