2007年に放映された人気ドラマ「ハケンの品格」は、当時おおいに話題になった。

 主人公は、篠原涼子演ずる大前春子。きわめて有能だが、徹底した一匹狼で、会社の飲み会に参加するどころか、携帯電話の番号すら誰にも教えない。いつも無口でニコりともしない春子はクールともいえるが、メンタルヘルス面は少しばかり心配だ。

 春子は1973年生まれ。つまり、今年35歳だ。1995年に大学を卒業した彼女は、就職氷河期に遭遇している。難関をくぐりぬけて最初に就職したのは、信託銀行。ところが経営統合でリストラの憂き目に遭い、その後勤めた会社でも、突然解雇されてしまう――。

 就職難、リストラ、成果主義。大人になったとたん、まるで石つぶてのように世の中の攻撃を浴びせられることになった春子の世代。1970年代初頭から80年代初めにかけて生まれた彼ら彼女らを、朝日新聞は「ロストジェネレーション」と名づけている。

 厚生労働省の調査によると、2007年度の精神疾患による労災申請は952人と過去最多。前年度より16%増えた。認定者の年代別では30代がトップだ。仕事でもプライベートでも責任の重くなる30代は、まさに「ストレス世代」。しかも、ここ10年余り続いた企業の人減らしのおかげで、彼らの負担はますます増大している。その「ストレス世代」に、続々と仲間入りしているのが春子たち、ロスジェネだ。その中には、フリーターや派遣労働者、安い給料に甘んじている正社員など、「ワーキングプア」も大勢いる。

 このままでは、心のバランスを失う30代はますます増え続けるにちがいない。

「『嵐よ、自分がこの世を去った後で起これ』という哲学者の言葉がありますが、嵐をまともにくらってしまったのが、彼らロスジェネ世代だと思いますね」

 こう指摘するのは、精神科医・名越康文氏だ。ラジオDJ、漫画の原作ブレーン、映画・音楽評論など、多方面で活躍する同氏は、次のように分析する。

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