いつ頃からだろう、食べることを主題とする文芸作品が目立つようになったのは。もちろん昔から食にまつわる作品はある。昨今の作品の特徴は、食べることを通じて、他者と緩くつながったり、登場人物が癒(いや)されたり、あるいはかれらの人生をそっと後押しする内容にある。登場する食事も、手間隙(ひま)をかけて作られたものが多く、作り手のケアの証(あかし)のようだ。本書は、こうした「癒しとしての食」とも呼べる作