Adobeでは製品化のためのアイデアを社員から募っていて、そのために1000ドル(約12万円)のプリペイド式クレジットカードを入れた箱を社員に配布する「Kickbox」という仕組みを採用しています。この内容はオープンソースで公開されていて、どんな組織でも導入することができます。

Adobe Kickbox

https://kickbox.adobe.com/what-is-kickbox



◆1000ドルを配布する「Kickbox」とは一体何なのか?

Kickboxでは従業員1人1人にアイデア考案に必要なものが詰め込まれた「レッドボックス」が配布され、レッドボックスの中にはアイデアを実現するための資金として「1000ドルの残高が入ったプリペイド式のクレジットカード」と、アイデアを実現するために社員が終える必要のある6段階の内容が書かれた「チェックリスト」、アイデアの考案を補助するスコアカードなどの「イノベーションツール」、イノベーターの必需品である「砂糖とカフェイン」として、スターバックス・ギフトカードとキャンディバーが入っています。さらに、チェックリストの6段階の水準をクリアすることができた社員は「ブルーボックス」を入手できるのですが、ブルーボックスの中身はプロジェクトによって異なります。



◆Kickboxの仕組み

Kickboxを開始するには、印刷可能なレッドボックスとブルーボックスのファイルをダウンロードします。レッドボックスの中身はプロジェクトに関係なく全て同じなので、まずはレッドボックスを組み立てて必要なものを入れて配布すれば始めることができます。クレジットカードやギフトカード以外にも、レッドボックスプロジェクトを進めていく中でダウンロードするツールも存在します。レッドボックスのプロジェクトを開始した人は、「アクション」と呼ばれる6段階のレベルをクリアしていくことになり、6つのアクションは以下のような内容です。

・レベル1:始まり

・レベル2:概念化

・レベル3:改善

・レベル4:調査

・レベル5:反復

・レベル6:浸透



それぞれのレベルにはクリアするためのステップが複数項目設けられています。例えば「レベル1:始まり」のアクションには、1〜4のステップが設けられており、Kickboxについて、アイデアを実現するための「モチベーション」の重要性、成功したイノベーターの5つの共通点といった説明やムービーが書かれています。それぞれの説明やムービーの内容を理解することで次のステップに進むことができ、「レベル1:始まり」をクリアすると、自分が実現したいアイデアの「真の目的」が明確になるわけです。

各アクションの指示や、各ステップの詳細、必要な素材は以下のウェブサイトに設置されており、レッドボックスを受け取った人は「Start Workshop」をクリックしてプロジェクトを開始することが可能です。全てのアクションを完了できれば、自身のアイデアの悪い部分などが洗練され、製品化可能なレベルへと進化していくようになります。

Kickbox | Adobe Kickbox

https://kickbox.adobe.com/workshop/kickbox/



◆ブルーボックスとは?

全てのアクションをクリアした暁には、ブルーボックスをゲットすることになりますが、ブルーボックスは人によって内容が異なり、形になったアイデアを製品化するための初期サポートや、デザインおよびマーケティングに関するヘルプなどのリソースが入っています。ブルーボックスにもクリアするべき4つのアクションが用意されており、最後となるレベル4は、エンドユーザー向けにベータ版を提供することにあたります。



なお、KickboxはAdobeがこれまで培ってきた30年間のイノベーション成功例に基づいて作成されたものであり、Adobeは世界中で1000人以上の従業員にレッドボックスを配布していますが、実際に大きな効果を挙げているとのこと。1000ドルもの金額を社員にばらまいてもコストを回収できるという、他にはないアイデア収集の仕組みをAdobeは実現しているわけです。一方で、導入を検討している組織からの質問では「本当に1000ドルを箱に入れないとダメですか?」という内容が最も多いとのことですが、これに対してAdobeは、以下の3つを理由に挙げて返答しています。

1:社員がアイデア実現に必要な資金を、その都度経費プロセスにかけて計上するより、あらかじめクレジットカードを渡しておくことでできる限りの摩耗を軽減できる

2:「箱の中にクレジットカードを入れる」という行為自体が「雇用主が社員を信頼している」ということを示すデモンストレーションになり、信頼が組織の技術革新を促進させる

3:金額を固定して渡すことが、予算内で製品を作る経験となる。クレジットカードの残高が枯渇した場合は、さらなる予算に見合うアイデアを組織に対して売り込む機会になる