何か良いことあった? 2022年振り返り 海外の自動車ライターが選ぶ「最高の思い出」
クセの強い英国記者が選ぶ2022年の思い出
AUTOCAR英国編集部のライターたちが2022年を振り返り、「最高の思い出」として選んだのは、クルマ同士をぶつけ合う乱闘レース、親友とのドライブ旅行、新型ミニバンの予想外の走りの良さなど、バラエティに富んだものとなった。
【画像】2022年、自動車ライターの思い出に残ったクルマたち【マクラーレンGTやフェラーリ296 GTBなどを写真で見る】 全87枚
自動車業界が大きく変化した激動の年でも、変わらないものがある。それは、クルマから得られる永遠の思い出とシンプルな喜びだ。英国の自動車ライターが選ぶ最高の瞬間を、ともに見ていこう。

個性的な英国編集部のライター陣が選ぶ、2022年の最高の思い出。
ジム・ホルダー
高級車にも乗れるという幸運な人生の中で、今年最も記憶に残っているのは、科学者ギル・プラット氏と過ごした1時間だ。トヨタ・リサーチ・インスティチュートのCEOであるプラット氏は、「限りあるバッテリー資源を、CO2削減のために最大限利用すること」を提唱し、場合によってはEVよりもハイブリッド車を優先することを明言している。
こうした姿勢は、世界各国の方針と相反し、EV推進派を怒らせるものだろう。とても勇気のある発言であり、ほぼ必然的に彼自身とトヨタを「利己的」「遅い」「時代に逆行している」といった批判にさらすことになる。

世界最大の自動車メーカーであるトヨタは、これからどのような道を歩んでいくのか。
彼は正しいかもしれないし、間違っているかもしれない(彼自身、確信が持てないことを認めている)が、変革を実現させるにはチャレンジャーが必要だ。保守的で有名な世界最大の自動車メーカーが、批判も承知でそれに名乗りを上げることは、わたし達全員のメリットにつながるはずだ。
ジャック・ハリソン
「ジャガー・スポーツXJR-15でビスター・スクランブル(英国の自動車イベント)に行きませんか?」というInstagramの素敵なメッセージが印象的だった。トム・ウォーキンショーが開発したこのモンスターマシンに、僕はいつもうっとりしてしまう。
ル・マンを制したXJR-9をベースに、ワンメイク・シリーズに参戦したモデルだ。静粛性皆無の6.0L V12エンジン、硬いレーシングサスペンション、ヘッドセットが必要なほど騒々しいキャビンなど、XJR-15は道路を走ってはいけないようなクルマである。

公道を走れるレーシングカー、XJR-15のV12サウンドが忘れられない。
でも、本当に良かった。回転域が上がっていくときのエンジンの唸り声は忘れられない。笑顔が止まりなくなる。実現させてくれたデイヴィッド氏とルード氏に感謝。
ジョン・エヴァンス
オーバルのサーキットで、剣闘士のように派手にペイントされた12台のハッチバックが文字通り「激突」している光景を見て、血が騒がないわけがない。この夏、わたしはオールダーショット(イングランドの町)でバンガーレース(クルマを破壊し合う競技)を取材した。ハンドルを握ることはできなかったが、繰り広げられる大乱闘を見ているだけでもスリリングだったし、参加者たちに会えたのも嬉しかった。
古いクルマが手に入りにくくなり、価格も上がっているため、バンガーレースは衰退しつつあるという噂もある。だが、わたしが観戦したときは、人数は減っているというものの、多くの観客がクルマとドライバーに声援や怒号を飛ばしていた。

古いクルマをぶつけ合うバンガーレースを観戦。手に汗握る「大乱闘」だった。
忘れられない光景は、左の後輪が車体に対し直角に曲がったヴォグゾール・コルサが、迫ってくるライバルをスターターモーターの動力で邪魔しているところ。わたしだったら怖い。コルサの運転手? 彼は笑っていたよ。
ピアス・ワード
取るに足りない出来事でもいいだろうか? 1月のある日、午前3時45分のこと。お尻の右側が痺れて目を覚ました。寝ている間に誰かに局所麻酔薬を打たれたんじゃないかと心配になったほどだ。
原因はマクラーレンGT。いや、本当に悪いのは、マクラーレンGTの乗り心地を確かめようと、24時間も車内に閉じこもった愚かなライターである。

