見城徹「最高傑作ですよ!」林真理子著「葡萄が目にしみる」最終章の凄さを読み解く
禁酒法の時代に、こっそりひそかに経営していたBAR『SPEAKEASY』。2020年の東京の街にも、そんなひそかなバーが、まだあった。月曜から木曜の深夜1時にOPENするラジオの中のBAR『TOKYO SPEAKEASY』。各界の大物ゲストが訪れ、ここでしか話せないトークを展開するとか、しないとか……。
ここには、とんでもない俳優・女優・アーティスト・政治家、または起業家・メディアプロデューサーなどのスゴい方たちが訪れ、「ここでしか語れない」さまざまな話を繰り広げます。4月7日(火)のお客様は、小説家・エッセイストの林真理子さんと幻冬舎社長の見城徹さんです。

◆林真理子の高校時代
見城:(一作目「星影のステラ」の後)すぐさま、「君の日川高校時代のことを書け」と言って、「葡萄が目にしみる」っていうのを長編300枚ぐらいで書いてもらったんですよ。
林:あ、今日偶然だけど、文庫が重版かかったって知らせがきましたよ。このご時世にね、こんなにかかるなんて。
見城:だって「葡萄が目にしみる」っていうのは、君の……言っちゃ悪いけど“最高傑作”だもん。
林:本当!?
見城:うん。最高傑作ですよ。
林:あの……いまだに若い方なんかが読んでくださったり、若い作家の方があれを読みましたって言ってくれるのが嬉しい。
見城:あんな瑞々しい小説はなかなかないでしょ。
林:いやー、見城さんってやっぱり褒め方上手いわ!
見城:(笑)。いやだってそうでしょ。胸がキュンキュンするじゃない、恋した男への思いが。それでしかも片思いで。
林:片思いじゃないってば!
見城:片思いでしょ? あれ。
林:違いますよ! もうみんなが誤解して……モデルがいますから。
見城:だって、有名な日川高校卒業した後に早稲田かに行って、ラグビーのスポーツ選手で日本代表になって、大活躍する選手で。
林:スターですよ、スター。
見城:で、そんな男が君に?
林:失礼しちゃうわね!
見城:惚れるわけないじゃない(笑)。
林:そりゃそうですけど! だから、私は片思いっていうよりも、そのときこう観察者の目で彼のことを見ていたんだと思うの。
見城:だけどラグビーの、高校日本代表だよ? そのとき。
林:そう、凄かった。
見城:日川高校のスターだよ? その人が何で君に思いを寄せるの?
林:いや、思いを寄せるなんてことは全然……私は、“こういう人がいるんだ、凄いな”と思っていたわけよ。
見城:でも、“この人は私のものになるんだ”っていう。
林:ならないけども、いつか“対等”に。
見城:じゃあ片思いじゃない?
林:そんなんじゃない。もっと複雑なんですよ。
見城:どういう風に複雑?
林:だから、いつかもっと対等に話をしたいなっていう風に思ったの。それで、彼は早稲田から商社に行くわけ。私がバイトでまだくすんでた頃、銀座か新宿を歩いていたら、彼が凄い綺麗な奥さんとか、その商社の仲間と歩いていた。そのときは、まだまだ全然差があるなと思ったんだけど……。
見城:この話面白くて、林真理子の“文学性”っていうか、欠落したもの、または切なくそれをうずめたくてしょうがないもの、病気が全部出ているの。
林:病気じゃないから。だからちょっと“今は言いたくないな”“話したくないな”と思ったの。
見城:何で? 高校時代の大スターに会って、“まだ差がある……”とか、そんなこと普通思わないよ。
林:何か、みじめじゃん。そこで職もなく1人さまよっているんですもん。
見城:普通は思わないよ。そこが君なんだよ。
林:え、そうなの?
