【時価総額で花王超え】資生堂・魚谷雅彦社長が進める「高付加価値化粧品」戦略
── 社長として、その間の社員の動きをどう見ていますか?
魚谷 はい。資生堂の社長に就任して8年目ですが、計画そのものに最終的なOKを出すのはわたしですが、あらゆることに社員がものすごい情熱をもって動いてくれるんです。
事業業績は厳しいけれども、結束力もあがり、この会社で仕事をしていく意義をみんな考えてくれるようになって心強く思います。そういう姿を見ていると、今度は逆に経営者であるわたしが、待てよ、しっかりしないと、と。そもそも論だなと。
最近の言葉でいうと、パーパスとかミッション、企業使命というものをもう1回きちんと見つめ直そうと思いました。
創業以来、当社はメセナ活動に積極的に取り組んできて、社会とのつながりや社会に価値を提供することを重要視してきたDNAがある会社です。
厳しい時期だからこそ、そうした経営の根幹を見直していこうと思ったわけです。
そうして、改めて、わたしが最も重要視している経営理念が「PEOPLE FIRST」(ピープル・ファースト)です。これに共感する社員が真ん中にいて起点となり、社会に対して良いことをしようと自発的に考え、色々な商品開発をしていく。そして、それに共感したお客様が商品を買ってくださり、売上や利益も伸びる。そこにまた取引先や得意先も共感し、出た利益は株主に還元、あるいは社員に配分されていく。すべての活動のスタートは社員ということを、わたしは「PEOPLE FIRST」と呼んでいるんです。
── 化粧品を扱っていることもあり、資生堂は女性活躍推進に積極的なイメージも強いですが、役員の女性比率は?
魚谷 取締役会の女性比率は46%になりました。執行役員は32%。それから日本国内の管理職は35%で、海外では50%を超えています。
国内の女性管理職比率は数年以内に50%という環境にしていきたいと思っています。
ダイバーシティ&インクルージョンを先行してリードするモデル企業、社会全体に貢献できる企業になることは、資生堂の使命として強く意識しています。
パーソナルケア事業の
事業譲渡を決断した背景
── 事業構造改革では日用品事業の売却も進めてきました。
魚谷 この件については2つの側面を、ぜひご理解賜わりたいと思っています。
1つは、単なる事業売却ではない、ということです。今回の本当の目的はこの事業に携わる社員に夢を持たせたいということなのです。これは、わたしがずっと言い続けてきたことです。
パーソナルケア事業は全体の売上の中の約10%、日本国内で売上高約500億円の事業ですが歴史が長く、1959年に事業が始まって93年には売上高1000億円を超える事業になりました。当時はお中元需要も強く、資生堂の石鹸『サボンドール』はわたしもよくいただきましたし、『スーパーマイルドシャンプー』、『TSUBAKI』のヒットもありました。
一方、この事業は広告宣伝費をすごくかけるので一見、目立つ事業ですが、残念ながら、近年、全体の中では売上がずっと伸び悩んでいました。
事業の再成長のために、さまざまな取り組みを行ってきましたが、一定の成果はあげたものの、グローバル企業との競争は一層厳しいものになりました。
それでも、わたしが最初に入社したのがライオン社なので、トイレタリー事業にはそれなりの知識と思い入れがあったので、専門部署として事業本部を作りました。パーソナルケア事業本部という事業部で、日本でも約200人の社員を配置しました。
