婚活疲れ」に陥る人が後を絶たない。婚活事業を手掛ける有薗隼人氏は「誰かの後押しがないと決められない人が増えている。『今の婚活市場』では高望みになってしまう条件を前提にしている人が多い」という--。

※本稿は、有薗隼人『[婚活ビジネス]急成長のカラクリ』(扶桑社新書)の一部を再編集したものです。

写真=iStock.com/JNemchinova
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/JNemchinova

■結婚を決められない若者の心理

「ゆとり世代」と呼ばれる人たちには諸説ありますが、一般に、2002年度以降に小中学校に入学した世代、1987〜1996年頃に生まれた人たち(現在、23〜32歳くらいの人たち)を指すことが多いようです。ちょうど平成に差し掛かる頃に生まれた人たちのため、平成生まれ=ゆとり世代と捉える人も中にはいるのではないでしょうか。

もちろんすべてがそうとは言えませんが、この世代の特徴として、競争意識の低下や自主性の低下などが指摘されてきました。結果、仕事や恋愛において、優柔不断で決断ができない若者の増加につながっています。優柔不断な人の心理には3つの法則があります。

【優柔不断な人の心理 その1「決定回避の法則」】
ひとつ目が「決定回避の法則」です。これは、複数の選択肢が提示されると、どれが正しいのかを選択できないことを指します。例えば、デートでレストランに入ったとして、何を注文すればいいのかわからず、延々と悩んでしまうような人にあてはまります。相手によっては、そうしたはっきりしない様子を見てイライラさせてしまう場合もあるため、注意が必要です。

【優柔不断な人の心理 その2「現状維持の法則」】
2つ目が「現状維持の法則」です。多くの選択肢が与えられて迷いが生じたとき、新しいものを選択できず、結局これまでと同じ日常を選択してしまうことです。

【優柔不断な人の心理 その3「恐怖からの回避」】
そして3つ目が「恐怖からの回避」です。何かしらを選択しなければならない状況に陥ったとき、失敗するときのリスクを恐れて、「何も選ばない」という選択肢を取ることを示します。失敗することで、自分の価値が現状よりも下がると考えてしまうのでしょう。

■「今の関係が楽だからこのままでいい」

実際、私が話を聞いてきた人たちの中には、何度デートを重ねていても、「今の関係が楽だからこのままでいい」「告白することでこの関係が崩れたらどうしよう」と、選択を避ける人たちが多くいました。

婚活における優柔不断は、これまでの人生で決断をしてこなかったことと欲のなさが大きく影響していると思います。幼い頃から社会人になるまで、自分でリスクを取ってなんらかの選択をするという経験をしていない人が多いのかもしれません。

一般的に小学校、中学校までは公立、途中で私立に入るとしても親の方針が大きく影響していることが多く、自分で進学先を決めることはないでしょう。

また、大学全入時代と言われる最近では大学も義務教育に近いものと捉えられているため、一定以上のレベルに達していれば大学に進学することが無難という風潮があります。

■誰かに強い後押しを求めることも必要

一方で、進学校と呼ばれる学校では、高校卒業後に専門学校など職業に直結した進路を取るほうがリスキーだと反対されることもあります。選択の機会に恵まれずに育ってきた人が、大人になってから突然、人生を変える選択をできるのか。やはり難しいのではないでしょうか。

さらに、世の中の結婚しない男女に対するプレッシャーが少なくなってきていることも影響しています。「別に結婚しなくても生きていける」と考える人が増加しているのです。必死になって結婚しなくても現状維持で十分と考えているわけで、選択すること自体を避けてしまうのです。そういう人は、確かに無理に結婚せずともよいのかもしれません。

ただ、本音では誰かと結婚したいけど、優柔不断で決められないと悩んでいるのなら、誰かに後押しを求めることも必要ではないでしょうか。そうした時に結婚相談所の仲人さんもまた、強い味方になってくれるはずです。

■草食系男子は婚活市場で不利なのか?

2009年頃から「草食系男子」という言葉が世の中に浸透していきました。草食系男子とは、恋愛にも出世にも消極的な男子を指した言葉で、何事にも貪欲な「肉食系」男子とは真逆の性質を持ちます。草食系男子は、現代日本の豊かな生活の産物で、欲しいものは何でも手に入る環境におかれていたため、物欲が極端に低くなったと言えます。

私の父親世代では子だくさんな家庭が多く、兄弟姉妹が複数いました。その結果、親もひとりの子どもにばかり構ってはいられないため、子どもたちは自分の事は自分でやらなければならず、必然と自主性が必要とされました。私も3人兄弟で、基本的には自分のことは自分でやるよう教えられてきました。

しかし、最近はひとりっ子が多く、親がなんでもやってあげてしまう傾向があります。自ら進んで何かをしようとする子どもは年々少なくなりました。そうした競争性や自主性の低下が草食系男子の生まれた要因となっているのでしょう。

