見た目も走りもすばらしい! ハンドリングが高く評価された往年のFF車3選

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優れたハンドリング性能のFF車を振り返る

 日本の自動車史のなかでFF車の歴史は意外と古く、1950年代には誕生していました。その後、1970年代には室内の広さでゆうりなことから小型車を中心にFF化が進み、以降は軽自動車から中型車までFFが主流となり、大型のモデルにまで普及して現在に至ります。

優れたハンドリングを実現した往年のFFモデルたち

 黎明期のFF車はまだ技術的にも成熟していなかったことから、ドライビングポジションやペダルレイアウト、操縦性や旋回性能については後輪駆動車の方が優れていました。

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 しかし、1980年代にはFF車の技術も大きく進歩し、ハンドリング性能とトラクション性能が一気に向上。スポーティなFFが数多く誕生し、ミドルクラス以下に属する後輪駆動のスポーツカーを凌駕するようになります。

 そこで、とくに足まわりの進化からハンドリングが高く評価された往年のFF車を、3車種ピックアップして紹介します。

●トヨタ「カローラレビン/スプリンタートレノ」

エンジン、シャシとも技術的には集大成といえる6代目「カローラレビン」

 トヨタは1972年に、2代目「カローラ」をベースとした大衆向けスポーツモデルとして初代「カローラレビン」と「スプリンタートレノ」を(以下、レビン/トレノ)を発売。

 オーバーフェンダーを装着した外観はレーシングカーをイメージさせ、トップグレードにはパワフルな1.6リッター直列4気筒DOHC「2T-G型」エンジンを搭載し、価格も手頃な設定としたことから若者を中心に絶大な人気を獲得しました。

 その後、レビン/トレノは初代のコンセプトのまま代を重ねて、常に走り好きな若者の心を捉え続ける存在となります。

 そして、大きな転期を迎えたのが1987年に登場した5代目で、時代の流れからレビン/トレノはFF化。一方で、ボディは初代に回帰したかのように、3ドアハッチバックは廃止され2ドアクーペのみとなりました。

 その後、1991年にはFF車として大きく進化した6代目がデビュー。外観は全体的に丸みを帯びたフォルムでホイールベースを延長し、全長・全幅ともに拡大し、好景気な世相を反映したかのように上級モデルのイメージに変貌します。

 バリエーションはパワーユニットによって大きく分けられ、最高出力105馬力の1.5リッター)と115馬力の1.6リッターのハイメカツインカムのほか、160馬力の1.6リッター5バルブDOHCと、170馬力を誇るスーパーチャージャー付「4A-GZ型」の4機種を設定。

 スポーティかつ装備が充実した「GT APEX」のフロントサスペンションには、新開発の「スーパーストラット」を設定。高い直進安定性と運動性能を高次元で両立する進化系のストラット式で、後に6代目セリカにも設定されました。

 また、スーパーストラット非装着車には電子制御サスペンションである「上下G感応型TEMS」をオプション設定するなど、ハンドリングへのこだわりは歴代随一です。

 6代目は1995年にフルモデルチェンジして7代目へ移行。スーパーストラットを継承し、国産FF車では初となるヘリカルLSDが標準装備されるなど、さらに足まわりは進化を果たしましたが2000年に生産を終え、レビン/トレノの歴史は幕を下ろしました。

●日産「プリメーラ」

FF車ハンドリング世界一を目指して開発された初代「プリメーラ」

 日産は1970年に同社初のFF車「チェリー」を発売。その後は「パルサー」や「サニー」、「マーチ」といった小型モデルを中心にFF化を進めました。

 そして、1990年にはセダンとしての基本性能を高め、優れたハンドリングのFF車を目指した初代「プリメーラ」が誕生。

 プリメーラは欧州市場での販売を主力とした世界戦略車で、走行性能や快適性、使い勝手の良さを高い次元でバランスさせることを目的に開発された新時代のベーシックセダンです。

 外観はシンプルなスタイルながら、欧州市場での競争力を意識したスポーティなデザインを採用。

 ボディサイズは全長4400mm×全幅1695 mm×全高1385mm、ホイールベースは2550mmと、日本の道路環境にも最適な設計とされ、室内も前後長に余裕を持ったことで前後席とも良好な居住性を確保しています。

 エンジンは1.8リッターと2リッターの直列4気筒DOHC自然吸気で、トップグレードの「2.0Te」には最高出力150馬力を発揮する、パワフルな2リッターのスポーツユニット「SR20DE型」を搭載。トランスミッションは5速MTと4速ATが設定されました。

 また、初代プリメーラ最大のハイライトである足まわりには、フロントに新開発のマルチリンク式、リアはパラレルリンクストラット式の4輪独立懸架を採用し、高い直進安定性と運動性能、乗り心地の良さと、多角的に優れた足まわりを実現。

 それまでの日産製FFセダンから大きく進化したプリメーラは見事に日本と欧州でヒットを記録し、コンセプトを継承して3代目まで代を重ね、2005年に国内向けの生産を終えてラインナップから消滅しました。

●三菱「FTO」

クラス最高レベルの2リッターV6NAエンジンとハンドリングを備えた「FTO」

 三菱のFF車の歴史は意外と浅く、1978年に誕生した初代「ミラージュ」からです。その後、クロカン車以外はFFもしくはFFベースの4WDが主力となります。

 そして、1994年には本格的なFFスポーツカーの「FTO」が登場。駆動方式はFFの2WDのみで、ボディタイプは2ドアクーペを採用し、ボリューム感のある曲線を多用したデザインと、ワイドトレッド、ショートホイールベースの美しいプロポーションが特徴です。

 さらに、運動性能を重視したことでフロントとリアのオーバーハングを必要最小限に切り詰め、ロー&ワイドな感覚を高めるため全高を抑えています。

 トップグレードには最高出力200馬力を誇る2リッターV型6気筒DOHC MIVECエンジンを搭載し、トランスミッションは5速MTに加え、4速AT/5速ATではドライバーの運転のクセを学習して最適なシフト制御をおこなう機能と、マニュアル感覚でシフトチェンジが楽しめる日本初のスポーツモードを採用しました。

 サスペンションはフロントがマクファーソンストラット、リアがマルチリンクの4輪独立懸架で、優れたセッティングによってFF車随一のコーナリング性能と評されました。

 また、トラクションコントロールシステムにはトレースコントロール機能とスリップコントロール機能を採用したことで、常に安全な走りを実現。

 FTOは「1994-1995 日本カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞するなど好調なセールスを記録するなど、多角的に高い評価を得ましたが、クーペ人気の低迷から2000年をもって一代限りで販売を終了。

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 前述のとおり今回紹介した3台は、レビン/トレノが次世代で、プリメーラが3代目、FTOは初代のみで消えてしまいました。

 メーカーの事情でラインナップを整理した経緯もありますが、最大の理由はユーザーニーズの変化ではないでしょうか。

 こうしたシャシ性能が優れたモデルは速さもさることながら、ドライビングの楽しさは格別であり、消滅したことが実に惜しまれるモデルといえるでしょう。