「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」。今回の漢字は「汁」、「果汁」の「汁」。暦の上では春ですが、まだまだ温かい汁物が恋しい季節です。



「汁」という字はさんずいに漢数字の「十」と書きます。

祭祀に用いる香りのついたお酒のことを、「汁」に「献上する」の「献」と書いて「汁献(しゅうけん)」と呼びますが、これは、お酒に香りをつける草のほか、多くのものをまぜて作ります。

そこから、「汁」とはものの混じる液体、あるいは漢数字の「十」が「まとまった」「多くの」という意味をもつことから、具沢山の液体を「汁」という漢字で表すようになりました。

火を扱えるようになり、土器を作り出したいにしえの人たち。

寒い一日のしめくくりには、秋に収穫した穀物や加工して保存しておいた肉や山菜を煮込みます。

冷めないうちにいただけば、凍えたからだがほどけてゆるむ。

心もゆったり広がって、なごやかな空気を運んでくる。

それは、古今東西変わることのない、幸福な食卓の風景です。

土地柄がにじみ出るのも、汁ものの特徴。

三平汁にせんべい汁、けんちん汁にさつま汁。

口にしたとたん、ふるさとや家族の記憶が呼び覚まされて、肩の力がすうっとぬけていきます。

世界各地の汁物、スープの歴史をたどってみれば、心身の回復や安らぎをもたらす薬としての役割を担っていたことも。

こってりしたおかずには、出汁が主役のやさしい薄味。

汗をかいた一日の終わりには、いつもより少し濃いめの味。

汁物は出汁だけでなく、作り手の愛情がしっかりきいています。

ではここで、もう一度「汁」という字を感じてみてください。

かつて「汁」とは、神前に供える祭祀用のお酒を意味する漢字でもありました。

そのなりたちを知りつつ飲みたいお酒が「立春朝絞り」。

春を迎えるめでたい立春の日に飲む祝い酒で、立春前日の節分の夜から一晩中もろみを搾り続け、立春の早朝に搾りあがったばかりの特別な一品です。

新鮮な生酒、しかも原酒といえば、ふだんは酒蔵でしか味わえません。

でも「立春生絞り」の出荷日は、地元の酒屋さんたちが蔵元へ駆けつけ、総出でお手伝い。

神社でご祈祷をうけて、その日のうちに店頭へ並びます。

華やかな香りと、躍動感あふれる味わいが楽しめる地元限定「立春朝絞り」。

縁起のいいお酒で春の訪れを寿げば、「立春大吉」、よき事の多い一年の始まりです。

漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。

その想いを受けとって、感じてみたら……、

ほら、今日一日が違って見えるはず。

*参考文献

『常用字解 第二版』(白川静/著 平凡社)

『【日本全国】絶品 汁物ブック』(清絢/監修 東京書籍)

『スープの歴史 <「食」の図書館>』(ジャネット・クラークソン/著 富永佐知子/訳 原書房)

2月11日の放送では「晴」に込められた物語を紹介します。お楽しみに。

<番組概要>

番組名:「感じて、漢字の世界」

放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国38局ネット

放送日時 :TOKYO FMは毎週土曜7:20〜7:30(JFN各局の放送時間は番組Webサイトでご確認ください)

パーソナリティ:山根基世

番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/kanji/



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聴取期限 2017年2月11日 AM 4:59 まで

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