「抵抗 無関心からの脱却」書評 民主主義の危機に抗う足場とは
「抵抗 無関心からの脱却」 [著]サロメ・サケ 抵抗。この言葉は、時の権力者の過ちや不正への反発を表す語である。本書の対象は極右勢力。彼らはもはや来たるべき危険ではない。いま抵抗すべき現実である。
ジャーナリストである筆者は、フランスで政治の右傾化が進み、自由や民主主義、連帯が損なわれた惨状を告発する。
それは、極右政党である国民連合の勢力伸長にとどまらない。主張を異にするジャーナリストへの脅迫が日常化し、テロや殺人事件が起きる。大富豪は資金力でメディアを掌握し、自らに有利な政策課題や右派的理念、反動的なライフスタイルを社会に浸透させる。
国際連携も進む。極右政党は、反移民、反エリート、反EUを掲げ、国境を越えて活動する。また、別のネットワークは超保守主義・自由至上主義系のシンクタンクを巻きこみ、各地で減税や労働者の権利制限を訴える若手活動家を大量に養成する。フランスの危機は世界の危機と地続きだ。
民主主義の内側から民主主義の条件を掘り崩すこれらの動きは、想像以上に体系的、周到、そして狡猾(こうかつ)だ。ページをめくるごとに背筋が凍る。
だが本書は、道徳的非難の書ではない。筆者は自分の立ち位置を隠すことなく、無関心は害だ、中立と縁を切れ、怒れ、憤れ、と読者に迫る。
その一方で、極右政党の支持者は社会不安の落とし子でもある。愛と喜びを盾として粘り強く説得せよ。連帯への筋道を示しながら、筆者は私たちに繰りかえし対話を呼びかける。激しくも簡潔な文章は、大量の脚注に支えられている。根拠と確信をもって対話に臨もう。本の体裁までもが筆者の思いと連動する。
抵抗は暴力と同義ではない。権力闘争の道具でも政権奪取の標語でもない。民主主義を守り、連帯を強め、社会を改善する人間的営為だ。誠実であれ。正しく大きく夢をみよ。人間性の回復こそが、極右に抗(あらが)う最初の足場だ。筆者の叫びが私の心の奥でこだました。
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Salomé Saqué 1995年生まれ。オンラインメディア「ブラスト」のジャーナリスト。本書はフランスで40万部を突破した。
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清水珠代訳
