《残り1年足らずで終わりを迎えてしまう…》軍艦島ではない長崎の“炭鉱の島”だからこそ体験できる「尋常じゃないツアー」に参加してわかった“鉱山の内情”
〈《現地写真多数》住民は最盛期の1%程度になるも…いまも人が住まう“九州最後の炭鉱”の島「池島」で遭遇した“ヤバすぎる産業遺構”〉から続く
長崎市の沖合に浮かぶ、九州最後の炭鉱の島「池島」。前編では廃墟と人々の生活が混在する地上の様子をお伝えしたが、後編となる本稿では、2027年3月に終了が決まっている貴重な「坑内体験ツアー」の模様をレポートする。元炭鉱マンの生々しい証言を聞きながら、尋常じゃない揺れのトロッコに乗って実際の坑道へと潜っていくと――。
【画像】軍艦島ではない長崎の“炭鉱の島”だからこそ体験できる「尋常じゃないツアー」に参加したもようを写真で一気に見る
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実際のトロッコに乗車して実際の坑道に入っていく
集合場所で受付を済ませると、ヘルメットとキャップライトを受け取って装着する。キャップライトとは、ヘルメットに取り付けるライトのことで、長時間使用できるように大きなバッテリーは腰に取り付ける。鉱山特有の装備の一つ、キャップライトを装着できたことに静かに興奮していた。
案内してくれるのは、実際に池島炭鉱で働いていた炭鉱マンで、和気藹々とした雰囲気で注意事項等の説明があり、屋外に移動してトロッコに乗り込む。

午後のツアーに参加。このトロッコに乗車する
金属鉱山や炭鉱跡を見学できる観光施設は全国にたくさんあるが、実際のトロッコに乗車して実際の坑道に入っていけるのは、ここだけではないだろうか。
トロッコは尋常じゃなく揺れるため、隣の人と話していると舌を噛んでしまいそうだ。この激しい揺れが鉱山トロッコらしくもあり、坑内に入る瞬間はとても感動していた。
数分の乗車で坑内に到着すると、いよいよ見学がはじまる。最初に池島の地図と写真を見ながら、池島炭鉱がどのような炭鉱だったのか、そしてどのように開発されていったのか、坑道が伸びていったのかを説明してくれた。
実際に採掘していた時の“生々しい”苦労話
そして、実際に石炭を掘り出す切羽(きりは)で、実際にどのように石炭を掘っていたのか、実物の機械や装置を見ながら、炭鉱マンがガイドしてくれる。
通り一遍の説明ではなく、実際に採掘していた時の苦労話や失敗談なども交えて解説してくれるので、当時の様子がとてもリアルに伝わってくる。
最後の斜坑も見せていただいた。斜坑とは、水平の坑道や垂直の竪坑とは異なり、その名の通り斜めの坂道になっている坑道のこと。目測で40度程度の傾斜があり、とてもトロッコが走れる角度ではないが、レールが敷かれている。こうした斜坑ではトロッコにワイヤーを取り付け、上部の巻上機で上下動させていた。
1時間弱の坑内見学はあっという間に感じた。再びトロッコに乗り込み、坑外に出る。太陽の光がとても眩しく感じた。これでツアーは終了だ。
現在はツアー申込時に地上ツアーのオプションを選択することができるが、私が参加した当時はそのような制度はなかった。
ツアー終了後、池島に興味を持った私は、もっと知りたいと元炭鉱マンのガイドさんに声をかけたところ、ご厚意で車に乗せていただき、島内を案内してくれることになった。
炭鉱の島として栄えていた当時を知る人が、今もそこに暮らしている
この日、案内してくれたガイドさんは石炭を運ぶベルトコンベヤーの係だったらしく、コンベヤーの遺構を重点的に案内してくれた。
コンベヤーだけではなく、ドイツ製の高速人車“女神号慈海”なども間近で見ることができた。
坑内を移動するために人が乗車するトロッコは人車と呼ばれるが、池島の坑道はどんどんと海底へと伸びてゆき、総延長は96キロに達した。坑道が長くなるほど、炭鉱マンが入坑して石炭を掘る切羽に到着するまでの時間が長くなってしまう。移動時間を短縮するために導入されたのが、ドイツ製の高速人車“女神号慈海”だった。
女神号慈海の最高速度はこれまでの2倍に相当する時速50キロに達し、移動時間を大幅に短縮することに成功した。
小一時間ほど島内を案内していただいたあと、ガイドさんと同じフェリーで池島を後にした。船上でも石炭で景気が良かった頃の話が聞けて、かけがえのない時間となった。
池島の至るところには、炭鉱の島だった痕跡が今も残っている。炭鉱施設だけではなく、多くの人が暮らしていた高層アパート群など、暮らしの痕跡も多い。
そして、人の営みが細々とではあるが今も続いている。炭鉱の島として栄えていた当時を知る人が、今もそこに暮らしていることの意味は、とても大きい。完全に無人となった軍艦島には、廃墟としての大きな魅力があるが、人が暮らしている池島にも、池島にしかない魅力がある。
以前訪問した時に見た発電所、ジブローダー、シップローダーは近年解体されてしまった。時間は過ぎてゆくものなので、炭鉱の島だった痕跡が失われ、人々の記憶が薄れてゆくのも、ある意味仕方のないことだろう。しかし、今しか見られない、今しか聞けないものが池島には数多く存在する。
池島の坑内ツアーは長崎市の観光企画「長崎さるく」の一環として行われている。2027年3月をもって終了するため、興味のある方はぜひ今のうちに参加することをお勧めしたい。たとえツアーに参加できなくても、今の池島を見ておいて損はないだろう。10年後の池島では見られないものが、きっとあるはずだ。
※記事で紹介しているツアーは以前の内容であり、現在は変更されている可能性があります。また、池島に残る遺構の多くは立入禁止になっています。むやみに立ち入ることなく、ルールを守って見学して下さい。見学にあたっては、池島に今も暮らしている方がおられますので、十分なご配慮をお願いします。
撮影=鹿取茂雄
(鹿取 茂雄)
