昨年のGI有馬記念(2016年12月25日/中山・芝2500m)で死闘を繰り広げた(※)サトノダイヤモンド(牡4歳)とキタサンブラック(牡5歳)。2頭の”再戦”となるGI天皇賞・春(4月30日/京都・芝3200m)は、他馬が付け入る隙がないほどの一騎打ちムードにある。まさしく「2強対決」と呼ぶにふさわしい状況だ。
※昨年の有馬記念では、サトノダイヤモンドが先に抜け出したキタサンブラックをゴール前で捉えてクビ差で勝利した。

 2頭とも菊花賞馬であり、距離や折り合い、戦法やコースに不安はない。キタサンブラックは昨年の覇者でもあり、休み明けで挑んだ前走のGI大阪杯(4月2日/阪神・芝2000m)も難なく勝利している。サトノダイヤモンドも休み明けで前哨戦となるGII阪神大賞典(3月19日/阪神・芝3000m)を快勝。それぞれ、崩れるケースを想像するのは難しい。

 だが、このレースの歴史を振り返ってみると、「2強」を絶対視することはできなくなる。

 まず、同レースにおいて1、2番人気の2頭で決着したのは、2006年(1着ディープインパクト、2着リンカーン)まで遡(さかのぼ)らなければならない。そもそも1番人気自体、この年以降は勝っておらず、過去10年では2008年にアサクサキングスが3着に入ったのみ。”本命馬”にとっては、極めて鬼門と言えるGIだ。

 さらに、天皇賞・春においては「2強」で決着することは少ない。戦前に「2強対決」と言われたレースでは、おおよそ2頭のどちらかが馬群に沈んできた。

 古くは、1992年。トウカイテイオーとメジロマックイーンの「2強対決」は、2番人気メジロマックイーンが勝利したものの、1番人気トウカイテイオーは5着に敗れた。

 1996年もそうだ。前哨戦の阪神大賞典で3着以下を9馬身も離してマッチレースを演じた、ナリタブライアンとマヤノトップガンの「2強」の再戦に注目が集まったが、1番人気のナリタブライアンは2着、2番人気のマヤノトップガンは5着に終わった。

 その2年後の1998年も、大方の予想は阪神大賞典でしのぎを削ったメジロブライトとシルクジャスティスによるマッチレースの再現だった。ところが、メジロブライト(2番人気)が戴冠を果たしたものの、ライバルのシルクジャスティス(1番人気)は4着にとどまった。

 近年もそうした傾向にあって、2013年には1番人気ゴールドシップと2番人気フェノーメノが他馬の単勝オッズとは大きな差をつけながら、フェノーメノが勝利を飾る一方で、ゴールドシップは5着に敗れて「2強」の明暗が分かれた。

 また、2015年も単勝オッズこそ上位4頭が接近していたものの、実質的には1番人気キズナと2番人気ゴールドシップによる「2強対決」と見られていた。しかしこれまた、栄冠を手にしたゴールドシップに対して、キズナは7着と完敗を喫した。

 そうそうたる名馬たちが「2強」を形成しながらすんなり決まらないのが、天皇賞・春。ならば、今年もどちらかが崩れるとみて、「2強」に割って入る伏兵を探してみたい。歴史を踏まえれば、それこそ、現実的な発想と言えるのではないだろうか。

 そこで、ヒントとなるのは、過去の「2強対決」で台頭した馬である。なるべく最近の傾向をつかむことを考えれば、2013年と2015年のレースを参考にしてみたい。

 2013年は2番人気フェノーメノが勝利したが、2着は3番人気のトーセンラーが入った。3番人気とはいえ、単勝オッズは13.6倍と上位2頭からは大きく離されていた。そういう意味では、番狂わせと捉えてもいいだろう。

 当時5歳だったトーセンラーは、3歳秋のGI菊花賞(京都・芝3000m)で3着と好走。京都での長距離戦における適性を示していたと言えよう。

 これと似たタイプを今年のメンバーから探してみると、1頭の馬が候補に挙がる。レインボーライン(牡4歳)だ。

 同馬は、昨年の菊花賞(2016年10月23日)でサトノダイヤモンドの2着と奮闘。京都での長距離戦に適性があることを示している。さらにその後、古馬相手のGIジャパンC(2016年11月27日/東京・芝2400m)でも、6着ながら勝ったキタサンブラックにコンマ6秒差と健闘し、トップクラス相手にも戦える地力があることを証明した。

 ジャパンC後は休養に入って、年明け初戦のGII日経賞(3月25日/中山・芝2500m)は4着に敗れたが、そこを叩いて状態は上向き。古馬となって、心身ともに成長したレインボーラインが、「2強」の一角を崩しても不思議ではない。

 続いて、2015年は2番人気のゴールドシップが快勝したが、2着に7番人気のフェイムゲームが飛び込んで波乱を演出した。それまでにGIIIダイヤモンドS(東京・芝3400m)を連覇するなど、生粋のステイヤーだったフェイムゲーム。たとえ格下の評価であっても、距離適性に秀でるタイプは狙ったほうがいいだろう。

 そこで面白いのが、アルバート(牡6歳)だ。


長距離戦の適性ではピカイチのアルバート こちらもGIIステイヤーズS(中山・芝3600m)を連覇し、前走はダイヤモンドS(2月18日)を制してこの舞台に挑む長距離巧者。昨年の天皇賞・春では6着に敗れており、「一線級には通用しない」と見る向きもあるだろうが、フェイムゲームも初参戦となった4歳時の天皇賞・春では6着に敗れ、翌年2度目の挑戦で2着となって「2強」崩しを実現した。アルバートが激走する可能性は大いにある。

 最後に、今年の「2強対決」に似た1996年を例にして穴馬をピックアップしてみたい。当時の「2強」だったナリタブライアンとマヤノトップガンはともに菊花賞を制して、距離面で問題を抱えていなかった。前述したとおり、前哨戦でも熱戦を演じてまったくと言っていいほど、どちらにも不安は見当たらなかった。

 にもかかわらず、「2強」は崩れた。しかも、頂点に立ったのも「2強」以外の馬だった。圧巻のレースで「2強」を退けたのは、離れた3番人気(単勝14.5倍)のサクラローレルだった。

 サクラローレルは、当時5歳ながら骨折による1年の休養などがあり、まだ伸び盛りの馬だった。およそ1年の休養明けでGII中山記念(中山・芝1800m)を制すと、その勢いのまま、衝撃のGI初制覇を遂げてしまったのだ。

 ちなみに、サクラローレルはその後、年末の有馬記念も制して、その年の年度代表馬となった。

 そんなサクラローレルの再現を期待したくなるのが、シャケトラ(牡4歳)である。

 デビューが昨年6月と遅かったため、まだキャリアは6戦。前走の日経賞で初の重賞制覇を飾った活きのいい有望株である。それでも、「さすがに今回は”2強”にはかなわない」というのが一般的な見解だろうが、サクラローレルも当時はそうした評価だった。チャンスは十分にある。

 シャケトラもおそらく3番人気ぐらいの評価だろうが、1着狙いの馬券で考えれば、的中したときには高配当が望める。とすれば、シャケトラの大金星を狙ってみるのも悪くはないだろう。「2強対決」に沸く今年の天皇賞・春。伝統の長距離戦において、両雄が力どおりの結果を見せるのか。それとも、「2強は崩れる」歴史が再び繰り返されるのか。新緑の中、現役最強馬を決する戦いがまもなく始まる。

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