北中米ワールドカップのスタジアムが話題【写真:ロイター】

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今大会はエンタメ性の強い「イベント」なのだ

 スタジアムはライブ会場か? アメリカ対オーストラリアが行われたシアトル・スタジアムのスタンドは、これまでのワールドカップ(W杯)と明らかに違う雰囲気だった。

 サッカーのゲームなのだが、エンタメ要素も満載。アメリカの大会らしかった。

 後半のハイドレーションブレーク、流れたBGMはボンジョヴィの大ヒットナンバー「It’s My Life」だった。サポーターたちは大合唱し、立ち上がって踊る。勝っていることもあってか、アメリカサポーターたちの盛り上がりは信じられないほど。これなら、ホームチームは力以上のものを発揮できる。

 圧倒的な応援のパワーを背に2-0でグループステージ突破を決めたアメリカ。アルゼンチン出身のマウリシオ・ポチェッティーノ監督も「スタジアムもファンも素晴らしかった」と、7万人近くのファンで超満員になったスタンドに感謝した。

 会場のシアトル・スタジアム(ルーメン・フィールド)はNFLシーホークスとMLSサウンダーズFCのホーム。北側が開放されたスタンドは特徴的な馬蹄形の形をしている。実は、全米でも有名な「大音響スタジアム」だという。

 スタンドを覆う屋根が音を反射し、スタジアム全体に響き渡る設計。「もっともうるさいスタジアム」でギネス記録を作ったこともある。ピッチにまで振動が伝わってくるスタジアムは「相手チームがかわいそうになる」場所でもある。

 日本がW杯に出場する前のW杯は「特別な場所」だった。チームユニフォームの色で染まり、チームを励ます歌が「本場」のスタンドに驚いた。W杯だけでなく、各国リーグのスタンドもチアガールたち「応援団」が主流だった日本リーグ時代の日本から見れば「異次元の世界」だった。

 もっとも、Jリーグ誕生で日本にもヨーロッパ流の観戦スタイルが広まった。ユニフォームを着て歌う応援も、普通になった。日本が出場するようになって、W杯のスタンドも少しずつ見慣れたものになっていった。

 そんな日本人にとっても、今大会は異質なようだ。W杯帰りの友人は「すごかった」「楽しかった」と、これまでのW杯とは違う特別なムードを振り返る。通常のW杯に慣れたからこそ、今大会の「特別感」が際立つ。

 試合の映像にはスタンドの様子も紹介される。過去の大会で活躍したレジェンドが映ることが多いが、今回特に目立つのは歌手や俳優、他競技のスター選手などサッカー界以外の著名人が多く抜かれること。チケット価格の高騰もあってか、いわゆる「セレブ」も目立つ。

 ヨーロッパや南米など「サッカーの国」のW杯は「サッカー大会」だが、今大会はエンタメ性の強い「イベント」なのだ。これまでサッカーに関心のなかった層を呼び込むことも、北米でW杯を開催するFIFAの狙いなのだろう。

 日本でもW杯が「日常」になったからこそ思う今大会の「非日常」感。決勝戦のハーフタイムショー開催には眉をひそめるファンも多いが、それもアメリカ流のエンタメ要素を盛り込んだ新しいW杯の姿なのかもしれない。(荻島弘一/ Hirokazu Ogishima)