マクラーレンGTでまさかの車中泊を決行。お尻が痺れて仕方がなかった。
しかし、GTは、快適性と優れたハンドリング、そして楽しいステアリングを見事に融合させた素晴らしい性能を発揮した。ノース・ウェールズまでドライブして、夜が明けるのを待ちながら景色とV8を楽しんだのはいい思い出。キャンピングカーとしては、理想的とは言えない。次回はプレミア・イン(英国のホテル)に泊まりたい。
レイチェル・バージェス
伝統的なモーターショーが黄昏時を迎えているように見えるのは、とても悲しい。それでも、10月のパリ・モーターショーのように、どんなに小規模でも、明るい照明、熱気あふれる会場、あらゆる実車に触れられること、そして一流の自動車会社の重役と自由に話せることから、わたしはできるだけ長くしがみつこうとしている。
ステランティスのボス、カルロス・タバレスCEOが次期排出ガス規制ユーロ7の導入をやめるようドラマチックに訴えかけたり、ルノー・グループのルカ・デ・メオCEOがプロトタイプの5ターボ3Eを量産するためにクラウドファンディングをするかもしれないと冗談を言ったりと、パリ・モーターショーから仕入れたネタで、その後数週間から数か月、多くの紙面が埋まっていった。

モーターショーは縮小傾向にあるが、ここで得られるものは決して少なくない。
マーク・ティショー
「お金に糸目をつけないなら、どんなクルマを買いたいですか?」知り合って間もない人との会話で、わたし達の仕事の話になったとき、最も多く聞かれる質問だ。
この質問は非常に難しいもので、僕が目立たないハッチバックや地味な高級セダンを答えに挙げても、彼らはそれ以上会話を続けようとしないのだ。

フェラーリ・ローマと過ごした時間は、一生忘れることはないだろう。
しかし今、僕は彼らが聞きたいであろう新たな答えを手に入れた。フェラーリ・ローマである。6月のル・マン24時間レースではこのクルマでフランスに向かい、帰路もこのクルマで帰ってきたのだが、その能力の幅にすっかり魅了され、畏敬の念を抱いたものだ。見た目もいいし、性能もいいし、音もいいし、広くて実用的だし、言うことなし。あと、見た目がいいっていうのは、もう言ったっけ?
ハイライトは、わざわざ遠くのダイナーまで(ムール・フリットを食べに)運転したこと。レースのことはもう忘れてしまったけど(グーグルによるとトヨタが勝ったそうだ)、この経験は一生忘れないだろう。
イリヤ・ブラパート
星のまたたく夜、素晴らしいドライブができた。わたしはノース・ヨーク・ムーアズ国立公園におり、そこからクルマを交換して空港に向かう必要があったので、少し急いでいたのだ。グーグル・マップは高速道路を無視し、交通量の少ない、アップダウンの激しい曲がりくねった裏道を走らせた。
それは至福の時間だった。コーナーに次ぐコーナー、見通しの良い道、タイトなマニュアル・トランスミッション、働かせなければならないエンジン、「ヒール&トゥ」が可能な完璧なペダル配置……。

価格重視の7人乗りミニバンと甘く見るなかれ。ダチア・ジョガーは予想よりはるかに運転が楽しかった。
運転していたのはダチア・ジョガーだ、というのはもう話したかな? わたしは、この格安の7人乗りミニバンが、英国一のドライバーズカーだと主張するつもりはない。しかし、多くの人が予想するよりもはるかに運転しやすく、また今回のルートも良かった。免許証を危険にさらすことなく、公道で激しく運転できるクルマの素晴らしさについては、わたしは黙っちゃいられない。
フェリックス・ペイジ
僕は助手席に乗るのが大の苦手だ。だから、最高出力830psのフェラーリ296 GTBでモンテブランコ・サーキット(全長約4kmのスペインのサーキット)を走る前に、(当然だが)プロの操縦するクルマの助手席でコースを学ぶと知らされたとき、僕の心は揺さぶられた。
そして、元F1ドライバーで2009年のル・マン優勝者のマルク・ジェネが現れ、僕と握手を交わして運転席に乗り込んだ。これはもう、どうしようもないことだった。しかし、この3分間で、僕の中の内燃機関自動車に対する概念は、大きく塗り替えられた。僕の自動車評価の原型を手に入れた瞬間である。