ちなみに、草食系男子が登場する前後には、運動会でも順位をつけるのをやめようとする動きがあるなど、他者との優劣をつける環境も低下しています。

■デートの段取り、会話内容もお膳立て

以前、ある相談所で話をうかがったところ、最近はデートの段取りから会話内容まですべてお膳立てしないと進まないという人が増えているようです。結果、自分からは次のデートに誘えないため、2回目につながりません。受け身のままでは交際すら難しいでしょう。

一方、草食系男子の無駄な争いを好まずガツガツしない姿は、恋愛面でも“癒やし効果”があるとして、確かに需要があります。

個人的な印象では、意見をストレートに伝える女性からすると、中には尻に敷いてうまくいく人もいるでしょうが、やはり草食系はじれったい。自らリードしてほしいと望む女性からは、肉食系のほうが好まれる傾向にあると思います。ただ、あまりに積極的に押されると引いてしまう、という女性もいますので、これもまた、マッチング次第と言えるでしょう。

草食系と肉食系。どちらにも共通して言えるのは、明らかに自分の領域を侵害してくる人は好かれないということです。

■高収入な相手を求めすぎて売れ残る負のスパイラル

結婚相手の希望年収が1000万円以上だった三高時代に比べて下がったとはいえ、三平が主流になったと言われる今も、男性に希望する年収は600万円程度と、いまだ高水準です。

現在、男性の平均年収は20代で349万円、30代で456万円、40代で572万円と言われており、年収が700万円を超える男性は、30代でたったの9.7%になるそうです(転職サービス「doda」平均年収2015)。当然、これらの統計では既婚者も含んだ数値を出しているため、結婚対象となる未婚男性だけに限定すれば、さらに少数になるでしょう。

また、事前に年収を確認する手段はそもそもありません。合コンや結婚相談所、アプリで提示されている年収はあくまでも自己申告であって、虚偽の申告をしていないとは限らないのです。収入証明を提出する結婚相談所もありますが、チェックされるのは直近の1年のみなので、意図的に残業を重ねて年収を高く見せる手法もあるそうです。

付き合う前に、給与明細を確認しておきたい女性も少なくないでしょう。しかし、デートのたびに収入の話をするような女性は敬遠されがちです。実際、年収が高い男性には多くの女性がアプローチをかけてきます。男性側としても、「またお金目当てか……」とゲンナリされる可能性も高いのです。

■理想が高くなくても「高望み」になる現実

現在の婚活市場は、男性の買い手市場だと言われています。かつては、男性が余っている状態だった結婚相談所は今や、女性で溢れかえっているのです。婚活パーティーも女性が先に満席になることも少なくありません。

婚活市場に出てきている男性が少ない上に、好条件な男性の取り合いになるため、結婚相談所などでは、お見合いを申し込んでも会うことすらできなかった、という事態が多分にあります。結婚できないのは「理想が高すぎるから」と言われてしまいますが、今は違います。決して高望みではない条件のはずなのに、「今の婚活市場」では高望みになってしまうのです。

これは高い理想を掲げたアラフォー世代に多いのですが、相談所でたくさんの人と出会えたら、それだけ結婚に近づくと思っている人もいます。

お互い結婚相手を求めて相談所に来ているのですから、10人以上の人とお見合いして無理だったのなら、自分に原因があると考えるのが普通です。しかし、なかなか自分を客観的に見られる人は少ないように思います。

婚活をやめられなくなる負のループ

ほとんどの方が、「今いる相談所が悪い」と結論づけて、別の相談所に移っていく。

有薗隼人『[婚活ビジネス]急成長のカラクリ』(扶桑社新書)

確かに、相談所は理想の相手を探してくれますが、そこでゴールできるかは最終的には自分の魅力にかかっています。そこが理解できない人ほど、結婚できない要因を外部に求めてしまうのです。

そもそも、結婚相談所は慈善事業でもなんでもありません。入会費や年会費を合せたら、50万円を超えることはざらです。実際に、何社もの相談所をハシゴした方もいましたが、100万円以上のお金をドブに捨てたようなものです。

そうしているうちにも、毎年1歳、2歳と歳をとります。「初めのころに紹介された男性のほうがよかったな」と振り返った頃には、「ここで婚活をやめたら結婚できなくなるかも」と焦り、さらに婚活がやめられなくなります。

自分を追い込んでまでする婚活は、辛(つら)くなるだけです。「年収」というフィルターをいったん外してみると、また違った視点で男性を見られるかもしれません。

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有薗 隼人(ありぞの・はやと)
GEAR代表取締役
青山学院大学卒業後、新卒でGMOインターネット株式会社に入社。2011年に株式会社GEARを設立。2017年より婚活事業への取り組みを開始。婚活情報ポータルサイト「ミラコロ」や結婚相談所「ミラージュ」の企画・運営を手がける。
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(GEAR代表取締役 有薗 隼人)