実は防大の卒業生は「はい」と答える人が圧倒的に多くて、シニア世代ではほぼ全員が再び入ると即答します。これはすごいことで、防大ですから、就職先が自衛隊であることも決まっているわけです。「それでもいいのか?」と聞いても「もちろん」と答えます。

 この理由を尋ねると、やはり同期と先輩・後輩の絆が一生固くつながるからだと。寮での集団生活や訓練は日本で最も厳しい大学生活だと思うけれど、仲間同士で同じ釜の飯を食べながら過ごした生活はかけがえのないものになっているんです。その意味でも、本当に防大は最高の学校だと思います。

 ―― この1年間、コロナ禍で大学も企業もリモートが増えてきましたが、やはり、人と人とが触れ合うことで感じることは多いですよね。

 國分 仰る通りです。やはり、これからはデジタルの世界にどんどん入っていかないといけないし、サイバーセキュリティなどへの対応はもっと早くしないといけないと思います。しかし、サイバー空間であっても、それを動かしているのは人です。人が生き、学校に行ったり、仕事をしたりするのも信頼関係が無かったら成り立ちませんよ。

 3月の卒業式でも話したのですが、わたしの人生の中で防大とその学生たちと出会えたことは、最大の喜びであり、幸せです。これは心から胸を張って言えることですよ。

 ―― 今年の卒業式が最後だったと思うのですが、具体的にどんな話をされたのですか。

 國分 それについては経緯があるのです。4年前の卒業式後の午餐会で、卒業生の家族を代表して、あるお母様がお話してくれました。実は、この方は今年2月に米アラバマ州で飛行訓練中に墜落死した一等空尉のお母様です。

 彼は防大生時代に大隊学生長という学生約400人のリーダーをやっていたので、時々飲み会などで一緒になることもあり、わたしも個人的に彼をよく知っていました。

 そのお母様はこの午餐会で、息子はまだ子供だと思っていたけれども、彼は防大に入って「命にかかわる親不孝とも思えるこの進路を応援してくれて感謝している」と語った話を紹介してくれたのでした。



生の崇高さを感じ取って…

 ―― 人の命にかかわる仕事に就く親不孝ですか。

 國分 ええ。非常に重い言葉ですね。彼は穏やかな中にも闘志を秘めた素晴らしい若者でした。ですから、訃報を聞いた後、わたしもお母様に電話を差し上げました。その時も、お母様は「覚悟はしていました。でも、早すぎた」と話されたのです。それを聞いて、わたしは言葉が詰まりました。

 一等空尉の死去のニュースに接したとき、わたしはそうかと。最後に防大で語るべきはここだなと思い、今年の卒業式は式辞の中であえて在任中に命を落とした人たちの話をしました。

 着任してまもなく山岳事故で尊い命を落とした学生がいました。滑落事故で亡くなったのですが、その彼を助けようとした陸曹も亡くなりました。彼などは新婚で、残された奥様のことを考えると言葉が出ません。

 フィリピンからの留学生も実家に一時帰国中、川で溺れた親族を救おうとして、逆に自身が犠牲になってしまいました。

 また、4年前に急性髄膜炎によって亡くなった学生がいて、本来、彼は今年の卒業式にいるはずだったのです。だから、ご両親から卒業式で帽子を投げてほしいと言われて、いちばん親しかった同級生に自分のと合わせて投げてもらいました。

  ―― 生きるということと同時に、死生観のようなものを感じさせる話ですね。

 國分 そうなんです。だから、わたしはこのように続けました。君たちはもう感づいているかもしれない。なぜ、わたしがこういう話をするかと言ったら、防大が一般の大学と違うところは、死について自然に触れる瞬間があるから。卒業式後、自衛官として「事に臨んでは危険を顧みず」と宣誓する君たちは、防大での教育と訓練を通じて死生観にも触れ、そこから生の崇高さを感じ取っているからだと。それを絶対に忘れるなよと語りました。

 そしたら、代表学生が答辞の中で、「志半ばに潰えた人たちのことも、われわれは忘れずに……」という言葉を入れていました。わたしの思いが少しでも彼らに伝わっているのかなと感激しましたが、そうした学生の感性もすごいですね。