苦手なはずの助手席だが、296 GTBにはただただ圧倒されてしまった。
左耳の後ろでV6がその存在を声高に主張し、最初のコーナーで僕を放り投げると、華々しいプレスリリースも一緒にどこかへ飛んでいってしまう。電気モーターがシフトチェンジの遅れをカバーして一定の加速を確保すると、電動アシストに対する偏見は消え去り、マルク・ジェネがステアリングホイールを180度回転させて正確かつ爽快なターンを決めると、1.5トンの車重に対する意識は消えてしまう。
公道でも、スーパーカー以外の乗り物でも味わえない感覚に、毎日もう一度やり直したいと思うほど夢中になる。
リチャード・レーン
内なる10歳の僕は、4月にランボルギーニ・アヴェンタドール・ウルティマエのレビューをするために、ボローニャの南にある丘陵地帯でのドライブを楽しんだ。
でも、本当に面白かったのは、ランボルギーニが用意したウラカンSTOで、暖かい天候に見合わず冬用タイヤが装着されていたことだ。結果はいい意味で笑ってしまうもので、トヨタ86に最高出力640psの3.0L直6ツインターボを載せた2012年のドリフトレーサーに似ている。もちろん、エンジンもすごい。そして、そのシャシーもまた素晴らしい。STOのオーナーさん、Pゼロ・トロフェオRはいいとして、ウィンタースポーツ・ソットゼロを履かせてはいかがだろう?

新型車の発表会でフェラーリの開発者と知り合い、人脈の大切さに気付く。
34歳の僕はというと、フェラーリ296 GTSの発表会で、運良くパワートレイン開発責任者のクリスティアーノ・ポンプッチ氏とディナーで隣り合わせになった。彼は新型3.0L V6の開発を担当した人物で、シューマッハ時代の後半にはエンジンアナリストも務めていた。
F1での経験をもとに、レースに向けてどんな小さなパワーアップでもいいから実現しなければならない、というプレッシャーについて話を聞くのは、とても楽しい時間だった。ポンプッチ氏のような人が900psのV10からさらに5ps引き出したことを、シューマッハが瞬時に見抜いたという話を聞くと、鳥肌が立つ。この仕事には、素晴らしい人脈があるものだ。
スティーブ・クロプリー
わたしにとって今年最大の収穫は、正真正銘の天才、マテ・リマック氏(リマックの創業者)とクロアチアで2、3日一緒に過ごしたことだ。彼には、2022年のAUTOCARアワード最優秀賞を授与したのだが、その知らせと受賞者インタビューを行うために彼の地へ赴いたのだ。
リマック氏がまだ、賢いけれども貧乏な若者で、内燃機関の交換品が高価すぎるという理由で電気モーターを取り付けたボロボロのBMW 3シリーズをいじくり回していた頃から、まだ10年も経っていない。

新会社ブガッティ・リマックを率いるマテ・リマックCEO(写真右)は、まだ30代でありながら落ち着いている。
信じられないことに、そこから得た教訓と彼が集めたチームは、ポルシェやヒョンデといった優良企業が出資する、他に類を見ない高成長企業を築き上げた。今日、リマック氏がブガッティ(新会社ブガッティ・リマック)を経営しているのは、経験は豊富だがビジョンの乏しいビジネスマンではブガッティを存続させることができないからだ。
そんな立場にあって、リマック氏は平常心を保っている。今年に限らず、素晴らしいことだと思う。
チャーリー・マーティン
長年のエンスージアストでありながら、AUTOCAR英国編集部の比較的新しいメンバーとして、パリ近郊にあるDSのデザイン本部を訪れ、その将来計画について推し量る機会を得たことに、わたしはとても興奮している。
現時点では報告できることは多くない。しかし、近年の大型タッチスクリーンに代わるDSの提案として、2019年に作成されたインテリアコンセプトを見ることができた。それは決して大量消費を目的としたものではなく、真に先進的なものだった。

DSの先進的なインテリア構想に未来を感じた。
もしこれが、今後数年間にDSや業界全体に起こりうる抜本的な改革を示しているなら、クルマはこれまでと同様に革新的で刺激的であり続けるだろうと楽観的に考えている。
ジャック・ウォリック
グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード(英国最大級の自動車イベント)を英国人ライターのハイライトとして選ぶのは当然のことかもしれないが、今年は自動車業界の輝かしい一面を見事に表現した素晴らしいフェスティバルだったと思う。
内燃機関ファンであろうとバッテリーのファンであろうと、BMW Mを主役に据えた今年のフェスティバルは最高に楽しめたのではないだろうか。BMW 3.0 CSLのセントラル・フィーチャー(広場に掲げられるモニュメント)を見ることができたのは素晴らしいの一言に尽きる。

