新東名高速のSAで、「前向き駐車」を前提としていた駐車マスが、「バック駐車」を前提としたものに引き直されました。事故が起こっていたほか、「バック駐車のほうが停めやすい」という意見を受けてのことです。

「前向き駐車用」を「バック駐車用」に全面変更

 NEXCO中日本が新東名高速の静岡SA(上り)、浜松SA(上り)で進めてきた駐車マスの増設工事が、2019年12月25日(水)に完了しました。これにあわせ、一般的な乗用車が使う小型車用駐車マスの向きが、従来のものとは全く逆の方向に引き直されています。

 これまで両SAの小型車マスは、通路の進行方向に対し、両サイドの「斜め前方」へ向かって引かれており、前進で駐車マスへ入る前向き駐車を想定したレイアウトになっていました。これを両サイドともすべて「斜め後ろ」に引き直し、バックで駐車マスへ入ることを想定したレイアウトに改めたのです。


高速道路SA駐車場のイメージ。進行方向の左側は前向きで、右側はバックで入る方式がよく見られる(画像:PIXTA)

 これまで、両SAの小型車マスが前向き駐車用のみだったことには、SAの構造も関係しています。NEXCO中日本は次のように話します。

「一般的なSAの駐車場は一方通行で、駐車区画の端まで行くと戻れない構造ですが、今回の両SAは、ひとつの通路を端まで行っても、隣の通路に移って戻ることができる『周回型』となっています。その構造上、駐車マスを通路に対し斜め前方に引く形で、頭からかんたんに停められるレイアウトにしていました」(NEXCO中日本)

 ところが、両SAの小型車マスは駐車車両の前方に歩行者用通路があるため、「前から入って前から出る」ことができない構造で、出庫時にバックするクルマどうしの事故が発生していたそうです。たとえば通路を挟んだ向かい側の駐車マスからも同時に出庫する車両があると、ルームミラーにも映りにくく、お互いを確認できないまま衝突することも考えられるでしょう。このため、駐車方法を「バック駐車・前進出庫」に改めたといいます。

「バックのほうが停めやすい」という声も受けて

 今回の前向き駐車からバック駐車への変更は、「バックのほうが停めやすい」という利用者の声も反映しているそうです。

 フジドライビングスクール(東京都世田谷区)の田中さんによると、バック駐車のほうが結果的に楽なケースも多いといいます。バックで駐車マスに入れる場合、前後に動く後輪を基軸に、ハンドル操作で方向を変えられる前輪があとから追随する形になるので「後輪さえ駐車マスに入っていれば、広いところでいくらでも切り返せます」とのこと。狭いスペースでも駐車がしやすく、そして出庫時は、前進ですんなり出られるわけです。

 加えてNEXCO中日本は、駐車マスが斜めになっていることで、「バック時もルームミラーに駐車マスの端まで映りやすく、直角配置の駐車マスよりもバック駐車が容易でしょう」と話します。


改良前の静岡SA上りと同じ構造の静岡SA下り小型車エリア。車両は前向きで駐車している(2019年9月、乗りものニュース編集部撮影)。

 ちなみに、今回の静岡SA(上り)と浜松SA(上り)の小型車用駐車場は前述のとおり、通路ごとに進行方向を変え、周回可能な構造になっていましたが、今回の改良にともないUターン路が一本に絞られました。従来構造では、「進行方向を誤り逆走してしまう」という意見があったそうです。