◆“最後の章”で意見が真っ二つに…
見城:「葡萄が目にしみる」って小説は、直木賞史上1番選考会がもめたときなんですよ。普通は8時とか8時半には結果が出るんだけど、もの凄く激論になって、結局10時過ぎに連絡がきたんだよね。そのとき、僕は君と一緒にいて、京王プラザの部屋で、もう待ちきれないというか、複雑な思いで待っていたわけだよ。
それで結局、君の受賞作にするか、もう1人と2作受賞にするかでもめていたところを、「そんなにもめるのだったら“受賞作なし”にしよう」と、ある選考委員が言って、なしになったんですよ。
林:えぇ。
見城:それだけの問題作だったんですよ。「葡萄が目にしみる」の最後の章が。「最後の章があるから“ダメだ”」って言う選考委員と、「最後の章があるからこれは良いんだ」って言うのとで、真っ二つに割れたんですよ。その最後の章っていうのは、今、君が言った通りの話ですよ。その小説のなかで、高校を卒業して何年かしてから会うわけですよ。君はもう作家としてかなり売れてるわけですよ。
林:いや、主人公の女性はアナウンサーで。
見城:その小説の主人公としてはアナウンサーという設定だけれども、それはもちろん君、“自分自身”なんですよ。それで、そのヒロインとヒーローがご飯を食べるシーンがあるんですよ、高校卒業してから。それが最後の章。高校のときがパチッと終わって、最終章になるともう大人になっている。お互いに頭角を現しているわけですよ。
そのときに、どこかのホテルでフランス料理をその人と食べるわけですよ。で、その食べていること自体がもう嬉しいわけですよ。自分は、昔に恋してた男と食べている、というよりも、“この人と同格になった”っていう思いが、君を満たすんだよ。で、えっとなんだ、牡蠣か何かを食べるんだよ、その小説で。
林:私も全然忘れていたな。よくそこまで覚えてくれて。
見城:それで最後は、“あなたも私も良かったね”って終わるんですよ、その小説では。でもそうじゃないんですよ。“私はあんたと同格になって良かったね”っていうことなんですよ。だから、君そのものが出ている小説なんです。それが文学なんですよ! 僕は、あれで直木賞を獲らなかったら“嘘だ”と思っているわけ。あれが1番、最高傑作ですよ。
その後、「最終便に間に合えば」と「京都まで」の2作で獲ったけど、それは「葡萄が目にしみる」があれだけ良かったから獲っているだけなんだから。と、俺は思っているんだけど違うかな。
林:私もちょっと意外でしたし、もっと良い作品もあったと思うけども……まぁね、現在は、ずっと直木賞の選考委員をやってますので。
見城:そうだよね、直木賞の選考委員だもんね。
林:はい。もはや1番の古株ですよ。
見城:そうなんだよね。凄いよね。だから同格なんてもんじゃないところまできたんだよね。
来週の「TOKYO SPEAKEASY」のお客様は……
4月20日(月):指原莉乃さん×若槻千夏さん
4月21日(火):大橋裕介さん×今泉力哉さん
4月22日(水):木村祐一さん×田口トモロヲさん
4月23日(木):古市憲寿さん×小倉智昭さん
がご来店。一体どんな話が飛び出すのか……!? お楽しみに!
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<番組概要>
番組名:TOKYO SPEAKEASY
放送日時:毎週月-木曜 25:00〜26:00
番組Webサイト: https://www.tfm.co.jp/speakeasy/
ここには、とんでもない俳優・女優・アーティスト・政治家、または起業家・メディアプロデューサーなどのスゴい方たちが訪れ、「ここでしか語れない」さまざまな話を繰り広げます。4月7日(火)のお客様は、小説家・エッセイストの林真理子さんと幻冬舎社長の見城徹さんです。

(左から)林真理子さん、見城徹さん
◆林真理子の高校時代
見城:(一作目「星影のステラ」の後)すぐさま、「君の日川高校時代のことを書け」と言って、「葡萄が目にしみる」っていうのを長編300枚ぐらいで書いてもらったんですよ。
林:あ、今日偶然だけど、文庫が重版かかったって知らせがきましたよ。このご時世にね、こんなにかかるなんて。
見城:だって「葡萄が目にしみる」っていうのは、君の……言っちゃ悪いけど“最高傑作”だもん。
林:本当!?
見城:うん。最高傑作ですよ。
林:あの……いまだに若い方なんかが読んでくださったり、若い作家の方があれを読みましたって言ってくれるのが嬉しい。
見城:あんな瑞々しい小説はなかなかないでしょ。
林:いやー、見城さんってやっぱり褒め方上手いわ!
見城:(笑)。いやだってそうでしょ。胸がキュンキュンするじゃない、恋した男への思いが。それでしかも片思いで。
林:片思いじゃないってば!
見城:片思いでしょ? あれ。
林:違いますよ! もうみんなが誤解して……モデルがいますから。
見城:だって、有名な日川高校卒業した後に早稲田かに行って、ラグビーのスポーツ選手で日本代表になって、大活躍する選手で。
林:スターですよ、スター。
見城:で、そんな男が君に?
林:失礼しちゃうわね!
見城:惚れるわけないじゃない(笑)。
林:そりゃそうですけど! だから、私は片思いっていうよりも、そのときこう観察者の目で彼のことを見ていたんだと思うの。
見城:だけどラグビーの、高校日本代表だよ? そのとき。
林:そう、凄かった。
見城:日川高校のスターだよ? その人が何で君に思いを寄せるの?