今年のフェスティバル・オブ・スピードの主役は、創立50周年のBMW Mだった。
そしてもちろん、取材の機会もたくさんあった。例えば、ジョン・ヘネシー氏に最高出力2400psの6輪車「ディープ・スペース」について話を聞いたり、ポールスターO2コンセプト(後にポールスター6と呼ばれる)の発表会でブランドの方向性についてトーマス・インゲンラートから興味深い洞察を得たりした。
先にレイチェル・バージェスが述べたように、伝統的な「モーターショー」は衰退しつつあるかもしれないが、フェスティバル・オブ・スピードの存続を願ってやまない。
クリス・カルマー
今年のわたしのハイライトは、自動車に限らず全般的に、親友と行った1週間のドライブ旅行だ。長年愛用してきたホンダHR-V(ヴェゼルの欧州仕様)は、広くて、快適で、リラックスできて、燃費がよく、100%信頼できる。おかげで、親友と音楽への情熱について語り尽くすことができた。
この旅の目的であったマウンテンバイク2台を運ぶこともでき、非常に楽しい時間を過ごすことができた。同時に、ちょっと痛い思いもした。体もプライドもあざだらけになり、出血もしてしまったが、幸い骨を折ることはなかったので、旅は成功と言えるだろう。

ホンダHR-Vで親友と欧州旅行へ。マウンテンバイクで怪我はしたが最高のドライブだった。
今回の旅で、素晴らしい景色、美しい都市、おいしい料理、スピードカメラのない高速道路など、欧州への愛を再確認した。また、1日11時間もクルマの中で60cmしか離れていなかったにもかかわらず、2人の会話は楽しいか面白い以外の何物でもなかったことから、ベンとの友情も再確認できた。
マット・サンダース
この仕事では、思いもよらない日が一番思い出に残るものだ。8月のある日、休暇のはずが、たまたま同僚が新型コロナウィルスの陽性反応を示したため、代わりに世界で一番最初にアリエル・ハイパーカーを運転することになったのだ。
アリエルのような小さな会社には、このようなクルマを作る能力はないはずだ。まるで別世界のようだった。一から作った新型で、世界でもあまり類を見ない革新的な電動スポーツカーであり、運転したわたしも息をのんだ。

この小さな「ハイパーカー」と、これを作った人々には感銘を覚えた。
そして、このクルマをつくった人たちの、驚くほどフレンドリーで紳士的な態度にも、また、「好きなように使ってください」といってクルマを渡してくれたことにも感銘を覚えた。「ここに、わたし達の未来があるのです。10年がかりで作ったもので、これ(1台)しかありませんが、気にしないで、楽しんでください」
ダミアン・スミス
年寄りにしては悪くない。まあ、47歳(当時)は年寄りじゃないかもしれないが。セバスチャン・ローブとわたしはほぼ同い年だ。1月のモンテカルロ・ラリーで8回目の優勝を果たした彼は、時間を巻き戻したかのように明らかに調子を上げている。
Mスポーツと新型フォード・プーマのコンビで若い世代を圧倒し、世界ラリー選手権80勝目とシトロエン以外での初勝利を達成したローブ。新しいラリー1規定の下で行われる最初のラリーで、こんな結果を誰が予想できただろう? ラリー1のレジェンド、セバスチャン・オジェが最終ステージでパンクし、スタートで飛び出したのは好材料だったが、それにしても。

47歳のセバスチャン・ローブはラリー・モンテカルロで優勝し、華麗なバク宙を披露した。
そして、50歳になる数学教師の友人イザベル・ガルミッシュがコ・ドライバーとして参加し、1997年以来の女性WRCウィナーとなった。ローブが得意のバク宙を披露したとき、わたしは2022年最高の瞬間が早くもやってきたと感じた。これを上回るものはなかった。
ウィル・ライメル
今年は僕にとって、初めてAUTOCARで仕事をした忙しい1年だった。ロンドンからブライトンまで走る旧車イベント「ベテラン・カー・ラン」に参加したことは1つのハイライトだが(この仕事は本当に素晴らしい扉を開いてくれる)、6年ぶりのブガッティの新型車を見られたことはちょっとした経験になった。
ベルリンの古い発電所(かつてのナイトクラブでもある……)で開催されたブガッティの発表会では、オープンカーのミストラルだけでなく、タイプ22、ヴェイロン・スーパースポーツ、シロンといった重要な3台が迎えてくれた。

今年からAUTOCARで仕事を開始。ブガッティに乗り、子供の頃の夢が叶った。
そしてその日、シロンだけでなく、ポスターのように美しいヴェイロンに乗ったことで、僕の子供の頃の夢が実現したのだ。しかし、その160万ポンド(約2億5000万円)のハイパーカーに座っているときに、あるデザイナーが言った言葉が頭に残っている。「いいでしょう?」
