「オランダは惨めな交代と日本のヘディング一発で勝利を失った」…森保ジャパン“殊勲のドロー”にオランダメディアは「クーマン監督」を酷評
ついに開幕したFIFAワールドカップ2026。日本代表は6月15日の朝(日本時間)、オランダ代表とグループリーグ初戦を戦った。結果は、2−2の引き分けで、両者、勝ち点1の痛み分け。この試合で、主要メンバーの久保建英がオランダ選手の過剰なタックルに見舞われ、交替を余儀なくされたり、すべて満足とはいえないまでも、大切な初戦、格上のオランダ代表を相手にした結果としては、勝ちに等しいという声も散見される。【加藤ジャンプ/文筆家・イラストレーター】
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一方、オランダメディアは、みすみす勝利を逃した自国代表についてはかなりご立腹の様子。なかでも、最も批判の矛先がむけられているのがロナルド・クーマン監督だ。

試合終了目前で同点に追いつかれたオランダ代表の“敗因”について、多くのメディアが共通して指摘しているのがクーマン監督の采配だ。とりわけ終盤の交替について多くのメディアが首をかしてげている。
1965年創刊で、現在発行されているオランダのサッカー雑誌のなかで、最も長い歴史をほこる Voetbal International誌は、
「ロナルド・クーマン 選手交代までは日本のシステムを粉砕していた」
という記事をインターネット版にアップした。このタイトル、言いかえれば「選手交代まではよかったのに……」である。うっすら寂寥感すら漂うタイトルを冠したこの記事を執筆したのは同誌のPieter Zwart編集長だ。編集長はつづける。
「オランダ代表は日本代表を相手に2−2のドローで初戦を終えた。ロナルド・クーマンは初戦で課題をこなしはしたが、守備的な交代のせいで輝かしい勝利を台無しにした」
完全に、クーマン監督の命じた選手交代が“敗因”と分析している。
「不可解な交替」
この記事によれば、クーマン監督は試合開始の直前、メディアにこの日の作戦について話したという。同記事では、オランダ代表のミーティングの写真も掲載して伝えている。
マグネットを置いて選手の配置を示したホワイトボードを背に、オランダにとって幻の決勝点となった2点目をゴールしたサマーフィル選手が立っている写真だ。
これによれば、この日、クーマン監督は、日本の3バックに対して、サマーフィルを中心に、日本の2人の“6番”(いわゆるボランチ)を封じる5−4−1のシステムを採用したという。
終盤まで、そのフォーメーションが機能していたにもかかわらず、クーマン監督はなぜか不可解な選手交代をしたというのである。
たしかに、なぜ、攻守にわたって活躍していたマレン、サマーフィル、ラインデルスを下げたのか、日本の多くのファンの脳裏にも「?」マークが浮かんだに違いない。
一層厳しく批判するのはDe Volkskrant紙だ。タイトルも激しい。
「オランダは惨めな交代と終盤の日本のヘディング一発で2−1の勝利を失った」
その“敗因”を、選手交代のみならず、小川航基から鎌田大地を経由して奪った見事な同点弾についても言及しているところが流石に冷静だが、自国代表に対しては舌鋒鋭く論じている。
皮肉たっぷりの見出し
それも、クーマン監督肝いりの、ある選手の交代を名指しで糾弾している。
「壮大かつスリル満点のワールドカップという冒険が、日曜、ダラスでかすかな失望とともに始まった。オランダ代表は最後まで2−1のリードを守り切ることができなかった。日本は歓喜に沸きオランダは悲嘆に暮れた」
「交代、なかでも重い足取りのメンフィス・デパイは、悲惨な結果をもたらした」
戦前、クーマン監督は件のデパイにプレーさせるかどうか、まだわからないとしていた。デパイはオランダ代表の歴代最多得点を記録している名選手だが、近年はそのパフォーマンスが落ちていて、オランダメディアも懐疑的だった。その懸念がモロにあたってしまったというのが同紙の見方なのである。
「ロナルド・クーマン“かすかな落胆”はあるものの、引き分けでもやっていける『我々はどんな相手でも簡単に勝てると考えている』」
と、クーマン監督のコメントを引用した皮肉たっぷりの見出しで報じているのはオランダ最大の新聞De Telegraaf(6月15日)だ。同記事ではクーマン監督に対して、2度のリードを守りきれなかった点を、監督のコメントとともに報じている。
「勝利を放棄してしまった」
「日本代表にもたくさんのチャンスがあった。両チームにとって最高レベルのゲームだったんだ。日本代表は、いつもハイプレスをしかけてくる。だが、この試合では、彼らはかなりの時間帯、そうしなかった。多くの選手がボールを待っていた。そういう意味で、彼らも怖がっていたんだよ。そのせいで、我々はスペースを見つけにくかったんだ」
大会の真っ最中ゆえ、弱気な言葉を極力控えたいのは理解できるものの、クーマン監督の弁明は、いま流行りの「他責」の雰囲気が感じられなくもない。スーパースターだった現役時代の豪快なプレーからは想像もつかない。クーマン監督はつづけてこうも語っている。
「ここ最近の試合よりも、はるかに良いプレーをしたと思う。かなりよくやったが、“その時”まではもうすこし待ってほしい」
これに対し、同紙は冷静に言い放っている。
「オランダ代表は2026年ワールドカップの最後の場面で、日本相手に勝利を放棄してしまった」
おおよそ、自滅、という分析なのだろう。伝統ある強豪国のメディアは、やはり手厳しい。
まだ初戦、されど初戦。グループリーグは、あと2試合残されている。果たしてオランダ代表は持ち直すことができるのか。ある意味、日本代表とのドローの真価も、今後のオランダ代表の戦いぶり如何にかかっているともいえる。さらに目が離せないワールドカップになってきた。
加藤ジャンプ(かとう・じゃんぷ)
文筆家、ライター、イラストレーター。1971年東京生まれ東南アジア育ち。一橋大学大学院法学研究科修士課程修了。出版社で編集者として週刊誌や国際政治経済誌、スポーツ誌などに携わり独立。食やモノ、手仕事、スポーツなど幅広く執筆。著書に、テレビ化された『ロビンソン酒場漂流記』(新潮新書)、多摩の酒場のルポ『ただいま酒場』(けやき出版)、コの字酒場という言葉を考案した『コの字酒場はワンダーランド――呑めば極楽 語れば天国』(六曜社)など。テレビ東京系「二軒目どうする?〜ツマミのハナシ〜」に出演中。原作を執筆した漫画『今夜はコの字で』(集英社)は2シーズン・ドラマ化された。
デイリー新潮編集部