林:いや、思いを寄せるなんてことは全然……私は、“こういう人がいるんだ、凄いな”と思っていたわけよ。
見城:でも、“この人は私のものになるんだ”っていう。
林:ならないけども、いつか“対等”に。
見城:じゃあ片思いじゃない?
林:そんなんじゃない。もっと複雑なんですよ。
見城:どういう風に複雑?
林:だから、いつかもっと対等に話をしたいなっていう風に思ったの。それで、彼は早稲田から商社に行くわけ。私がバイトでまだくすんでた頃、銀座か新宿を歩いていたら、彼が凄い綺麗な奥さんとか、その商社の仲間と歩いていた。そのときは、まだまだ全然差があるなと思ったんだけど……。
見城:この話面白くて、林真理子の“文学性”っていうか、欠落したもの、または切なくそれをうずめたくてしょうがないもの、病気が全部出ているの。
林:病気じゃないから。だからちょっと“今は言いたくないな”“話したくないな”と思ったの。
見城:何で? 高校時代の大スターに会って、“まだ差がある……”とか、そんなこと普通思わないよ。
林:何か、みじめじゃん。そこで職もなく1人さまよっているんですもん。
見城:普通は思わないよ。そこが君なんだよ。
林:え、そうなの?
◆“最後の章”で意見が真っ二つに…
見城:「葡萄が目にしみる」って小説は、直木賞史上1番選考会がもめたときなんですよ。普通は8時とか8時半には結果が出るんだけど、もの凄く激論になって、結局10時過ぎに連絡がきたんだよね。そのとき、僕は君と一緒にいて、京王プラザの部屋で、もう待ちきれないというか、複雑な思いで待っていたわけだよ。
それで結局、君の受賞作にするか、もう1人と2作受賞にするかでもめていたところを、「そんなにもめるのだったら“受賞作なし”にしよう」と、ある選考委員が言って、なしになったんですよ。
林:えぇ。
見城:それだけの問題作だったんですよ。「葡萄が目にしみる」の最後の章が。「最後の章があるから“ダメだ”」って言う選考委員と、「最後の章があるからこれは良いんだ」って言うのとで、真っ二つに割れたんですよ。その最後の章っていうのは、今、君が言った通りの話ですよ。その小説のなかで、高校を卒業して何年かしてから会うわけですよ。君はもう作家としてかなり売れてるわけですよ。
林:いや、主人公の女性はアナウンサーで。
見城:その小説の主人公としてはアナウンサーという設定だけれども、それはもちろん君、“自分自身”なんですよ。それで、そのヒロインとヒーローがご飯を食べるシーンがあるんですよ、高校卒業してから。それが最後の章。高校のときがパチッと終わって、最終章になるともう大人になっている。お互いに頭角を現しているわけですよ。
そのときに、どこかのホテルでフランス料理をその人と食べるわけですよ。で、その食べていること自体がもう嬉しいわけですよ。自分は、昔に恋してた男と食べている、というよりも、“この人と同格になった”っていう思いが、君を満たすんだよ。で、えっとなんだ、牡蠣か何かを食べるんだよ、その小説で。
林:私も全然忘れていたな。よくそこまで覚えてくれて。
見城:それで最後は、“あなたも私も良かったね”って終わるんですよ、その小説では。でもそうじゃないんですよ。“私はあんたと同格になって良かったね”っていうことなんですよ。だから、君そのものが出ている小説なんです。それが文学なんですよ! 僕は、あれで直木賞を獲らなかったら“嘘だ”と思っているわけ。あれが1番、最高傑作ですよ。
その後、「最終便に間に合えば」と「京都まで」の2作で獲ったけど、それは「葡萄が目にしみる」があれだけ良かったから獲っているだけなんだから。と、俺は思っているんだけど違うかな。
林:私もちょっと意外でしたし、もっと良い作品もあったと思うけども……まぁね、現在は、ずっと直木賞の選考委員をやってますので。
見城:そうだよね、直木賞の選考委員だもんね。
林:はい。もはや1番の古株ですよ。
見城:そうなんだよね。凄いよね。だから同格なんてもんじゃないところまできたんだよね。
来週の「TOKYO SPEAKEASY」のお客様は……
4月20日(月):指原莉乃さん×若槻千夏さん
4月21日(火):大橋裕介さん×今泉力哉さん
4月22日(水):木村祐一さん×田口トモロヲさん
4月23日(木):古市憲寿さん×小倉智昭さん
がご来店。一体どんな話が飛び出すのか……!? お楽しみに!
▶▶この日の放送内容を「JFN PARK」でチェック! https://park.gsj.mobi/program/show/49902
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<番組概要>
番組名:TOKYO SPEAKEASY
放送日時:毎週月-木曜 25:00〜26:00
番組Webサイト: https://www.tfm.co.jp/speakeasy/
