米国内も人種差別の気風は残っているし、格差もある。移民に対する扱いも酷いものがあり、何よりトランプ前大統領支持派による議会乱入事件を見ても、米国も「人権問題の優等生」とは言えない。

 欧州のフランス、イギリスでも移民問題はくすぶる。

 新しい基軸として、森本さんは『QUAD』(クアッド、日米印豪4か国の連合)に注目する。

 インドはかつてネルー元首相が非同盟外交を進め、旧ソ連、今のロシアとも独自の関係を結んだ。中国とはカシミール地方で国境争いが続くが、インドは自由、民主主義といった価値観を欧米、日本とも共有している。

 日本はインドとは親密な関係。そうした国々と共に、民主主義の価値観外交を進める上で、「日本の役割は大きい。その役割を果たすべきです」と語る森本さんだ。

宇野康秀さんの挑戦者魂
『必要とされる存在』とは何か?

 企業の世界でも、この事が根底から問われようとしている。

 動画配信、音楽配信を主軸に医療機関向けの自動精算システムを開発したり、外国人労働者を受け入れる企業向け業務クラウドサービスを手がけるUSEN―NEXT HOLDINGS。社長の宇野康秀さん(1963年=昭和38年生まれ)は、社会に必要とされる存在であり続けるために、「変化を恐れてはいけない」という言葉をグループ社員に投げかける。

 1989年、25歳のとき、人材ビジネスのインテリジェンス(現パーソルキャリア)を設立。
 
 35歳になった1998年、父親が急逝。父の仕事を受け継いで、大阪有線放送(現USEN)の代表取締役に就任した。

 この間も、動画配信サービス事業を掘り起こそうと、無料動画配信サービス「Gyao!」を開始。

「レンタルビデオ店に出かけなくても、いずれ家で映画やアニメが見られる時代が来る」と予測し、映像配信サービスを始めた。しかし、時代の予測が早すぎたのか、U―NEXTの船出には苦労がつきまとった。

 この頃、業績が低迷し、2010年、USEN社長を辞任。U―NEXT社長に専念する。

 そして2017年、U―NEXTとUSENの経営統合を果たしたという経緯。コロナ危機下で、同社は増収増益を続け、2022年8月期も増収増益の見込み。

 いろいろな試練を経て、今日の「USEN―NEXT」をつくり上げたということである。

『人間万事塞翁が馬』
『人間万事塞翁が馬』─。宇野さんの座右の銘である。

 現在58歳の宇野さんは、ほぼ10年おきに試練を迎えた。起業家としての自分がありながら、父親の手がけた事業を引き継がざるをなくなり、新旧の事業を同時に手がける中で、いろいろな試練や挫折を味わった。

「悔しい思いもしました」と宇野さん。その悔しさを事業家としてのバネにしていく気力、パッション(情熱)を宇野さん自身が持っていたということであろう。

 静かな口調、落ち着いた物腰の中にも、前向きに生き、フロンティア精神をのぞかせる宇野さんだ。

 試練が人を鍛える。