U-18高校日本代表、甲子園優勝校・履正社から代表選出ゼロの理由

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 高校野球界の、ある強豪校の監督はかつて、甲子園決勝戦前のミーティングで、こんな話をしてナインの闘志に火をつけたと伝えられています。

 「お前ら、日本一高い山はどこか、分かるか。そうだ。富士山だ。子供でも全員知っている。じゃあ、二番目に高い山はどこか、知っているか」

 シーンと静まりかえるミーティング会場。指揮官はこうたたみかけます。

 「二番目は南アルプスにある北岳だ。でも、世間のほとんどの人はその事実を知らない。これが現実だ。いいか、甲子園の優勝チームは何十年経っても記憶されるが、準優勝校はなかなか覚えてもらえない。それぐらいの差があるんだ。俺たちは頂点に立って、語り継がれるチームになろう」

 気合をみなぎらせたナインはそのまま頂点に駆け上がったそうです。確かに優勝校と準優勝校の「扱い」には大きな差がある…はずでした。しかし、ここ二年は「異変」が起きています。

履正社も選んであげてよ!U-18W杯・高校日本代表「甲子園優勝校からゼロ」の怪


 100回大会で空前の盛り上がりを見せた昨夏の甲子園。決勝戦翌日の在京スポーツ新聞1面はほとんどが、準優勝に終わった金足農業の吉田輝星投手をフィーチャーしたものでした。

 今年はどうか。これまた優勝した履正社よりも、ドラフトの目玉候補となるエース・奥川恭伸投手を擁する星稜が大きな話題になったことは否めません。

 ある在京スポーツ新聞の記者はこう語ります。

 「敗者も輝けるのが高校野球のいいところ。スポーツ各紙の東京本社版が準優勝の星稜になったのは自然なことでしょう。奥川は間違いなく今大会の主役でしたし、甲子園が終わってもU−18やドラフトもあるので、物語が続いていく。松井秀喜さんが星稜ナインに送ったメッセージが素晴らしかったことも、1面にする上ではだめ押しの要素でした。今のスポーツ各紙の幹部クラスはみんな、松井秀喜が大好きですからね」

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4番の井上広大外野手は高校通算49本

 それにしても−。全出場校の頂点に立った履正社への配慮がなさ過ぎるのではないか?

そう話題になったのは、U‐18日本代表のメンバー選出についてです。何と全国制覇した強打のチームから、侍ジャパンに選ばれた選手は「ゼロ」だったからです。

 いやいや。日の丸を背負うに相応しい若武者は履正社に何人もいました。例えば、満場一致で選ばれる資格があるのは4番の井上広大外野手です。

 決勝戦では奥川から1点ビハインドの3回、左中間にへ逆転3ランをかっ飛ばしました。今大会は通算14打点とチャンスにめっぽう強く、大阪大会では4本、甲子園では3本をマーク。高校通算49号で、秋の国体では「50号」の大台到達が期待されます。

 こんなすごい打者がなぜ、漏れてしまったのでしょうか。ポイントは選出時期にありそうです。

選出時期は?

 日本高野連から高校日本代表の全20選手が発表されたのは8月20日。決勝戦の2日前です。つまり、全国制覇した高校がどこなのか、Vに貢献した選手は誰なのかは、全く選考に加味されていないのです。

 むしろ、スケジュール調整などを考慮すれば、かなり早い段階で「内定」が各校に通達されていたと考えた方が自然かもしれません。

 これでは、高校球界の頂点に立った履正社ナインは浮かばれません。侍ジャパンに選出されることは、今後の人生へ多くのメリットをもたらすからです。

 全国から集った精鋭達と数週間、同じ釜のメシを食う。グラウンド内はもちろん、異国での共同生活を経て、絆は深まります。進路はプロでも進学でも社会人でも、日の丸を背負って絶対に負けられない戦いに臨んだ者同士、強い友情が芽生え、ネットワークが構築されます。

 スカウト陣も木製バットへの対応を最終チェックするため、緊張感漂う一戦でバットが火を噴けば、指名順位がワンランク上昇することも可能です。

 韓国の地で善戦を繰り広げている高校日本代表に難癖をつける気はありませんが、やはり「全国制覇校から選出ゼロ」は不可解な印象を与えていることは事実でしょう。

 日の丸を背負うのは高校野球に打ち込む全ての若者の夢。だからこそ、「なぜ?」のクエスチョンマークとは無縁の、実力至上主義で選出してほしいものです。

※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]