6Gが動き始めた! 圧倒的な次世代通信で各社が「人間の能力の拡張」を目指す

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●6Gの足音が聞こえてきた
2020年に日本で5G通信が始まり、今年でもうすぐ3年目を迎えます。
5Gですら、まだまだ限定的な利用に留まっている感が強い現在ですが、通信各社はすでに次のモバイル通信技術である、5G evolutionや6Gを視野に入れた研究・開発をスタートさせています。
(5G evolutionは、6Gへの「つなぎの技術」として期待されている5Gの拡張技術)

5G evolutionや6Gとはどのような通信技術となり、私たちの生活はどのように変わっていくのでしょうか。
それを知るには、現在の通信技術の限界を知っておく必要があります。

例えば4Gでは、
・通信速度は最大1Gbps程度
・同時接続数は1平方kmあたり10万台
・通信遅延は最短10ミリ秒
このような性能でした。
当然ながら、これらの数字は理論値もしくは条件が揃った場合のみ可能な上限値です。

これが5Gでは、
・通信速度は最大20Gbps程度(4Gの20倍)
・同時接続数は1平方kmあたり100万台(4Gの10倍)
・通信遅延は最短1ミリ秒(4Gの10倍)
このような数値を目標として策定されました。
5Gでも圧倒的な通信性能を誇っていますが、5G evolutionや6Gではさらに挑戦的な数値を目標に研究が進められています。

・通信速度は最大100Gbps(4Gの100倍以上)
・同時接続数は1平方kmあたり1000万台(4Gの100倍)
・通信遅延は1ms以下で常時安定した低遅延性(4Gの10倍以上)
このように5Gをさらに超える通信性能に加え、

・超低消費電力
・超カバレッジ拡張(陸上カバー率100%)
・超高信頼通信(高いセキュリティと安全性)
こういった、これまでの通信技術が弱点としていたような性能にも注力しています。


モバイル通信技術は圧倒的なスケールへと進化していく



●6Gとは私たちの生活を大変革させるものである
それでは、なぜこのような超大なスケールの通信技術に各社は取り組んでいるのでしょうか。

その理由は、私たちが生活で消費する情報量や通信端末の増大にあります。

私たちは現在、15〜20年前には想像もできなかったほどにスマートフォンを駆使した生活をしています。
それはインターネット上のサービスやコンテンツをフル活用していることとほぼ同義です。

・SNS
・オンラインショッピング
・ストリーミング音楽配信
・動画視聴
・ゲーム
・ニュースサイトの閲覧
・電子マネー決済
このように、ありとあらゆる場面で通信は消費され、その通信量は毎年指数関数的に増加しているのです。

そして通信量の増加とともに懸念されているのが、通信デバイスの爆発的増加です。
それはスマートフォンやパソコン(PC)のような端末に限りません。
各種センサーを搭載したIoT機器が大量に生産・実用化され、社会基盤の隅々にまで利用されるようになりました。

その結果、通信量だけではなく通信端末の同時接続数までが激増し、同時多接続通信に強いとされる5Gですら、その限界が予想されるまでになっているのです。


1人1端末の時代は終わり、1人に対して数十台もの通信端末がセンシングや情報提供を行う時代が来ようとしている


それはもはや情報や通信技術と言うよりも、生活そのものの変革です。

圧倒的なセンシング技術やAIによるサポートを人々は常時活用し、仕事における遠隔作業や遠く離れた人々とのシームレスなコミュニケーションすらも可能になります。
それは現在の通信各社やMeta(元Facebook)などが目指す「メタバース」の概念を実現させるものでもあります。

まだスマートフォンが普及し始めたばかりの2010年頃の、私たち自身の生活を思い出してみてください。

私たちは携帯電話やスマートフォンでいつでもどこでもコミュニケーションが取れるようにはなっていましたが、
現在のようにオンラインサービスを多方面で活用し、SNSで常にコミュニケーションを取り合うような生活をしていたでしょうか。

さらに昔、2000年頃はどうでしょうか。
ようやくカメラ付き携帯電話が登場してきたばかりで、インターネットサービスでもNTTドコモが携帯電話向けの「限定的なネット接続サービス」であるiモードサービスを実用化したのが1999年でした。

はたして当時の私たちは、10年後や20年後の「今」を想像できていたでしょうか。

それと同じことが、現在の私たちにも言えます。
5G通信すらも活用しきれていない私たちは、6Gの世界というものを肌感覚で実感することができません。

かつて「携帯電話でインターネット?そんなもの必要なの?」と首を傾げていたように、
「IoTでセンシングしてAIで生活のサポート?そんなもの必要なの?」と首を傾げてしまうのです。

それでも、6Gの世界は確実にやってきます。
そしてそれは、私たちの生活にとって必要不可欠なものとなっていくのです。


人のあらゆる情報をセンシング技術でデータ化し、AIによって活用していく



●6Gで「さらなる人間の能力の拡張」を目指す
6Gとその関連技術は、もはや単なる通信技術とは言えません。
私たちの視覚や聴覚、触覚、そして思考力などを拡張する新たな手段と捉えるべきでしょう。

それは超能力やファンタジー小説に登場する魔法と大差のない技術とも言えます。
冗談のように聞こえますが、NTTドコモをはじめとした通信各社は本気で人間の能力の拡張を目指しているのです。


ネットワークが人間の能力を拡張する新たな器官として機能し始める


現在ですら、私たちは世界中のあらゆる情報に一瞬でアクセスし、そこで自分の考えを世界中に発信できるのです。必要であれば主要な言語に一瞬で翻訳することすら可能です。

それはすでに人の視覚や聴覚、思考力、言語力が拡張された世界と言い換えても過言ではありません。

人の感覚や思考力を圧倒的に上回る速度の通信技術が、さらに人の限界を広げていきます。
6Gの登場は2030年以降と言われていますが、その未来を生きる自分がどのような生活をしているのか、「今」から想像してみるのも面白いかも知れません。




執筆 秋吉 健