「だから彼氏できないんだよ!」初対面の女に、男が衝撃的なセリフを放ったワケ
東京には、“出会いの引力”が働くバーがある。
同じ日、同じ時間、同じ場所に集う男女。
偶然となりに居合わせた人が、あなたの運命の人かもしれない…。
これは、出会えると噂の“東京のバー”で出会った男女のショートストーリー。
さて、今日出会った2人は…?
▶前回:「丸の内のエリートと付き合いたい…」女が狙い通りの男を見つけた方法とは

#3 P.C.M. パブ・カーディナル・マルノウチ
名前:マリカ(25)
仕事:日系大手通信会社
相手:和樹(25)・外資系金融機関勤務
金曜の20時、『P.C.M.』のバースペースで同期の女子と乾杯していると、今日も当然のように男性に話しかけられる。
「あ、2回目なんです♡」
本当は月2回は通っているが、がっついている女と見られたくなくて、マリカは息を吐くように嘘をつく。
「よかったら一緒に飲まない?同僚と来てるんだけど」
金曜ということもあり、店内は少し騒がしい。
真っ白なシャツがよく似合うその男性は、少し声を張り上げてそう告げると、マリカと泉が了承するや否や、テラス席へとエスコートしてくれた。
その隙に、泉にこっそり話しかける。
「あの人、外銀マンかな?しかも私のタイプ♡」
「そう?私にはちょっと顔濃すぎかな〜」
清楚風のミモレ丈ワンピースを翻し、ロジェ・ヴィヴィエのハイヒールをカツカツ言わせながら、マリカはテラス席へエスコートしてもらう。
タイプの男に話しかけられ浮かれ気分だったマリカだが、実は全く相手にされていなかったことに気づく!?
声をかけてきたサラリーマン風の男性は和樹・25歳だと自己紹介をしてきた。
「俺はすぐ近くにオフィスがあるから結構この店来るんだけど、マリカちゃんみたいに綺麗な子、初めて見たよ〜」
「またまたぁ〜」
軽口を叩き合いながら、開放感のあるテラス席で仕切り直しで和樹の同期も含めて4人で乾杯をした。
夏の夜のテラス席は少し暑くて、カーディガンを脱いでタイトなノースリーブのワンピース姿になる。
「で、和樹くんはどこで働いてるんですか?」
「え?近くにある金融系の会社…かな?」
早速相手の職業について聞き出そうとするマリカに対し和樹は苦笑いをする。
「え、この辺りってことは…ひょっとして外資系の銀行だったりします?」
「何でわかったの?鋭いねー、マリカちゃん」
―やった、外銀マン!
心の中でガッツポーズをする。
今夜はいい出会いがありそうだと喜んだのも束の間、和樹は泉と2人で勝手に盛り上がり始めてしまった。
2人は、慶應の同級生だったことが発覚したらしく、同級生トークで盛り上がってしまい、割り込める雰囲気ではない。

会社の同期の中でも、マリカの美貌は際立っていると自負している。
スタイルキープの緊張感を保つために常にボディーラインを意識した格好をし、髪の毛から指先まで全身のケアを怠らず、出会いの場にも積極的に参加している。
こんなに頑張っているのに、最近出会いの場に行っても自分じゃなくて一緒にいる友人に彼氏ができることばかりで自分に幸せがやってこない。
デートも数をこなしているが、思うようにその先が続かない。
―今日だって、なんで私じゃなくて泉と盛り上がってるの?
そんなことを考えて少し卑屈になったその時、和樹の同期の男が突然声をひそめた。
「ねぇ、横の2人いい感じじゃない?お互い相手取られちゃったね」
「…え?あなたも泉狙いだったの?」
2人とも地味な泉狙いだということに心底驚いた。
せっかく外銀マンと出会ったと思ったのに。地味な同期の女の方がモテるなんて…!?
今日泉を連れてきたのだって、本当は自分のほうが可愛いと思っているからだった。
ー泉より私の方がモテるはずなのになんで…?
第三者から指摘され、まさか、という思いで2人に目をやる。
「共通の話題で盛り上がってるだけじゃない。和樹くんだって、泉に気があるとは思えないけど」
負け惜しみ発言をするマリカに対して、男が畳み掛けるように言う。
「どう見ても狙ってるでしょ。ほら、見てみなよ」
確かに、和樹は先ほどマリカが会社名を聞いたときに見せた苦笑いではなく、本当に優しそうな顔で泉と話している。
それに2人の距離はさっきよりもずっと近くなっている。
ーはぁ、またか…。なんで、私じゃないんだろう。
悔しいような寂しいような気持ちでいっぱいになったが、こんな状況には慣れっこだ。
だから、すぐに気持ちを切り替えた。
目の前にいる和樹の同期の男に、鞍替えすることにしたのだ。
顔は和樹のほうがタイプだが、目の前の男だって外銀マンであることには違いないのだから。
「ところで、普段はどんな仕事してるんですか?」
「俺は主にM&A案件を担当してるから、忙しい時は立て続けに提案と出張があって大変だよ」
「すごい!やっぱり外銀は規模が違うね」
大げさに驚いてみせたあと、さらに突っ込んで聞いてみる。
「英語も結構できるの?留学経験とかあるの?」
マリカの質問に答える代わりに、彼の口から出た言葉は驚きのものだった。
「…なんかマリカちゃんって、外銀で働いてる人だったら誰でもいいとか思ってない?」
「そ、そんなつもりじゃないよ」
彼はそんなマリカを一瞥しこう言い放った。
「俺らのこと“外銀マン”としてしか見てない子、よくいるんだよね」
男の歯に衣着せぬ言葉が図星過ぎて、何も言えなくなった。

「まぁ俺らも、初対面だと女の子の顔だけ見て声かけてるから、お互い様だけどね。マリカちゃんも可愛い子なんだから、そんなに気張らなくてもいいんじゃない?」
「可愛いのはわかってるんだけどね…」
思わず憎まれ口を叩いてしまう。
「でも、私、手っ取り早く条件のいい彼氏を見つけたくて…」
開き直ったマリカは、目の前の男にポツリと本音を漏らす。
「ていうか、バレてました?私が外銀マン目当てなの」
彼は、ハハッと優しく笑いながら答える。
「バレバレだから!そんなんだと彼氏なんてできないよ。でも、まあそうやってすぐに認める素直なところは、可愛いと思うよ」
効率よく、いい男に出会うことを求め過ぎて…。逆に無駄なことばっかりやってたのかもしれない。今だって目の前にいる全くタイプでもない和樹の同期の男とやらに、無理やりアプローチしようとしていた。そんな自分に笑ってしまう。
「ねぇ、次なに飲む?」
「そうだなぁ、もう一杯ビールかな?」
肩の力が抜けたマリカは、仕切り直しで飲み直すことにした。
「かんぱーい」
婚活に気合が入りすぎて、いつの間にか男性を機械的に条件で判断する癖がついていたようだ。どうも最近上手くいってなかったのは、それが原因なのかもしれない。そのことを目の前の男に気付かされた。
バーでの出会いだって、一期一会。
もう一度初心に戻り、1つ1つの出会いを大切にしよう。
―自分を見て欲しいと思いながら、私はその人自身を見れてなかった。馬鹿だなぁ、私。
これからは出会う人、その人自身をきちんと見ようと一人小さく決心した。
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昼間だって出会いの場所はある。広尾のボンダイカフェで出会った2人

